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労働新聞 2022年9月5日号 トピックス

世界のできごと

(8月20日〜8月29日)

NPT再検討会議、再び合意決裂  8月1日から国連本部で開かれていたNPT(核兵器不拡散条約・191カ国)の再検討会議は26日、前回の2015年に続いて、最終文書を採択できずに閉幕した。NPTは米ロ英仏中の5カ国だけに核保有を認める一方、非核兵器国の核兵器取得を禁止する不平等なもの。文書採択には全会一致が必要だが、今回はウクライナ侵攻に対する米欧によるロシアへのさまざまな圧力強化がロシアの反発を招き、最終文書に合意できなかった。4週間にわたる長丁場の会議にもかかわらず米欧の身勝手な言い分で合意できなかったことで、核軍縮をめぐる国際的な枠組みに対する信頼はいっそう低下した。

FRB議長、金融引締め継続を表明
 世界の中央銀行トップなどが集まるジャクソンホール会議(米ワイオミング州)が25日から開催された。米欧などでインフレが進む中、各国ともインフレ抑制のため金利引き上げに踏み切っているが、景気後退などの負の影響も出てきている。いち早く金利引き上げに踏み切ったパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はインフレ抑制を「やり遂げる」と強調、引き締め継続を表明した。これを受けて市場では緩和への期待感が後退。26日のニューヨーク株式市場は大幅に下落した。コロナ禍やウクライナ侵攻などで世界経済が減速する中でインフレにどう対処できるか、米欧をはじめ各国のかじ取りはいっそう難しくなっている。

中韓国交正常化から30周年
 中国と韓国が1992年に国交正常化して30周年となった24日、中国・北京と韓国・ソウルの両国の大使館で祝賀行事が行われた。中国の習近平国家主席は「中韓双方が国交樹立30周年を新たな出発点として、大勢を把握し、妨害を排除し、友好を固め、協力を重視し、両国関係のより麗しい未来を共に築いていきたい」と述べた。韓国の尹大統領は多様な分野で飛躍的に発展した韓中関係を評価、関係が量的成長を超え質的に発展することに期待を示した。この 年で韓国の対中輸出額は162倍に急増し、ここ20年間、中国は韓国の貿易相手国1位となっている。この間の対米輸出5・2倍、対日輸出2・4倍と比較しても、中韓の経済的結び付きは東アジアの経済発展にとって大きな存在となっている。

米韓合同軍事演習で野外訓練再開
 朝鮮半島有事を想定した米韓合同軍事演習「 フリーダム・シールド(自由の盾)」が22日から始まった。演習は9月1日まで。米韓定例演習は5月の尹政権発足後初。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との融和路線をとった文前政権では定例演習が中止・縮小されてきた。これまで夏の定例演習では、机上演習中心だったが、今回は18年春以来4年ぶりの本格的な野外機動訓練も行う。軍事演習による挑発に対して朝鮮は猛反発している。台湾問題で中国への挑発をくり返す米国は、朝鮮半島でも再び緊張を激化させており、東アジアの軍事的緊張を高めている。

ウクライナ侵攻から半年、長期化も
 北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大の策動などが背景となり、ロシアがウクライナに侵攻してから24日で半年が過ぎた。これに合わせてバイデン米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は25日、電話会談した。バイデンは今後も継続的な軍事的援助を提供する考えを改めて示し、長期戦に備えて約30億ドル(約4100億円)の追加軍事支援も決めた。ウクライナは米国の大規模な軍事支援を受け、戦況は一進一退の状態で長期化は避けられず、これによりウクライナ支援をめぐって米欧間や欧州諸国間に姿勢の隔たりが顕在化している。米国はますます対ロシアの前面に立たざるを得ない。

人民のたたかい

(8月20日〜8月29日)

 英国最大のコンテナ港、フェリクストウ港で約2000人の港湾労働者が21日から8日間にわたってストライキを行った。賃上げと労働環境の改善を求めている。また鉄道労組も 日にストを決行した。
 英国郵便大手ロイヤル・メールでは26日、通信労働組合(CWU)の組合員11万5000人以上が賃上げを要求してストを敢行した。英国は郵便制度発祥の地で、500年の歴史を持つロイヤル・メールが2013年に民営化されて以来初のストとなった。
 オランダ鉄道(NS)では、鉄道労組(FNW)が24日から5日間ストライキを行った。NSは深刻な人手不足で列車のキャンセルが続いている。労組は20%の賃上げを要求している。


日本のできごと

(8月20日〜8月29日)

感染者全数把握見直し、失政の連続
 岸田首相は8月24日、新型コロナウイルスの全感染者の詳細な情報を医師が報告する「全数把握」を見直すと発表した。各地方自治体の判断で保健所への詳細な届け出を高齢者や基礎疾患のある人に限定できるようにする。しかし判断を丸投げされた知事からは「全体像を把握するデータが失われ、対策の根幹が崩れる」「重症者だけを対象にすれば、感染者が行動することで感染を拡大させることが危惧される」などと批判や疑問の声が相次いでいる。新方針の目的は「医療機関や保健所の負担軽減」とするが、そもそも医療機関や保健所の機能拡充を怠ってきた失政が感染爆発の最大の原因。今回の決定はさらに成り行き任せの失政を重ねることにつながりかねず、到底容認できない。この間、世界保健機関(WHO)の集計で日本の新規感染者数が数週間にわたり世界最多となり、死者数も世界2位のまま改善しないなど、世界的に見ても岸田政権のコロナ失政は目に余る。

国葬費用支出を決定、政権支持率急落
 岸田政権は26日、9月27日に開く安倍元首相の国葬におよそ2億5000万円を支出すると閣議決定した。費用は全額国費で2022年度予算の予備費から出す。国葬に対しては、報道各社の世論調査でも軒並み「反対」が「賛成」を上回るなど、広範な国民からの反対や批判の声は根強く、内閣改造後も政権支持率は下落の一途。こうしたことから国会での審議を避けて閣議で国葬費用支出を決定したものの、首相経験者の葬儀で行われてきた弔意表明を各府省に求める閣議了解は見送られた。国葬を政権浮揚策として利用したい思惑だったが、国葬はもはや政権の「お荷物」と化している。

TICADで中ロけん制も不発に
 日本政府が国連などと共催してアフリカ北部チュニジアの首都チュニスで開かれていた第8回アフリカ開発会議(TICAD8)は28日、閉幕した。オンライン参加で演説した岸田首相は官民合わせて総額300億ドル(約4兆1000億円)の支援を表明した。アフリカでは近年、中国が貿易やインフラへの投融資などで存在感を強め、ロシアも軍事協力や食料供給で関係を深めている。巨大市場としての可能性から「最後のフロンティア」とされるアフリカで影響力を強めたい岸田首相は、食料危機でロシアを批判、また中国を念頭に「債務健全化の改革」を掲げるなど、米国の意もあり中ロに横やりを入れる形で日本を売り込んだが、今回の首脳級参加者は20人と前回19年の42人から半減するなど、各国が実利を重視し中ロに傾斜するアフリカでの日本の存在感低下を印象付けた。

再稼働促進と新増設の原発新方針
 岸田首相は24日、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、「電力の安定供給と脱炭素の実現に向けて」として、これまで再稼働した10基の原発に加え、新たに7基を再稼働し、また原則40年とされる運転期間の延長と次世代型原発の開発・建設を検討するよう指示した。「グリーン」や電力不足を口実に老朽原発の再稼働をさらに促進させるとともに、原発の新増設と建て替えを想定しないとしてきた従来の方針を転換、将来にわたり基幹電力を原発に依存する姿勢を示したもの。しかし福島原発事故で甚大な被害を受けた住民と地域に対する国の冷淡で無責任な対応を考えれば到底容認できる方針ではない。

維新代表に馬場氏、前途は多難
 日本維新の会は27日に投開票されたの代表選で馬場伸幸衆議院議員を新代表に選んだ。党設立メンバーで前任の松井・大阪市長から後継指名されており、馬場氏も選出後のあいさつで松井路線継承を明言した。維新は看板政策だった大阪都構想が15年、20年の2回にわたり住民投票で否決され、党創業者である橋下・松井の2人の代表が政界を引退する結果となった。23年春の統一地方選で現在の1・5倍となる600人以上の地方議員を当選させ、次期衆院選で野党第1党を、さらに 年以内に政権交代を実現する構想だが、目玉となる看板も全国的な支援基盤も欠く状況。新体制の前途は多難だ。

インボイス調査、免税事業者に不利益
 民間信用調査会社の東京商工リサーチは20日、国が来年10月からの導入を計画するインボイス制度(適格請求書等保存方式)に関するアンケート調査の結果を公表した。同制度の導入により、これまで消費税の申告・納税義務が免除されてきた課税売上高1000万円以下の事業者が取引を解消されたり値下げを要求されたりする懸念がある。調査では、制度導入後に「免税事業者とは取引しない」が9・8%、「取引価格を引き下げる」が2・1%に上り、1割強が取引中止や取引価格を引き下げる意向を示した。規模別では、大企業の6・4%、中小企業の10・4%が免税事業者と「取引しない」と回答し、「検討中」は大企業が53・8%、中小企業は45・5%だった。税負担が増す免税事業者との取引縮小の動きが加速する可能性は高いという危惧を裏付ける結果となった。


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