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労働新聞 2022年5月25日号 トピックス

世界のできごと

(5月10日〜5月19日)

緊張あおる北欧2国NATO加盟申請
 スウェーデンとフィンランドの北欧2カ国は5月18日、北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を行った。バイデン米大統領は翌19日、両国の首脳と会談し、「NATOが一段と強力になる」と支持、ロシアへのいっそう圧力強化を明言した。両国のNATO加盟には加盟国すべての賛成が必要だが、両国の加盟にはトルコが難色を示し、早期承認は出だしからつまずいた。また加盟申請に反発したロシアはフィンランドとの国境付近への新たな部隊配備に言及、米国が裏で糸を引く北方へのNATO拡大策動は新たな軍事的緊張を引き起こしている。

米、軍事・経済でウクライナ支援拡大
 米上院は19日、400億ドル(約5兆1700億円)規模のウクライナ支援の包括法案を野党共和党議員も含め圧倒的賛成多数で可決した。バイデン大統領が署名し成立する。バイデンは4月、議会に330億ドル規模の追加予算を求めたが、議会はさらに約70億ドルを上乗せした。今月9日には米議会はウクライナへの武器貸与を迅速化させる「レンド・リース(武器貸与)法案」を超党派で可決、これは第2次大戦後初めてとなる。米国は軍事から経済にわたる包括的なウクライナ支援を拡大させるが、これにより戦争の長期化・泥沼化は避けられない。

G7で痛み伴う対ロ制裁拡大決定
 ドイツで開かれていた主要7カ国(G7)の外相会合が14日、閉幕した。発表した声明ではロシアへの制裁拡大を明記、ウクライナへの武器提供など軍事・防衛支援について「必要な限り継続する」とした。またロシア制裁の具体策としてロシア産の石炭や石油の段階的な削減や輸入禁止に言及、ロシアへのエネルギー依存を「可能な限り早期に低減および終了させる取り組みを速やかに進める」と確認した。だが天然ガスの輸入の是非には触れられなかった。輸入の削減や禁輸は各国のエネルギー事情をいっそう悪化させ経済や生活に打撃を与える。各国内の階級矛盾が深まることは避けがたい。

韓国で新大統領就任も多難な船出
 韓国で10日、尹新大統領の就任式が行なわれた。尹氏は就任演説で「超低成長と大規模失業による度を越した二極化」を「成長」によって解決すると訴えた。また尹氏が3日に発表した110の国政課題では、新型コロナウイルス感染拡大で損失を被った小規模自営業者らへの経済支援を真っ先に掲げた。文前政権下の韓国ではで不動産・住宅価格が高騰、また若年層の雇用が生まれずアルバイトや非正規が大幅に増えた。経済立て直しは喫緊の課題で、この課題で目に見える成果を上げ支持率を高める思惑だ。だが国会では少数与党のため政策の遂行は困難が予想され、世論調査では不支持率(48%)が支持率(41%)を上回る苦しい船出となった。6月1日にソウルなど主要自治体の首長選挙と統一地方選が控える。野党が勝利すれば国政運営はいっそう困難になることが確実で、尹政権はいきなり正念場を迎えている。

米・コロナ死者100万人超える
 米政府は12日、コロナ感染による米国の死者数が100万人に達したこと発表した。世界最多で、バイデン大統領は「悲劇的な節目」との声明を出し国民に引き続き警戒を呼びかけた。米国は世界最高の医療資源と医療・看護能力を持ちながらコロナ対策では失敗続きだが、これは米国の政治家が公衆衛生上の安全や国民の生命と健康よりも短期的な経済や資本の利益を優先させた結果だ。貧困や差別、格差を放置する米政治が100万人国民を死に追いやり、さらに殺そうとしている。

人民のたたかい

(5月10日〜5月19日)

 スウェーデン・ストックホルムで14日、与党・社会民主労働党の本部前に数百人が集まり、同国のNATO加盟に反対するデモを行った。世論調査では、加盟を支持する国民は50〜60%に上るが、意思決定が拙速だと考える人も多く、議会では左翼党、緑の党が加盟に反対した。
 インドネシアは世界のパーム油の6割を生産し基幹産業となっているが、政府は世界的な食用油不足によるパーム油高騰対策として輸出禁止措置を行っている。これが農家の生活や地域経済を直撃、17日にはジャカルタで禁輸措置の撤回を求めてアブラヤシ農家がデモを行った。


日本のできごと

(5月10日〜5月19日)

経済安保法成立、統制化・同盟一体化
 経済安全保障推進法が5月11日の参院本会議で可決・成立した。半導体など戦略的に重要とする物資の供給網構築や基幹インフラの安全確保、先端技術の官民研究、軍事転用の恐れのある特許の非公開の4本柱で、実効性を確保するための罰則も導入される。安全保障を口実に経済活動と科学技術研究に対する国家統制が強められる一方、安定供給支援を名目にした大企業への助成金や軍事研究に対する指定基金からの資金提供によって新たな癒着・利益誘導が生じる懸念もある。経済面での日米同盟一体化の動きでもあり、真の国家安全保障や国民経済の成長とは相容れない。

政府・財界の介入招く卓越大学法成立
 巨額のファンドを活用して世界トップ水準の大学づくりをめざす法律が18日、参院本会議で可決・成立した。2024年度以降、政府が 兆円規模を拠出する大学ファンドの運用益から「国際卓越研究大学」と認定した数校に年間数百億円ずつ分配する。岸田政権が成長戦略の柱と位置付ける看板政策の一つだが、数校に絞った支援により大学間の格差を拡大するうえ、助成をエサにした政府・財界の介入を招き、学問の自由や大学の自治がいっそう後退することは避けがたい。経済安全保障推進法の学術研究版にもなりかねず、大学が軍事研究など国策のための道具とされることに警戒が必要だ。

沖縄本土復帰50年、基地の島変わらず
 沖縄県は15日本土復帰50年を迎えた。県と政府が共催し宜野湾市と東京の2会場をつないで開催された記念式典で、岸田首相は沖縄の基地負担について「重く受け止め、負担軽減に全力で取り組む」とし、米海兵隊キャンプ瑞慶覧(北中城村など)の一部地区について緑地公園として返還に先立って県民が利用できるようにするとし、これ見よがしに「負担軽減の実績」として強調した。一方で「日米同盟の抑止力を維持しながら」とも述べ、また式典後の会見では「辺野古が唯一の解決策」との立場を改めて示すなど、「抑止力」を口実に沖縄犠牲を継続する意を隠さなかった。

GDP2期ぶり減、経済さらに悪化
 内閣府が18日、1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0・2%減、年率換算で1・0%減だった。マイナス成長は2四半期ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大や原材料高騰、半導体不足による製造業の停滞などに、ロシアのウクライナ侵攻による世界経済の混乱が拍車をかけた形。個人消費は、家計最終消費支出は持ち家の帰属家賃を除いた成長率が前期の3%増から0・1%減へと急激に悪化、民間企業の設備投資も0・5%増と弱々しく、内需の柱である消費と投資はともに低迷した。外需も、ワクチンなどの輸入増が輸出の増加を上回り、全体を押し下げた。4月以降も資源高騰が進行するなど、経済のさらなる深刻化は避けがたい。

大企業過去最高益も国内に還流せず
 トヨタ自動車は11日、22年3月期通期決算を発表した。本業のもうけを示す営業利益は2兆9956億円と過去最高となった。税引き後の利益についても2兆8501億円となり、当期利益率は9・1%となった。ソニーグループが10日に発表した同期連結決算は営業利益が1兆2023億円となり、同社としては初めて1兆円を超え、国内製造業でもトヨタ自動車に次ぎ2社目に。東証プライムの上場企業の3社に1社が過去最高益を更新、コロナ禍からの経済再開に加え、資源高や円安が追い風となった。しかしこうした輸出大企業の巨額の利益は国内に還流せず、労働者や中小零細企業には物価高騰の痛みだけが押し付けられ、国民経済の不況は深刻化する一方だ。

教員免許更新制廃止、安倍の負の遺産
 教員免許に10年の有効期限を設ける教員免許更新制を廃止する改正教育職員免許法など関連法が11日の参院本会議で可決・成立した。更新講習は期限前の2年間に 時間以上の受講が必要で、教員多忙化や免許放棄、学生の免許取得率低下につながり、学校現場の教員不足を招いていた。更新制は第1次安倍政権時の07年に導入法が成立したが、「不適格教員の排除」を口実に教育労働者の思想統制と管理強化をもくろんだものでもある。今回の改正は安倍政権時代の負の遺産の清算だ。

福島原発汚染水、海洋放出に合格証
 東京電力福島第1原発事故で発生する、放射能汚染水を処理した後に残る高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)を薄めて海に放出する計画について、原子力規制委員会は18日、東電の申請案を了承、事実上合格とした。漁業者や地元住民、また中国や韓国など隣国から多くの反対や懸念の声が出ている。国は 年に福島県漁連に対し「関係者の理解なくしていかなる処分もしない」と約束、県漁連や全漁連は現在も絶対反対の立場を堅持しているが、国は昨年4月に海洋放出方針を決定、当事者不在のまま強行しようとしている。


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