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労働新聞 2022年8月5日号 トピックス

世界のできごと

(7月20日〜7月29日)

米中首脳電話会談、米側に成果乏しく
 米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は7月28日、電話会談を行った。同会談は米側が熱望、激しいインフレによって支持率が急落するバイデン政権は、会談後の対中関税一部撤回などを検討してきた。しかし直前に米下院のペロシ議長が台湾を訪問する予定であることが問題化、中国側は猛反発し、習氏は「火遊びは必ず身を焦がす」と強い表現で警告、会談で関税引き下げは話題にも上らなかった。バイデン氏は気候変動や感染症対策など協力拡大が可能な分野について意見を交わし、また初の対面会談の可能性についても議論し関係者に検討を指示するなど、決定的な対立となる事態は避けた。会談によってインフレ対策で成果を上げ支持率回復につなげる思惑だったバイデン氏だが、成果はなきに等しく、秋の中間選挙での敗北もいっそう現実味を帯びてきた。

伊首相辞任へ、物価高が政権を直撃
 イタリアのドラギ首相は21日、マッタレッラ大統領に辞表を提出し受理された。大統領は上下院の解散を表明、9月に総選挙が行われる。ドラギ政権が提出したインフレ対策に対し、連立を組む「五つ星運動」は最低賃金の導入などを主張して採決参加を拒否、ドラギ政権は採決を信任投票と位置付けていたこともあり、「挙国一致の連立はもはや存在しない」と辞意を決断した。欧州各国では、ドイツの地方選でショルツ首相の社会民主党が連敗、またフランスのマクロン大統領の与党が下院選で過半数割れし、さらに英国のジョンソン首相が辞任に追い込まれるなど、米欧によるロシア制裁によって拍車がかかったインフレによって階級矛盾が激化、政権が相次いで揺さぶられている。9月の伊総選挙では右派を中心とした新政権が生まれる可能性もあり、結果次第では欧州連合(EU)との関係にも影響が及びかねない。

IMF連続下方修正、米も景気後退に
 国際通貨基金(IMF)は26日、世界経済の成長率見通しを再び引き下げた。1月が4・4%だったものを4月には3・6%に下げ、今回は3・2%にまで下げた。「世界経済の下振れリスクは依然として非常に大きく、景気後退の懸念が高まっている」(ゲオルギエバ専務理事)と、次回10月のさらなる下方修正も示唆する。こうした中、28日には米国の実質国内総生産(GDP)速報値が発表され、4〜6月期は2四半期連続のマイナスとなった。インフレに加えて相次ぐ利上げで米国は景気後退に陥った可能性もあり、経済を大きく失速させずにインフレを抑える軟着陸はきわめて難しい。

SCO外相会議、協力国拡大も
 上海協力機構(SCO)は28日、中央アジアのウズベキスタンで外相会議を開幕した。SCOは中国とロシア、インド、パキスタンのほか、旧ソ連諸国の中央アジア4カ国が加盟し、今会合ではエネルギー輸送網での連携強化やSCOへの協力国を増やすことも協議した。この時期の開催は、ロシアにとっては米欧の経済制裁に同調しない国との結束を強める目的もある。また中国の王毅外相はSCO外相会議を挟んでウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの3カ国を公式訪問し、2国間会談の場も活用して米欧などによる中ロ包囲網とは一線を画す国々と個別に連携を図ろうとしている。

ロシア、アフリカ各国との連携強化
 ロシアのラブロフ外相は24〜27日にかけてエジプト、エチオピア、コンゴ共和国、ウガンダのアフリカ4カ国を歴訪した。ラブロフ氏は各国で穀物輸出などの協力を打ち出すとともに、安全保障での連携強化なども議論した。またアフリカとの関係強化に向けてロシア・アフリカ首脳会議を23年に4年ぶりに開く方針も示した。資源大国のロシアは世界的インフレの中でアフリカ各国と関係を強化しており、ロシア孤立化に向けた包囲網構築をめざす米欧の思惑通りに世界は動いていない。

人民のたたかい

(7月20日〜7月29日)

 ドイツのルフトハンザ航空では27日、約2万人の地上職スタッフが9・5%の賃上げを求めてストを決行、1030便を欠航に追い込んだ。統一サービス産業労働組合(ベルディ)は9・5%の賃上げのほか、最低12カ月の月350ユーロ(約4万8500円)の賃上げも求めている。
 プエルトリコ(米自治領)では20日、首都サンファンで数千人のデモ隊が知事公邸に押しかけ、自治政府と委託契約を結んでいる電力網事業者ルマ社との契約解除を要求した。同社は全島の3分の1以上を暗闇に陥れた4月の停電など頻繁な停電にもかかわらず電力料金を上げ続けていることに市民が怒りを爆発させた。


日本のできごと

(7月20日〜7月29日)

経済2プラス2初会合、同盟一体化へ
 日米両政府は7月29日、米ワシントンで外務・経済担当閣僚協議「経済版2プラス2」の初会合を開いた。共同声明「ルールに基づく国際経済秩序を示す」をまとめた。4項目の行動計画もまとめ、半導体や電池、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強化、監視システムなど新興技術の輸出管理で協力する方針を明示した。先端技術保護や5G整備を同志国と共に推進することでも合意した。経済的な日米同盟一体化は台頭する中国に対抗する思惑で進められる体制づくりだが、日本が米国に利用・奉仕させられることは既定路線で、真の国家安全保障や国民経済の成長とは相いれない。

防衛白書に「台湾有事」初明記
 防衛省は22日、2022年版の防衛白書を公表した。岸防衛相は巻頭の言葉で初めて台湾に言及、中国が「統一に武力行使も辞さない構え」だとし、台湾側の有事想定を初記載した。本文で台湾情勢に割く頁数も2倍に増やした。中国とロシアの軍事協力の深化にも警戒感を示した。また北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める「国内総生産(GDP)比2%以上」の水準にも触れた。さらに政府が保有を検討する「反撃能力」(敵基地攻撃能力)も初めて明記した。中国に対抗する日米同盟強化と軍事費増大を最大限にアピールしている。

概算要求基準、軍事費は事実上青天井
 岸田政権は29日、各省庁が23年度予算を求める際の概算要求基準を閣議了解した。各省庁が使い道を決められる裁量的経費を22年度当初予算(14・9兆円)から1割削減する代わりに重要政策推進枠として削減額の3倍までを要求できる仕組みとした。同枠は政権の目玉政策である「新しい資本主義」に関連する予算が対象で、デジタル化促進やエネルギー・食料を含めた経済安全保障分野も要望できる。軍事費や原発推進予算などは事実上の青天井とし、防衛省は同日早くも防衛力強化加速会議を開くなど鼻息が荒い。一方、社会保障費の自然増を22年度見込み額からの1000億円削減を見込むなど国民生活関連予算には厳しい姿勢だ。

貿易赤字が半期として過去最大に
 財務省は21日、22年上期(1〜6月)の貿易統計速報を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7兆9241億円の赤字に。赤字額は比較可能な1979年以降で半期として過去最大だった2014年上期を超えた。輸入額は前年同期比37・9%増の53兆8619億円で、半期で50兆円を超えるのは初。原油を含む原粗油や液化天然ガス(LNG)は輸入額が約2倍、石炭は3倍超に膨らんだことなどが主要因。貿易赤字の拡大は所得の海外流出を増大させる。円安と国民経済低迷の悪循環が危惧されるが、岸田政権は打開策を見いだせずにいる。

安倍元首相と旧統一教会の関係で証言
 安倍元首相など複数の国会議員と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関係について、全国霊感商法対策弁護士連絡会は29日に会見した。旧統一協会の霊感商法は07年ごろから捜査当局の摘発が始まったが、「第1次安倍政権が終わってから増え、第2次政権が始まるとパッタリなくなった」と説明、安倍氏が摘発の動きを封じていたことを示唆した。また15年に旧統一教会が文科省に名称変更を申請する直前、同連絡会は「名称変更で正体を隠して資金や人材獲得をしようとしている」と反対を申し入れた際、「担当者は認証しないと言っていたが、下村文科相(当時)が認証し驚いた」とした。また同連絡会は18、19年に旧統一教会を支援しないよう安倍氏に抗議、公開質問状を送付したが「突き返された」と語った。報告は多くの閣僚・国会議員が旧統一教会とズブズブの関係である実態の一端を示すものだ。

規制委が処理水放出の計画を認可
 国の原子力規制委員会は22日、東京電力福島第1原発事故で発生する放射能汚染水を処理した後に残る高濃度のトリチウムを含む汚染水について、薄めて海に放出するために必要な設備の設置や手順などを盛り込んだ東電の実施計画を認可した。規制委は「十分な議論が尽くされた」(更田委員長)などと言うが、放出される放射性物質の総量が示されていないなど、多くの問題が残されたまま。全漁連など漁業者は断固として反対している。国は計画を中止・再検討するべきだ。

ふるさと納税2年連続で過去最高
 総務省は29日、21年度のふるさと納税による寄付額が8302億円と前年度比23%増で2年連続過去最高を更新したと発表した。ふるさと納税は自分の選んだ自治体に寄付すると所得税や住民税の控除を受けられる制度で、15年度の控除拡充や手続き簡素化で利用者が急増、自治体が豪華な返礼品を用意するいびつな競争が過熱した。返礼品の調達費だけでなく広報、決済などの経費も膨らみ、制度にかかる財政負担は重い。半面、市区町村の2割は寄付額より控除による流出額の方が大きく、打撃は大きい。不毛な消耗戦を激化させる制度は廃止するべきだ。


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