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労働新聞 2022年6月15日号 トピックス

世界のできごと

(5月30日〜6月9日)

米豪、中国にらみ南太平洋で巻き返し
 中国の王毅外相は6月4日、南太平洋の島しょ国8カ国を歴訪し帰国した。これに危機感を抱いた豪州は2日、ウォン外相をサモアとトンガに派遣するなど南太平洋地域での巻き返しに出た。またバイデン大統領も5月31日、ニュージーランドのアーダーン首相と会談、記者会見で中国がソロモン諸島と調印した安全保障協定について「われわれと価値観を共有しない国が軍を常駐させるようになれば地域の戦略バランスが根本的に変わってしまう」と強い警戒感を示した。この地域での中国の影響力拡大に米豪は過剰ともいえる対応で巻き返しに必死だ。

米州会議、米国の影響力低下露呈
 米州大陸とカリブ海の35カ国の首脳が3年に1度集まる米州首脳会議が6月8日、米ロサンゼルスで開幕した。米政府がベネズエラ、ニカラグア、キューバの3カ国を「民主化していない」として会議に招待しなかったことや、各国に民主主義や人権重視を求めて圧力をかけた結果、メキシコのロペスオブラドール大統領は「全ての国を招待しないなら出席しない」と反発、ホンジュラスやボリビアなどの首脳もメキシコに賛同して欠席を表明した。またエルサルバドル、グアテマラも米国による自国への制裁を理由に外相を代理で出席させた。結果として8カ国の首脳が会議をボイコット、首脳の参加は23カ国にとどまった。さらに会議に出席したアルゼンチンのフェルナンデス大統領も「ホスト国に参加国を選ぶ権利があるわけではない。多様性こそ民主主義を育む」と米国を皮肉った。米バイデン大統領はホスト国として米州大陸の連携を演出したい思惑だったが、むしろ中南米諸国の不信感の高まりや米国の影響力低下を世界に印象付ける結果となった。

石油増産合意も供給不安解消見通せず
 石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は2日、閣僚級会合を開き、増産ペース拡大で合意した。7月の増産枠を従来の日量43万2000バレルから64万8000バレルに引き上げ、8月も増産ペースを維持する計画。合意はガソリン高騰で支持が低迷するバイデン政権が強く圧力をかけ、サウジアラビアなどが若干譲歩した形だが、9月以降の生産計画については白紙だ。増産ペースも世界的な供給不足を解消するには不十分との見方が強く、供給不足を補填させロシア制裁を成功させる米欧のもくろみは思惑通りには進んでいない。

世界で16億人が深刻な人道危機に直面
 国連は8日、ロシアのウクライナ侵攻などで途上国など世界94カ国の16億人が食料、エネルギー、金融の3分野いずれかで深刻な危機にさらされ、うち12億人は3分野すべての影響を受けるとの報告書を発表した。「ウクライナ戦争の影響。数十億人が1世代における最大の生活費危機に直面」と題した報告書では、コロナ禍の打撃が長引くなかで、食料、エネルギー価格の高騰と、借入金利の上昇など金融引き締めの効果が相互に作用する「悪循環がすでに始まっている」「食料はほぼ過去最高値、肥料は2倍以上」とした。ロシアによる黒海封鎖で止まっているウクライナ産の穀物輸出が焦眉の課題で、ロシアとトルコの外相は8日、ウクライナ発の船舶が安全に運航するための黒海回廊を国連とともに設ける案などを協議したが、ウクライナは「機雷を撤去すれば南部オデッサが攻撃される」として、現時点では合意に至っていない。米欧介入によるウクライナ戦争長期化は世界の途上国に深刻な人道危機をもたらしつつある。

人民のたたかい

(5月30日〜6月9日)

 ベルギーの三つの公務員・公共企業体の労組は5月31日、全国で賃上げ、年金の充実、公共サービスへの投資増額を求め24時間ストを行った。列車、地下鉄、バス、路面電車が大幅な減便となった。学校のストも行われ自治体の行政職員や郵便労働者、刑務所の刑務官などもストに入った。
 フランス外務省で6月2日、20年ぶりのストライキが行われた。マクロン政権による上級公務員の人事改革が発端で、省内では人員や予算の削減で以前から不満が高まっていた。
 英国サウサンプトンの石油大手エクソンモービルのフォーリー製油所で行われていたストライキは7日、年9・2%の賃上げを勝ち取って終結した。
 韓国の民主労総・公共運輸労組の貨物連帯本部は、期限付きで導入された「安全運賃制」の継続などを求め、7日から無期限ストに突入した。同制度の継続や運送料の値上げ、運送産業の構造改革、労働基本権の拡大などを訴え、京畿道義王市の内陸コンテナ基地前で集会を開いた。


日本のできごと

(5月30日〜6月9日)

骨太方針決定、台湾初言及で軍拡狙う
 岸田政権は6月7日、今年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。経済財政の司令塔・経済財政諮問会議が示す基本方針で、例年安保・外交についても言及されるが、今回は初めて「台湾」に言及した上で「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と記した。岸田政権の看板である「新しい資本主義」については、貯蓄から投資へのシフトを進め、年末に「資産所得倍増プラン」を策定するとした。財政健全化については、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を2025年度に達成する目標を明記せず、「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組みを堅持」とした。政権発足時に掲げた「分配重視」の姿勢は完全に消え失せ、資産家のみを富ませ格差を拡大させた「アベノミクス3本の矢」の継承を宣言した内容。中国敵視と大幅軍拡も掲げるなど、内外政策ともに亡国の方針にほかならない。

20年ぶり円安も日銀は平然と容認
 東京外国為替市場で9日、一時1ドル134円台と2002年2月以来、20年ぶりに134円台を付けた。円安に歯止めがかからない状況だが、日銀の黒田総裁は6日、物価高騰について「家計の許容度も高まってきている」と容認する発言をし、異次元金融緩和の継続で円安を放置していることを正当化した。翌日発言を撤回したが、緩和策の修正には言及しなかった。暴騰する生活必需品の購入で国民の痛みは限界に近いが、自公与党や日銀はこれを平然と容認する姿勢だ。政権を打倒するしか国民生活は守れない。

補正予算成立、異例の予備費埋め戻し
 22年度補正予算が5月31日、参院本会議で自公与党や国民民主党の賛成多数で可決・成立した。一般会計の総額は2兆7009億円で、財源は赤字国債。4月に決めた第1弾物価高対策として支出した予備費の穴埋めに大半の1兆5200億円をあてる異例の内容。ガソリンや灯油への補助金給付を延長・拡大する6〜9月分の経費などにも1兆1739億円を使う。国会審議を経ず政権の裁量で使い道を決められる予備費の乱用を拡大させる上、円安放置では物価高対策でも巨額の出費に見合った効果は期待できない。国民生活を守る予算とはとても言えない。

肥料価格が過去最高に、離農促進も
 肥料の国内シェア約7割を占めるJA全農は31日、国内の地方組織に販売する6〜10月の価格を最大9割引き上げると発表した。肥料の値上げは3期連続で、主な肥料の流通価格は過去最高に。原料となる尿素の輸出市場でロシアは世界最大級約14%を占め、また塩化カリウムもロシアとベラルーシが世界の輸出量の約4割を占める。ロシア産やベラルーシ産の肥料原料買い控えで尿素や塩化カリウムの国際価格は4月には前年同期の約3倍となっている。肥料値上がりで農家のコスト負担は増すが、卸売市場での農作物価格は需供バランスで決まるためコスト増の反映は保証されない。肥料高騰は農家の離農促進や作付け減少につながりかねず、国の対応は待ったなしだ。

実質賃金4カ月ぶり減、物価高騰影響
 厚労省は6月7日、4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。1人あたりの基本給と残業代などを合わせた現金給与総額は28万3475円で、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1・2%減と4カ月ぶりにマイナスとなった。現金給与総額自体は1・7%増加したが、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が3・0%上昇した。賃上げと物価対策がともに急がれる。

経常益1〜3月過去最高、国民還元を
 財務省は1日、22年1〜3月期の法人企業統計を発表した。金融・保険業を除く全産業の経常利益は前年同期比13・7%増の22兆8323億円で5期連続のプラス、1〜3月期としては新型コロナウイルス感染拡大前の19年水準を2・6%上回り過去最高。業種別では、自宅勤務や消費拡大が追い風になり通信機器や半導体が好調な情報通信機械が97・2%増え、製品価格の上昇で化学も54・5%増加した。非製造業では、資源価格の高騰などにより商社の業績が好調で、卸売・小売業が36・0%増えた。企業には利益を賃上げなどで労働者に還元し、国民経済を活性化させる責務がある。

泊原発運転差し止め、津波で初の勝訴
 北海道電力の泊原子力発電所(泊村)で事故が起きれば生命や安全が脅かされるとして道内の住民らが北電に廃炉や運転差し止めを求めた訴訟で、札幌地裁は5月31日、津波に対する安全性の基準を満たしていないとして運転差し止めを命じた。津波対策が不十分であるとの理由で原発の運転差し止めを命じる判決は初。判決は、原発が規制委の安全基準を満たすか否かは北電側に立証責任があるとした上で、規制委の審査開始から約9年が経過しても立証と説明を尽くさない同社の姿勢を批判、安全性を満たす津波防護施設が存在しないと判断した。全国全原発の安全性を問い直す判決でもある。


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