ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2022年7月15日号 トピックス

世界のできごと

(6月30日〜7月9日)

NATO新戦略概念、中ロ対抗鮮明に
 スペインで開かれていた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は6月30日に閉幕した。今後10年の指針となる戦略概念を12年ぶりに改訂、ロシアを「直接の脅威」と位置付けた。また中国についても初めて言及、「われわれの利益、安全保障や価値観に挑戦」などと明記した。日、韓、豪、ニュージーランドの4カ国も招かれ、インド太平洋での協力も新たに加えた。スウェーデンとフィンランドとの加盟交渉開始も正式決定した。歴史的とも言える転換を行ったNATOだが、中ロとの対抗に広く他国を巻き込み頼らなければならない米国の力の衰えを如実に示す場となった。

G20外相会合、新興諸国は自主外交
 インドネシアで7月8日から20カ国・地域(G20)外相会合が行われた。会合の前には米欧日がロシア外相の参加に反対、会合へのボイコットもちらつかせたが、議長国であるインドネシアは応じなかった。またロシアのウクライナ侵攻に伴う食料とエネルギーの需給逼迫(ひっぱく)の問題などが協議されたが、ロシアと米欧日の間で非難の応酬に。新興諸国は自国の国益を見極めて米欧側と距離を置き、全体会合以外の場での自主外交が目立った。米国はG7など同盟国を足がかりに新興諸国取り込みを図ったが、新興諸国は自主的傾向を強めていることを印象付けた。

ウクライナ復興会議、NATOは冷淡
 ウクライナ・スイス両政府が共催する「ウクライナ復興会議」が4日からスイスで開かれた。ウクライナ側はゼレンスキー大統領がオンラインで演説、「ウクライナの復興は1国だけに限られた課題ではない。民主主義世界全体の共通の課題だ」と必死に支援を訴え、シュミハリ首相は復興計画に7500億ドル(約100兆円)が必要と提起した。しかしウクライナを「鉄砲玉」として対ロ戦争へとけしかけている欧州各国から積極的な発言や提案はなく、閉幕式でも復興費用や具体的な支援内容への言及はなかった。戦争長期化にNATO加盟国は責任があり、復興協力は義務だ。

英首相が辞意、欧州政治の混乱に拍車
 英国のジョンソン首相は7日、辞意を表明した。コロナ禍の行動規制のさなかに官邸でパーティーを開いた問題で支持率は急降下、その後も続くスキャンダルで求心力を失い閣僚や与党議員の役職辞任が相次ぎ、政権は機能不全に陥っていた。また同首相は米国と歩調を合わせロシア対抗のウクライナ支援に血道を上げたものの、経済制裁の「返り血」で英国内の物価は他国に比しても暴騰、インフレ対策が不十分だとして首相の辞任を求めるデモが行われるなど、辞任表明は時間の問題だった。対ロ制裁や物価高騰によって欧州各国では軒並み政権基盤が揺らいでいるが、英首相辞任は欧州の混乱にさらに追い打ちをかけることになる。

香港返還25年、着実に再統一推進
 中国の香港で1日、祖国復帰25周年祝賀大会が開催された。参加した中国の習国家主席は演説で「『一国二制度』の香港特区における豊富な実践は、われわれに多くの貴重な経験を残した」「中央政府は、社会主義現代化国家の全面的建設と、中華民族の偉大な復興の実現という歴史的プロセスにおいて、香港特区は必ず重大な貢献を果たす」と語った。英国など米欧日は「一国二制度が守られていない」と批判一色だが、そもそも香港は英国に奪われた領土。中国政府は再統一への行程を着実に推し進めている。

人民のたたかい

(6月30日〜7月9日)

 スリランカで7月9日、ラジャパクサ大統領の退陣を求める数千人のデモ隊がコロンボの大統領公邸を占拠、首相は辞任を表明した。コロナ禍で観光業が低迷して外貨準備高が急減、ガソリンなどの輸入品不足と高インフレが国民生活を直撃していた。
 ノルウェーで5日、石油・ガス業界の労働組合が賃上げを要求しストライキに入った。組合側はさらなる大規模ストを構えたが、欧州でロシアに次いで2番目のエネルギー供給国である同国でストが広がれば欧州全体に甚大な影響が及ぶため、同国政府が仲裁しストを止めた。
 英国で2日、性的少数者の歴史的な権利推進デモから50周年となることを記念し、ロンドンで「プライド・パレード」が行われ、100万人以上が参加した。


日本のできごと

(6月30日〜7月9日)

NATO首脳会議に日本の首相初出席
 岸田首相も参加しスペインで開催された北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は6月30日に閉幕した。日本の首相が首脳会議に参加するのは初めてで、国政選挙中に首相が外遊することも異例。首相は会議で採択されたNATOの行動指針である新戦略概念に初めて中国について言及させるべく躍起になり、またNATOと歩調を合わせて日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、防衛費を相当に増額させる決意も示した。NATOをインド太平洋の安全保障に関与させるための、米国の意に沿った外交に猛進した。

ロ、制裁対抗でサハリン2「接収」も
 ロシアのプーチン大統領は30日、日本の商社が出資する極東サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の運営権をロ政府が設立する新企業に移行する大統領令に署名した。事業に出資する三井物産や三菱商事は新会社へ資産の譲渡が求められ、事業の枠組みから排除される可能性がある。実行されれば事実上の同事業国有化で、日本側の権益接収でもある。同事業から日本に供給される液化天然ガス(LNG)は国内消費の約1割に相当し、代替のLNG調達には2兆円近い追加コストが生じるとの試算もある。電力供給の綱渡りが続く日本の国内事情も見ての「報復」だが、ロシアの資産凍結などの経済制裁で米欧と歩調を合わせる日本はロシアを批判できない。

実質賃金2カ月連続減、目減り定着
 厚労省は7月5日、5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1・8%減少、2カ月連続のマイナスで、コロナ禍の2020年7月以来の落ち込み幅となった。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1・0%増の27万7016円と5カ月連続で増加したが、物価の伸びに賃金の上昇が追いついていない現状を映し出した格好。物価上昇を放置すればこのまま賃金の目減りが続くことになり、国がこれ以上見過ごすことなど許されない。

感染再拡大で「第7波」、搬送困難増
 新型コロナウイルスの新規感染者が8日、全国で5万人を超えた。1日当たり5万人を超えるのはおよそ3カ月ぶり。医療機関に4回以上照会するなど受け入れ先が見つからず救急搬送困難事案となった事例は3日までの1週間に全国で2812件で前週から約800件増加、症状の似た熱中症での搬送者数の急増も重なり、救急医療体制を圧迫し始めているが、国による酷暑の中での節電要請が状況悪化に拍車をかけている。自治体首長らは「事実上の第7波」などと危機感を募らせているが、岸田首相は参院選の中で経済のブレーキとなる発言に及び腰で、事態を悪化させている。

沖縄で民家に流弾も米軍は否定
 沖縄県金武町伊芸区の民家で7日、米軍によるものとみられる流弾事故が起きた。同民家敷地内に銃弾が落ちているのが見つかり、ガラスが割れていることが確認された。現場は米軍キャンプ・ハンセンに隣接、同施設のレンジ4から約1キロの住宅で、米軍は基地内で実弾射撃訓練をしていた。同民家と同じ番地内では過去にも米軍の照明弾が屋根を貫通する事故が起きるなど、被害が集中している地区だが、米軍はその多くで訓練との因果関係を認めておらず、今回も流弾の可能性を事実上否定、人命にかかわる重大な事件をあまりにも軽く扱っている。住宅地の近くに演習場があること自体が異常であり、一刻も早く解消すべきだ。

熱海土石流災害から1年、対策は急務
 28人が犠牲になった静岡県熱海市での大規模な土石流災害は3日に発生から1年を迎えた。危険な盛り土造成を行政が止められず長年放置されてきたことが原因となった災害。被害を受けて先の通常国会では、盛り土の規制強化に向け従来の宅地造成等規制法を抜本改正した盛り土規制法が成立、全国一律に盛り土や建設残土への規制が強化された。しかし規制区域や許可基準の具体的策定はこれからで、効果はそれに大きく左右される。全国の自治体が昨年から実施した緊急点検では既存の盛り土の1千カ所以上で不備が見つかるなど、危険な状況が依然として手付かずである。今後の台風や豪雨で重大災害が二度と起きぬよう、国は対策を加速させるべきだ。

安倍氏死亡、悪政転換と疑惑究明を
 安倍晋三元首相は8日、奈良市で演説中に銃撃を受け死亡した。憲政史上最も長く首相を在任、悪政の限りを尽くした。「強い日本」を掲げて日米同盟強化と中国への敵視を強め、アジアでの孤立を深めた。日銀の異次元金融緩和と財政出動に依存したアベノミクスで一部の大企業・投資家を潤わせる一方、国民には厳しい生活を強いた。秘密保護法など国民監視・弾圧強化も進め、沖縄県名護市辺野古の新基地建設にも強行着手した。森友・加計問題や桜を見る会などの政治の私物化・腐敗も極まった。アベノミクスの評価と悪政の転換、数々の疑惑の究明などは依然国民的課題として残されている。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2022