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労働新聞 2022年7月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月10日〜7月19日)

バイデン中東歴訪、原油増産空振りも
 米国のバイデン大統領は7月13日から中東諸国を就任後初めて歴訪した。サウジアラビアに原油増産をのませることが最大の目的。同国のサルマン国王との会談には実権を握るムハンマド皇太子も同席、米国は2018年のサウジ人記者殺害に皇太子が関与したと批判してきたが、今回は抑えた。だがバイデン氏の立場を見透かす皇太子は自らの利益となる「米国との関係改善」は内外にアピールしたものの、増産には「市場を見て決定する」とにべもなかった。歴訪ではイスラエルとアラブ諸国との協力推進やパレスチナとの関係改善など進展はあったが、「人権外交」では米国内の評価を下げた。一方、ロシアのプーチン大統領は19日、イランで同国のライシ大統領やトルコのエルドアン大統領と会談、黒海に穀物船用の「回廊」設置に向け議論を前進させ、空振りのバイデン氏に当て付けるかのように成果を誇示した。

G20財務相会議、米欧日の影響力低下
 インドネシアのバリで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が16日に閉幕した。会議で米欧日などはロシアへの経済制裁を呼びかけたが、新興国はインフレにつながる制裁に消極的で、4月の財務相会議に続き全会一致が必要な共同声明を出せなかった。共同声明に代わって発表された議長総括ではロシア側の主張にも言及された。また巨大IT(情報技術)企業などに課すデジタル課税について、法人税の最低税率を世界共通で15%とすることの速やかな実施が確認されたが、特に米国での議会承認には難航が予想され、少なくとも当初の計画から1年遅れ、発効は24年にずれ込む見通し。G20内での米欧日の影響力低下を顕著に示す会議となった。

太平洋で中国にらみ米豪が巻き返し
 太平洋の島嶼(とうしょ)国や豪州、ニュージーランドなど18カ国・地域でつくる太平洋諸島フォーラム(PIF)の年次総会が11日からフィジーで開催された。域外国として参加した米国のハリス副大統領はオンラインで演説、キリバスとトンガに大使館を開設するほか、違法漁業対策などの基金への拠出として今後10年で毎年6億ドル(約820億円)支援すると表明した。豪州も政府開発援助(ODA)増額を表明した。豪州とニュージーランドが主導する地域枠組みであるPIFだが、今回は会議直前にキリバスが脱退を表明、またツバルや仏領ポリネシアなど6カ国・地域の首脳が欠席するなど、枠組みが弱体化しつつある。米豪などは背景に中国の影響力拡大があるとみて巻き返しを図っており、今回の大型支援はその焦りだ。

欧米で記録的熱波、燃料高騰と二重苦
 欧米を記録的熱波が襲っている。例年は比較的冷涼な英国の気象庁は15日、ロンドンなどが観測史上最高の40度以上になるとの予測し最高レベルの「猛暑警報」を初発令した。また47度を記録したポルトガルの保健省は1週間で高齢者を中心に659人が死亡したと発表した。同国に加え南欧や米国では熱波で出火しやすい状況が広がり山火事が多発している。ロシア制裁によるエネルギー危機に自ら身を投じる欧州各国に記録的熱波による冷房のための電力需要激増が追い打ちをかけており、対ロ制裁など各国の内外政策は修正を迫られる可能性もある。

スリランカ大統領辞任、物価暴騰で
 スリランカで15日、ラジャパクサ大統領の辞職届が正式に受理された。同国では大統領退陣を求める数千人のデモ隊が最大都市コロンボの公邸を占拠、大統領は隣国モルディブに逃亡していた。同国では19年の連続テロ事件で主産業である観光が低迷、コロナ禍が追い打ちをかけた上、大統領肝いりの有機農業転換政策が大失敗に終わっていた。こうした窮状に資源の国際価格高騰が加わり、外貨不足で国民経済と生活は破綻、国民の怒りで大統領が政権を追われた格好だ。世界的な物価暴騰は特に途上国で社会・経済を混乱させ政権を揺さぶっている。

人民のたたかい

(7月10日〜7月19日)

 英国の鉄道・運輸業界の労組は7月11日、賃上げを求めるストライキ実施を決定した。労働者が物価冒頭に苦しむ英国では6月にも過去30年間で最大規模の鉄道ストが行われ、4万人以上が参加した。
 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは15日、記録的水準のインフレに対し政府に現金給付などの対応を求めるデモが行われた。IMF(国際通貨基金)が押し付ける緊縮策への反発の声も上がった。


日本のできごと

(7月10日〜7月19日)

参院選、銃撃事件も「大勝」程遠く
 第26回参議院議員選挙が7月10日に投開票された。自民党は8議席増の63議席、公明党は1議席減の13議席で、自公与党で改選議席125議席の過半数以上を獲得した。野党は立憲民主党が5議席減の17議席、国民民主党も2議席減の5議席、共産党も2議席減の4議席と後退した。投票日直前の8日に安倍元首相が遊説中に銃撃されて死亡、投票率を引き上げたが、それでも52・0%と過去4番目の低さ。自民には銃撃事件が有利に働いたが比例で1議席減らした。野党が多くの選挙区で候補者を一本化できなかったことに救われ、選挙区で議席を積み増したものの、全有権者の17・3%からしか票を得ておらず、実態は「自民党の大勝」とはかけ離れている。

岸田政権、改憲と軍事費2%めざす
 岸田首相は11日、参院選の結果を受けて会見、冒頭に「安倍元首相の思いを受け継ぐ」として改憲に取り組む姿勢を示した。そして改憲に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民の4党で改憲の国会発議に必要な3分の2の議席を上回ったことに触れ、「議論をしっかりと進めたい。具体的内容について3分の2の賛成を結集し、できる限り早く発議に至る取り組みを」と早期の改憲発議を強調した。また14日には「NATO(北大西洋条約機構)におけるGDP(国内総生産)比2%という数字も念頭に置きながら、5年かけて防衛力を抜本的に強化していく」と述べ、軍事費を5年で倍程度に増額する方針を歴代政権として初めて明言した。難問山積の内外情勢や安倍氏死去による党内力学の流動化を念頭に、岸田政権はタカ派姿勢を強めている。

安倍「国葬」で軍事大国化推進の思惑
 岸田首相は14日、安倍元首相の国葬を秋に実施すると表明した。首相経験者の国葬は1967年の吉田茂氏以来。理由として「功績は誠にすばらしい」「日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績」などと語った。費用は全額国費の予定。岸田政権は中国対抗の軍事大国化や日米同盟強化を進めており、安倍礼賛を政策実現のため最大限利用する思惑だ。また銃撃事件で露わになった自民党と旧統一教会のズブズブの関係を追及する国民の声をかき消す狙いもある。憲政史上最長の8年8カ月も悪政を続けた元首相の葬式に巨額の血税を注ぎ込むなど言語道断で、国葬など到底許されない。

コロナ「第7波」、感染対策に緩み
 岸田首相は11日、新型コロナウイルスを巡る政府分科会の尾身会長らと会談、尾身氏は「普通の常識では第7波に入っている」と語った。一方、首相は14日の会見で「いまのところ重症者や死亡者は低い水準にある。現時点では行動制限することは考えていない」と国民に危機感を示さなかったが、16日には全国の新規感染者数が11万675人となり過去最多を更新した。岸田政権は6月に空港検疫など水際対策の緩和を一気に進め、また参院選投開票日までは「第7波」言及を避けた。国の基本的な感染対策の緩みがあったと指摘する専門家は多く、新規感染者急拡大の後追いで増える重症患者増加を抑えるため国は対策を急ぐべきだ。

東電旧経営陣に初賠償命令、責任認定
 東京電力福島第1原子力発電所事故を巡り、同社の株主らが旧経営陣5人に計22兆円を東電に支払うよう求めた株主代表訴訟の判決で、東京地裁は13日、旧経営陣4人に計13兆3210億円の支払いを命じた。原発事故を巡る旧経営陣の責任を認めた判決は初。判決は、国の機関が2002年に公表した地震予測「長期評価」について科学的信頼性を有する知見と認定、津波対策を速やかに講じるよう指示しなかった判断は著しく不合理と指摘した。また、大規模な防潮堤以外に建屋の水密化等の対策を容易に着想し実施できたとし、この対策で重大事故に至ることは避けられた可能性は十分あったと断じた。国内民事訴訟の賠償額としては過去最高とみられ、東電の支出が確定した廃炉費用約1兆6150億円、被災者への賠償額約7兆834億円、除染費用など約4兆6226億円を認めた。岸田政権は冬の電力需給もひっ迫が懸念されるとして最大9基の原発再稼働をめざすが、再稼働ありきで安全軽視の国の姿勢も問いただす判決だ。

日本の男女平等指数低下、最下位圏に
 世界経済フォーラム(WEF)は13日、21年の世界の男女平等の達成率(ジェンダーギャップ指数)を公表した。日本は146カ国中116位で、主要7カ国(G7)中最下位、東アジア・太平洋地域(19カ国)でも最下位に。経済、政治分野の遅れが顕著。経済分野は前年の117位から121位へ大幅下落、コロナ禍で女性労働者の減少が男性よりも大きく労働参加の達成率が低下、同一労働における賃金格差の是正や管理職の女性比率も低下した。政治分野は139位で、女性の権利を制限していると指摘されるアフガニスタン(107位)やサウジアラビア(132位)よりも下回った。女性の議員数や閣僚数が圧倒的に少なく、過去50年で女性の首相がいないことも要因。歴代政権はこれらの問題を長年にわたり事実上放置し続けている。


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