労働新聞 2022年7月5日号 トピックス
G7サミット、力の限界あらわに
主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が、ドイツで6月26日から開かれた。共同声明では財政も含めたウクライナへの包括的な支援を確認、金輸出禁止や石油価格の上限設定などロシアの収入を低減させる制裁強化も決めたが、具体策は詰められなかった。途上国への新たなインフラ投資の枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」(PGII)の創設でも合意した。これは巨大経済圏構想「一帯一路」でアフリカなどへの影響力拡大で先行する中国への対抗策。米国はアフリカをインフラ投資の「主戦場」と位置付けるが、立ち遅れは明らか。また世界的インフレのため各国内に漂う「ウクライナ疲れ」で早期停戦を求めたい仏独伊と徹底抗戦を主張する米英などとの姿勢の違いも露呈した。米バイデン政権はG7「結束」を足がかりに中ロ対抗強化を狙うが、対ロ制裁では参加国も50カ国程度に過ぎず、世界でのG7の影響力の限界もいっそうあらわになった。
BRICS首脳会議、影響力拡大も
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成するBRICSは23日、オンライン首脳会議を開催した。主宰した中国の習国家主席は演説で「冷戦的思考や集団的対抗による一方的制裁や制裁乱用に反対」と強調、米欧のロシア制裁に反対した。また中国が主導して設立しBRICS諸国が運営する新開発銀行(NDB)がインドに地域事務所を設立したと発表した。さらにBRICSへの加盟国拡大を提案、翌24日には新興国や発展途上国との拡大首脳会議もオンラインで行った。アルゼンチン、エジプト、インドネシア、イランなど13カ国が参加、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は「正式メンバーになることを熱望」と述べた。同氏は同国が国際通貨基金(IMF)への依存から脱すべきとしてNDBへの期待も表明している。BRICSの影響力は拡大しつつある。
核兵器禁止条約、初の締約国会議開催
オーストリアで21日から核兵器禁止条約の第1回締約国会議が開かれた。非締約国に条約参加を促すことを柱とした行動計画を採択、また3日間の討議では核兵器使用をちらつかせるロシアに対する非難も出された。2017年に採択された同条約の締約国・地域は65にとどまり、核保有国に加え北大西洋条約機構(NATO)加盟の欧州諸国、日本、韓国も不参加。米国は「極限の状況においてのみ核使用を検討」という独自の使用条件に固執、フランスに至っては欧州連合(EU)唯一の核保有国として同条約参加国が増えないよう働きかけている。核大国による核抑止という「現実」は、非核保有国の願いとはかけ離れている。
EU、ウクライナを加盟候補国に
EUは23日からブリュッセルで首脳会議を開き、ウクライナと隣国のモルドバをEUの加盟候補国とすることを承認した。EUはロシアけん制のため通常は申請から数年かかる過程を大幅に短縮する特例扱いにした。両国は今後加盟交渉に向けた手続きに入るが、実際の加盟には国内制度をEU基準にする必要がある。ゼレンスキー大統領は「EU指導者の決断をたたえる」と有頂天だが、腐敗した国内政治や新興財閥(オリガルヒ)が支配する経済など、同国の実態はEU基準とはかけ離れており、早期加盟は困難。また会議ではウクライナへの最大90億ユーロ(約1兆2800億円)の財政支援計画や食料輸送ルート確保支援などの合意もとりまとめた。対ロ制裁も議論されたが、戦争長期化による物価高騰などで各国内での不満が高まり、ロシア産天然ガスの確保問題などで加盟国間の足並みは乱れており、具体的な追加制裁案は打ち出せなかった。
英国で21日、鉄道・海運・運輸労組(RMT)が、鉄道インフラ会社ネットワーク・レールと列車運行会社13社でストライキに入った。ストは23、25日にも行われ、過去30年で最大規模のストライキとなった。
ベルギーのブリュッセルなどで20日、物価高に対して賃上げや減税を行うよう求めて8万人の労働者がデモ行進した。参加者は「武器にではなく給料に金を使え」「NATOを止めろ」と唱え、米国主導のNATOとウクライナ戦争への関与を批判した。
ドイツのミュンヘンで25日、G7が気候変動対策や不公正是正に取り組んでいないと抗議するデモが行われた。
G7、日本は中国批判の最右翼に
主要7カ国(G7)首脳会議が6月26日、ドイツで開幕した。ウクライナ情勢への対応が主要な議題となる中、岸田首相は「ウクライナはあすの東アジアかもしれない」などとロシアになぞらえて中国脅威論を強調した。また中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関連した途上国支援を「不公正で不透明」と厳しく批判、これ対抗する新たな枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」創設の必要性を先頭で訴えるなど、東アジアに対立を持ち込む姿勢に始終した。
中国対抗のリムパック、自衛隊空母も
米海軍主催の多国間海上訓練「環太平洋合同演習(リムパック)」が29日、米ハワイ沖で始まった。隔年実施されるリムパックは、オバマ政権下の2014、16年には、中国も参加していたが、トランプ政権下の18年には中国の南シナ海への進出を理由に招待を取り消した。コロナ禍後初の本格実施となる今回は、バイデン政権が対中政策の中核に据えるクアッド(日米豪印)、オーカス(米英豪)の構成国がそろうほか、南シナ海に面する諸国が参加、中国への対抗色がより鮮明に。史上最大規模で開催されるリムパックに海自の空母化される護衛艦・いずもや陸自の地対艦ミサイル部隊が参加、軍事的な中国対抗に傾倒している。
核拡散防止条約初会議も日本は無視
核兵器禁止条約の初の締約国会議が21日からウィーンで開かれた。同条約を締約できない北大西洋条約機構(NATO)加盟国からもドイツなどの代表がオブザーバー参加、核保有国と非保有国の橋渡しを行う機運も高まるなか、米国に配慮する日本政府からは一人の参加もなかった。岸田首相は「被爆地広島出身」を強調、「核兵器国を巻き込む」「橋渡しをする」が口グセだが、実際には核軍縮・核拡散防止に何一つ貢献していない。
消費者物価「必需品ほど上昇」鮮明
総務省は24日、5月の消費者物価指数を発表した。変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は前年同月比で2・1%上昇し、2カ月連続で2%を超えた。食料・光熱費・医薬品など生活に欠かせない基礎的支出項目は4・7%、うち食料品は4・1%で、パンは8・2%、生鮮食品は12・3%上昇した。生活必需品や頻繁購入する品ほど上昇、ギリギリの生活を強いられている国民は負担増に耐えられない。
東京五輪で8千億円の血税がドブに
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は21日、理事会で大会公式報告書を承認した。大会経費は1兆4238億円で、コロナ禍による開催1年延期もあり、13年の招致時点での7340億円の見積もりから倍増した。負担は都が5965億円、国が1869億円で、公費割合は全体の55%。大会のため新設された競技施設の年間維持管理費で今後年間 億円以上の税負担も確実視されており、血税をドブに捨て続ける失政の責任を追及すべきだ。
電力逼迫で初注意報、原発固執のツケ
経済産業省は26日、東京電力管内で電力需給が厳しくなるとして初の需給逼迫(ひっぱく)注意報を発令した。注意報は翌日の電力需要に対する供給の余力(予備率)が5%を下回る見通しになれば発令する。東北地方での地震の影響などで火力発電の供給力が低下、これに猛暑による需要増が加わったことが原因だが、安全運転の見込みのない原発再稼働を当てにし再エネと省エネの推進を怠ってきた歴代政権の責任は重い。こうした状況に際し岸田政権は21日、「節電ポイント還元」を掲げ、一部大企業の利益にしかならない愚策で電力逼迫の失政ごまかしをもくろんだ。猛暑の中での節電押し付けで国民の命は危機にさらされる。
精神障害の労災最多、パワハラ深刻
厚生労働省は24日、仕事が原因でうつ病などの精神障害を患い、21年度に労災認定されたのは前年度比21件増の629件だったと発表した。1983年度の統計開始以来3年連続で過去最多を更新、精神障害による労災申請も前年度比295件増と2346件で過去最多だった。原因別では「パワーハラスメント」が125件で最も多く、2年連続で最多に。労働者に強いストレスを与える企業・職場が横行していることを示すもので、国として放置し続けることは許されない。
生活保護引き下げ判決「違法」3例目
国が13年に生活保護基準を引き下げたのは生存権を保障する憲法に違反するとして東京の保護利用者が国や自治体を相手に引き下げ処分の取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は 日、処分を違法とし取り消しを命じた。同様の判決は昨年2月の大阪地裁と今年5月の熊本地裁に続き3例目。国は13〜15年にデフレによる物価下落などを反映させるためとして、平均6・5%、最大10%もの引き下げを強行したが、判決は「広く不利益を生じさせ、影響は重大」と指摘、「デフレ調整の判断は必要性、相当性の両面で合理性を欠く」と結論付けた。国はただちに引き下げを撤回すべきだ。
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