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労働新聞 2022年5月15日号 トピックス

世界のできごと

(4月20日〜5月9日)

戦火拡大させる米の追加軍事援助
 バイデン米大統領は4月28日、ウクライナへの軍事支援や財政援助など総額330億ドル(約4兆3000億円)の追加予算を議会に提案すると表明した。また5月3日には米防衛機器大手ロッキード・マーチン社の工場を訪問、いっそうの兵器生産に発破をかけたが、同社をはじめ主要軍事企業の株価は上昇を続けている。ウクライナにおける戦乱が続くなか、米国のいっそうの軍事援助は戦火をさらに拡大させ、被害を深刻にするものである。

欧州などが原油輸入禁止の追加制裁
 欧州連合(EU)は4日、ウクライナに侵攻したロシアに対する追加制裁案を発表した。ロシア産石油輸入の年内禁止など。また主要7カ国(G7)も8日、ロシア産石油の輸入禁止を決定した。だが石油の国際指標は高騰、石油輸出機構(OPEC)にロシアも加わる「OPECプラス」も5日に開いた会合で米国などが求めた追加増産に応じない姿勢を示した。ほぼすべての国・地域の成長率見通しが引き下げられるなかでの追加制裁であり、世界経済にとって大きなダメージとなって跳ね返るだろう。

FRB、政策金利大幅引き上げ
 米連邦準備制度理事会(FRB)は4日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を0・5%引き上げ、年0・75〜1・00%とすることを決めた。通常の倍となる0・5%の大幅引き上げは2000年5月以来。併せて、コロナ対策による量的緩和策で膨らんだ保有資産の縮小も決定した。米国ではインフレ率が前年比8・5%にまで上昇、物価上昇で国民の不満が急速に高まっており、抑え込みを急ぐ。一方で新興国にとっては資本流出や通貨安、ドル建て債務の利払い負担増による財政悪化を招きかねない。今回の金融引き締めが世界的な金融危機の引き金になる可能性もある。

仏マクロン再選も国民の不満解消せず
 フランスで4月24日、大統領選挙の決戦投票が行われ、現職マクロン大統領が得票率58%で再選された。極右のルペン候補は42%。前回17年の決戦投票ではマクロン氏が66%、ルペン氏が34%で、両氏の差は縮まった。マクロン政権による国民犠牲の「改革」に反発が強まっていた一方、ルペン氏は移民排斥などの主張を隠し、物価高騰で苦しむ国民の生活打開を訴え支持を広げた。同時に棄権率は過去最高の28%にも達し、選挙結果が伝えられた直後にパリで青年などが「マクロンもルペンも嫌」とデモ行進した。政権続投が決まったものの、国民の不満は解消せず、政権の前には悪路が続く。

ソロモン諸島が中国と安保協定
 米政府代表団は22日、中国と安全保障に関わる協定を結んだ南太平洋のソロモン諸島を訪問、同国が中国軍を常駐させれば対抗措置を取ると脅した。同国は豪州の北東約2000キロに位置し、米国と豪州を結ぶシーレーンの要衝。同協定はアジア太平洋地域での米国の影響力後退と中国の存在感の高まりを印象づけた。

世界の軍事費、過去最高へ
 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は25日、21年の世界の軍事費動向を発表した。世界の軍事費は7年連続で増加、21年は2兆1130億ドル(約270兆5094億円)に上った。世界の軍事費が2兆ドルを超えるのは初。上位5カ国は米国、中国、インド、英国、ロシアで、世界全体の62%に。米国は8010億ドル(約10兆254億円)で世界全体の4割に達する。またSIPRIはロシアのウクライナ侵攻後に欧州各国が国防費を増加させ世界の軍拡競争はさらに深刻になると見通した。

人民のたたかい

(4月20日〜5月9日)

【世界のメーデー】
 米国ニューヨーク中心部で数百人の労働者がスト権の獲得などの要求を掲げてデモ行進を行った。同市のスタテン島にあるアマゾンの配送センターで同社初の労組が結成される中でのメーデーとなった。その勢いを示すかのように、アマゾン同様に組合敵視で知られるスターバックスの本社前などでも抗議の声を上げた。
 ドイツでは全国200カ所以上で集会やデモが行われ、約20万人が参加した。ショルツ政権による軍事費拡大を批判する声も上がり、国家財政を社会福祉や教育などに回すよう要求した。
 韓国では全国で7万人以上が集会やデモに参加した。ソウルでは民主労総主催の集会に1万人が参加、尹次期政権に対して、すべての労働者に労働基本権を付与することや、雇用の安定に向けた要求を突きつけた。


日本のできごと

(4月20日〜5月9日)

岸田政権の連休外遊、中国対抗前面に
 岸田首相は大型連休の4月29日から東南アジアや欧州を外遊した。東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要国であるインドネシア、ベトナム、タイを訪問、G20議長国であるインドネシアではロシア制裁への参加を呼びかけ、加えてウクライナ情勢に便乗しながら「中国脅威論」を強調、アジアの分断と対立をあおった。欧州ではG7加盟国であるイタリアや英国などを訪問、英国では日英共同訓練の円滑化協定で大枠合意した。また林外相は中央アジア、モンゴル、太平洋島しょ国を訪問、対中包囲網形成へと駆け回り、日米防衛相会談に出席する岸防衛相や萩生田経産相など4閣僚は訪米し軍事・経済両面で同盟深化を進めた。中国対抗を前面に出した危険な外交だ。

外交青書で「時代画す変化」と危機感
 林外相は22日の閣議で2022年版外交青書を報告した。冒頭で「国際社会は時代を画する変化の中」「世界は米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入」との認識を示し、中国を「日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念材料」と断じた。北方領土に関しては「ロシアが不法占拠」、領土問題解決と平和条約締結に向けた交渉は「展望を語れる状況にはない」とした。「不法占拠」の記述は19年ぶり、「日本固有の領土」の記述も11年ぶりで、ロシアに一定配慮してきた外交方針を転換した。岸田政権なりの危機感を反映だが、対米従属政治で自ら対中・対ロ外交を困難にしている。

自民、軍拡競争あおる「反撃能力」提言
 自民党安全保障調査会は21日、政府の安全保障戦略の指針となる国家安全保障戦略の改定に向けた提言案を了承した。政府が「違憲」としてきた「敵基地攻撃能力」について、「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有」と明記、名称を「反撃能力」とし、さらに攻撃対象を「ミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含む」とした。また国内総生産(GDP)比で1%ほどを目安にしてきた防衛費を5年以内に2%以上へ増やす方針や、海外への武器輸出の要件を大幅に緩和した「防衛装備移転三原則」の見直しなども盛り込んだ。従来の政府見解をはるかに逸脱し、軍拡競争と軍事的緊張を高める危険な内容だ。

円安加速も緩和維持、国民に大打撃
 日銀の黒田総裁は28日、金融政策決定会合後に会見し、大規模緩和を維持し円安阻止よりも金利抑制による景気下支えを優先する姿勢を改めて表明、10年物国債を0・25%の利回りで無制限に買い入れる指し値オペ(公開市場操作)を毎営業日実施すると表明した。これを受けて東京外国為替市場の円相場は20年ぶりに一時131円台に下落した。円安の恩恵を受けのは自動車など一部の輸出大企業であり、中小企業など広範な国民大多数にとっては物価高騰などでマイナスにしかならない。物価の安定は日銀法に定められた日銀の使命でもあり、困窮する国民を放置することなど許されない。

国の物価高対策、金額も内容も不十分
 岸田政権は26日、物価高騰に対する総合緊急対策を決定した。石油元売りへの補助金支給を9月末まで延長、補助額上限を25円から35円に引き上げる。またガソリンの基準価格を1リットルあたり172円から168に引き下げる。また低所得の子育て世帯に子一人5万円、新たに住民税非課税になった世帯に10万円支給する。中小企業支援として無利子・無担保融資を9月末まで引き下げる。国費の支出はコロナ対応の支援を含め6・2兆円で、2年以上に及ぶコロナ禍と物価高騰の二重苦に遭う国民を窮状から救うには金額も内容もまったく不十分だ。

沖縄県が復帰50年を前に新建議書
 沖縄が日本に復帰して50年となるのを前に、玉城知事は5月7日、「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」を発表した。米統治下の琉球政府が復帰前の1971年秋にまとめた「復帰措置に関する建議書」(屋良建議書)の多くが実現していない状況を踏まえたもので、基地の整理・縮小、米軍普天間基地(宜野湾市)の速やかな運用停止や名護市辺野古の新基地建設断念、日米地位協定の改定など、構造的・差別的な基地問題の早期解決を図ることを日米両政府に求めた。これらの訴えはまったく正当で、日米両政府が応えないことは許されない。

連合メーデーに官房長官、幻想あおる
 連合の第93回メーデー中央大会が4月29日、東京で開かれた。実際の集会開催は3年ぶり。岸田政権からは松野官房長官が出席、「人への投資を起点とした成長と分配の好循環の実現に向けご支援・ご協力を」と呼びかけた。官房長官の連合メーデー出席は民主党政権時代の平野氏以来12年ぶり。連合の芳野会長は、18日には自民党会合に出席するなど、夏の参議院議員選挙で連合を野党から引き離す政権与党の策動に手を貸し続けており、官房長官出席もその延長上だ。政権への接近で労働者の権利を守れるなど幻想で、芳野指導部への現場からの批判は当然だ。


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