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労働新聞 2022年8月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月30日〜8月19日)

ペロシ訪台、中国挑発強める米国
 米国のペロシ下院議長は8月2日、中国・台湾を訪問し蔡英文「総統」と会談した。米下院議長は大統領継承順位2位で、現職下院議長の訪台は25年ぶり。ベロシ氏は「米議員の訪問先を中国政府が指図すべきではない」などと内政干渉を正当化、「訪台は台湾を支援する米国の揺るぎない関与を示すもの」などと強弁、米国が長年とってきたいわゆる「あいまい戦略」を踏み超えた。ペロシ訪台について、中国はバイデン政権に対し事前に断固反対の意を伝えていたが、バイデン氏は事実上容認した。こうした米側の挑発に対し、中国側は台湾周辺での大規模軍事演習や台湾当局関係者への制裁措置などで厳しく抗議した。米国は中国の軍事演習を批判したが、東アジアの緊張を激化させている責任はあくまで米国の側にある。

共和党予備選でトランプ「刺客」勝利
 米ワイオミング州で16日、今年11月に行われる米中間選挙の候補者を決める共和党の予備選挙で、現職のチェイニー下院議員がトランプ前大統領が送り込んだ「刺客」であるヘイグマン候補に大敗した。チェイニー氏は共和党の中でもトランプ氏に批判的な立場で、昨年1月の米連邦議会占拠事件を巡るトランプ氏に対する下院の弾劾訴追決議に共和党から賛成に回っていた。共和党支持者におけるトランプ人気の底堅さを裏付ける結果で、米国内の分断が一層進んでいることも示している。米議会では超党派で「台湾独立(国家化)」をあおる「2022年台湾政策法案」成立に向けた策動が進んでいるが、米政権や米議会が中国挑発をエスカレートさせているのも国内矛盾激化の現れでもあり、米国の衰退を示すものでもある。

中国が22年ぶり「台湾統一」白書発表
 中国政府は10日、「台湾問題と新時代の中国統一事業」と題する白書を発表した。台湾統一に関する白書の発表は22年ぶり。白書では、「台湾は中国の一部だという歴史的、法的事実に疑いの余地はない」としたうえで、「われわれは歴史上のどの時期よりも祖国の完全な統一という目標に近づき、その実現に向けた自信と能力を持っている」と強調した。そして「『平和統一と一国二制度』が、台湾問題の解決に向けた基本方針であり、国家統一を実現する最良の方式」と明記したうえで、「武力行使の放棄は約束しない」「米国の一部の反中勢力による、統一を阻もうとする政治的なたくらみを徹底的に暴き、厳しく非難しなければならない」として、米国や台湾当局を強くけん制した。米国の挑発が続くなかでの白書発表は、中国の基本的立場を改めて内外に強調するためのものだ。

新興国から空前の資本流出、悪化加速
 国際金融協会(IIF)は3日、7月の新興国・途上国の株式・債券市場からの海外資金の流出額は105億ドル(約1兆3700億円)に達し、この5カ月間の総流出額は380億ドルを超えたと発表した。統計が始まった05年以降で最も長期間の流出超過。米連邦準備理事会(FRB)の相次ぐ利上げが原因で、資本流出によりこの3カ月でスリランカがデフォルト(債務不履行)に陥り、バングラデシュとパキスタンは国際通貨基金(IMF)に支援を要請するなど途上国全般で金融危機が一段と深まっており、通貨の下落と借入費用の増加にも苦しめられている。元凶である米国では、7月の物価上昇率が前月比で2年2カ月ぶりに下がったものの、前年同月比ではなお8%台の高水準で、利上げは続く見通し。米国を中心としたグローバル資本主義は世界中で矛盾を深め、特に途上国人民に犠牲が押し付けられている。

人民のたたかい

(7月30日〜8月19日)

 ドイツのルフトハンザ航空の地上職スタッフは、年率7〜8%のインフレが進む中、賃上げを求めて先月来ストで闘ってきたが、統一サービス産業労組(ベルディ)は4日、会社側との交渉で新たな合意を勝ち取ったと発表、「労働者がインフレで困窮する中、それを埋め合わせできる賃上げを勝ち取ったことは重要だ」と強調した。
 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの中心街で17日、賃上げと失業手当引き上げを政府に求めて数千人が抗議デモを展開した。年率70%前後で推移しているインフレが人民の生活に打撃を与え、貧困者の割合は人口の40%に達している。参加者は旗を掲げドラムをたたきながら市内の大通りを行進、インフレ率に応じた賃上げと、広範囲な経済の痛みを緩和するための社会支出拡大を訴えた。


日本のできごと

(7月30日〜8月19日)

臨時国会3日間で閉会、政権窮地の証
 第209臨時国会が8月5日、3日間の会期を終え閉会した。旧統一教会問題や安倍国葬問題に加え、コロナ感染爆発や物価暴騰など内外に問題が山積する中での国会となったが、議題は参院議長の選出など限定的で、安倍元首相の追悼演説も秋の臨時国会に先送りになった。岸田政権の逃げの姿勢は隠しようがなく、政権が窮地であることを自ら示した恰好だ。

改造政権発足も支持率回復せず
 第2次岸田改造政権が10日、発足した。参院選の結果を受けての一連の人事は当初安倍元首相の四十九日を待ち9月上旬に行う方向で調整が進められていたが、旧統一教会問題などで政権支持率が急落、旧統一教会と関連のある者の閣内からの一掃で国民の目先を変えようと前倒しを仕掛けた。しかし改造後も閣内と旧統一教会との関わりが次々と露呈、当初の思惑は完全に外れ、むしろ自民党と旧統一教会の関係の根深さを印象付ける結果となった。

アピール不発の岸田NPT演説
 岸田首相は1日、米ニューヨークの国連本部で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議に参加した。日本の首相としての出席は初。演説した岸田氏は、ロシアの核兵器による威嚇を批判、その上で核兵器不使用の継続や核戦力の透明性向上など5項目の行動計画を発表し、核軍縮をめぐる米中対話を後押しする考えも示した。しかし、核兵器の使用や保有を全面的に禁じる核兵器禁止条約に全く言及せず、日頃から言及する「核保有国と非核保有国の橋渡し役」としての具体策もなかった。米国の核政策の範囲を一歩も出ない内容で、被爆者や非核保有国からは不満や批判の声が相次いだ。「被爆地・広島出身」をアピールする思惑で会議に乗り込んだものの、完全な空振りに終わった。

ペロシ会談で緊張あおる岸田政権
 岸田首相は5日、訪日した米国のペロシ下院議長と会談した。先だって中台湾を訪問し東アジアの緊張を激化させたペロシ氏と朝食を交えながら談笑、「台湾問題での緊密連携」を確認したことは、連携して中国を挑発した形となった。一方、韓国の尹大統領は「休暇中」を理由に訪韓したペロシ氏との直接会談を避け、電話協議で済ませた。「台湾問題」で米国とともに緊張をあおる日本の姿勢はアジアでも際立っている。

コロナで1日の死者最多も国は無策
 厚生労働省は16日、コロナ感染で1日の死者が全国で281人となり、過去最多を更新したと発表した。これまでの最多は第6波における277人(2月22日)。また高齢者福祉施設でのクラスターが直近7日間(8月8〜14日)で736件と3週連続で最多を更新した。死者急増の背景には、7月中旬以降の第7波での感染爆発でリスクの高い高齢者施設でのクラスターが増加していることや、医療機関が崩壊状態となり、リスクの高い人に必要な医療が十分提供できない状況が背景にある。しかし岸田政権は感染爆発で死者急増が進んでも「行動制限は行わない」「経済を回す」を連呼するだけで、10日の内閣改造後の会見でも第7波に対する具体策を何ら示さなかった。本格的な感染抑制策や医療体制の支援策を打ち出さない岸田政権の失政が死者を増やし続けている。

最賃、上げ幅最大も物価上昇以下
 国の中央最低賃金審議会は2日、地域別最低賃金(時給)を地域ランクごとに30〜31円、全国加重平均で31円(3・3%)引き上げ、現在の930円から961円にする目安を厚労相に答申した。目安額31円は昨年の28円を上回り過去最高額だが、審議会で労働者側が示した消費者物価の基礎的支出項目4・4%の上昇を下回る。また今回の目安通り改定されても全国平均で時給961円にとどまり、岸田政権が6月に決定した骨太の方針にある「できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000円以上」には程遠い。さらに目安額は昨年は全国同額だったものの、今年はA・Bランクが31円、C・Dランクが30円と差があり、格差は221円から222円に広がる。物価の上昇に及ばず地域間格差も広げる、あまりに不十分な目安だ。

米空軍オスプレイ全機地上待機に
 米空軍は17日、特殊作戦機CV22オスプレイの全 機を地上待機させた。クラッチの不具合に伴う事故を理由としたもので、同様の問題が過去6週間で2件、2017年以降で計4件発生したとしている。米空軍横田基地(東京都)所属の同機も飛行中止となったが、重大事故につながりかねない飛行の中止は当然だ。一方、米海兵隊所属のMV22オスプレイも事故を多発させており、今年3月にノルウェーで、6月には米カリフォルニア州で墜落事故を起こし、計9人の搭乗員が死亡している。海兵隊はMVが以前からCVと同様の問題を抱えていることを認めているが、「問題に取り組んでいる」などとしてMVの運用を沖縄などで続けている。こうした事態を許している日米両政府の姿勢は許しがたい。


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