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労働新聞 2022年4月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月30日〜4月9日)

国連総会、一方的ロシア非難に批判も
 国連は4月7日に総会を開き、ロシアの人権理事会理事国の資格を停止する決議を93カ国の賛成多数で採択した。この決議はウクライナおける民間人殺害を口実に日米欧など 58カ国が共同提案していた。しかし前回総会で採択したロシア非難決議時と比べ、反対は24カ国と急増、棄権国のうち18カ国が反対の意思を示した。一方で賛成票は3割程度減少、棄権票も38カ国から58カ国と約5割増えた。「権利はく奪は証拠が集まってから」(インドネシア)、「二重基準を看過できない」(エジプト)、「対話を続けるため連絡経路維持を」(メキシコ)などの声が新興国を中心に上がった。反対と棄権は計82カ国となり、不投票も合わせれば100カ国と賛成を上回った。米国などは決議採択で「ロシア非難で国際社会が一致」を演出する狙いだったが、米欧の「正義」押し付けへの反発拡大が露呈した形となった。

対ロめぐりG7やNATO内で乱れ
 先進7カ国(G7)や北大西洋条約機構(NATO)の外相会議が7日、ブリュッセルで開かれた。G7外相会議での共同声明ではロシアによるウクライナでの戦争行為について「大虐殺」と決め付け追加制裁を明記した。そして石炭輸入の段階的廃止などロシア産のエネルギー依存の低減がうたわれた。だが欧州は天然ガスの約4割をロシアに依存しており、制裁を石炭の輸入停止から石油やガスまで広げることには慎重だ。これに先立ち米バイデン政権はロシア最大手銀行やプーチン大統領親族の資産凍結を発表したが、エネルギー関連取引は例外として認めざるを得なかった。また欧州連合(EU)とNATO加盟国のハンガリーは、ロシア産ガスの購入代金について、ロシアが求めるルーブルでの支払いに応じる思を示した。またイタリアのディマイオ外相はNATOが軍事参加することに反対すると表明するなど、加盟国でも足並みが乱れている。

制裁で食料価格が世界的に暴騰
 国連食糧農業機関(FAO)は8日、3月の食料価格指数を発表、159・3と2カ月連続で過去最高を更新した。ロシアとウクライナは小麦、トウモロコシ、大麦、ひまわり油の主要輸出国で、ロシアのウクライナ侵攻により穀物・食用油市場が混乱していることが背景。FAOは先月、ウクライナ情勢の緊迫化で食料・飼料価格が最大20%値上がりし、世界的に栄養失調が増える恐れがあると表明していた。また穀物価格指数も17%上昇し過去最高水準に、植物油指数も23%上昇し過去最高を記録した。こうした状況は各国内における国民の不満を高め、階級矛盾を激化させている。

人民のたたかい

(3月30日〜4月9日)

 ギリシャ北部のアレクサンドルーポリス港で4月2日、鉄道会社の労働者が、米国とNATOによるウクライナに向けた装甲車の輸送や管理に関与することを拒否した。労働組合は「われわれは軍事機器がわが国の領土を通過することに加担することはない」と決議するとともに、労働者に対して経営側が圧力をかけていると抗議した。
 ペルーの首都リマで5日、燃料など諸物価高騰に抗議するデモが行われ、市民数千人が参加した。3月からの燃料価格の急騰に打撃を受けたトラック運転手がストライキなどで抗議行動を行い、それに肥料の高騰に苦しむ農民や労働者が合流、カスティジョ政権に対策を要求した。
 米国の首都ワシントンで4日、学生ローンの帳消しを求める青年・学生が集会を開催した。バイデン政権はコロナ禍で実施していた連邦学生ローンの返済猶予を今年8月いっぱいまで延長すると発表しているが、参加者は「根本的解決は帳消しが必要だ」と訴えている。
 米国のニューヨークで1日、インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムの物流拠点で、同社として米国内で初となる労組結成が従業員投票による賛成多数で可決された。米国内で110万人超を雇用するアマゾンは一貫して組合結成に敵対してきたが、待遇や労働環境改善を求める従業員らの声の高まりを示す結果となった。労働者は「新型コロナウイルスの感染拡大やインフレ下で、アマゾンは従業員の安全や生活への懸念をないがしろにしてきた。人びとが変革を求めていることが示された」と、その成果を誇った。同社での労組結成の動きは他の地域の物流拠点でも広がっている。


日本のできごと

(3月30日〜4月9日)

対ロ追加制裁、NATO会合に初参加
 岸田首相は4月8日、ロシアによるウクライナ侵攻の追加制裁を表明した。資産凍結をロシア最大手銀行に広げるなど拡大し、ロシア産石炭や木材の輸入を禁止、石油も依存を低減する。新規投資も禁止し、在日ロシア大使館の外交官ら8人を国外追放する。また先進7カ国(G7)協調の一環として備蓄石油1500万バレルを追加放出する。首相は「侵略を終わらせ平和秩序を守るため」と訴えたが、武器支援を含む米欧の介入でむしろウクライナの戦闘は激化・泥沼化し、犠牲が増えている。また岸田政権は5日にはロシアに対する貿易上の最恵国待遇の撤回を閣議決定し、また7日には林外相が日本の外相として初めて北大西洋条約機構(NATO)外相会合にも参加した。米欧のロシア圧殺にさらに深入りしているが、日本の国益もウクライナの平和も損ねている。

日比2+2、中国にらみ軍事協力強化
 日本とフィリピン両政府は9日、都内で外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を初開催した。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との2プラス2はインドネシアに次いで2カ国目。自衛隊とフィリピン軍の協力拡大を柱とする共同声明をまとめ、共同訓練に関する円滑化協定や物・役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の締結も含めて検討する方針を記した。フィリピンにとって中国は最大の輸出先で経済関係は深い一方、南シナ海で領土問題も抱える。日本は米国の意にも沿ってフィリピンを日米の枠組みにつなぎ留める思惑があるが、フィリピンは両にらみ外交で、日米の狙い通りは動いていない。

資源高の悪影響拡大、円安のひずみも
 日銀は1日、3月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表した。大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は7四半期ぶりに前回から悪化した。新型コロナウイルスの感染再拡大に加え、ロシアのウクライナ侵攻で原材料価格がさらに高騰したことが背景。また財務省が8日発表した2月の国際収支統計(速報)では、海外とのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字は1兆6483億円と前年同月比42・5%減で、資源高による輸入額の増加で2月としては7年ぶりの低水準。背景には安倍元首相が日銀に導入させた9年間続けられている異次元金融緩和による円安もあり、国民経済を守るため岸田政権は金融政策見直しを迫られている。

物価高騰の中で公的年金は減額へ
 公的年金は1日から支給額が改定され、6月に支払われる4、5両月分から0・4%減額される。支給額は賃金や物価の変動に合わせて毎年度改定されるが、コロナ感染拡大で現役世代の賃金が減少、22年度は2年連続の引き下げとなる。受給開始年齢も選択の幅が現行の60〜70歳から75歳まで拡大、在職老齢年金制度も見直し高齢者就労を促す。国は年金削減へ躍起だが、物価高騰の中での年金削減は苦境にある高齢者に追い打ちをかける蛮行だ。

成人年齢引き下げも救済制度は未整備
 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改定民法が1日、施行された。成年定義の見直しは約140年ぶり。18、19歳も十分な判断力があると扱われ、親の同意なく携帯電話やクレジットカード、ローン、賃貸住宅などの契約が可能になる一方、改定で未成年者取消権の適用外となり、消費者被害の拡大などが懸念される。しかし重大な被害が危惧される高校生を含む18、19歳のアダルトビデオ出演強要問題では同権に代わる救済法整備が急務だが、政権与党の動きは鈍い。成人年齢の引き下げは、07年に第一次安倍政権が国民投票法を強行導入した際に投票権年齢を 歳としたこととの整合性を取るための改定で、後付けに過ぎない。こうした経過からも、若者が国の不作為の犠牲になることは決して許されない。

辺野古でまたも不当な不承認取り消し
 斉藤国交相は8日、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設予定地の軟弱地盤改良に伴う設計変更を不承認とした県の処分を取り消した。県の処分を取り消すのは3回目。防衛省沖縄防衛局は20年4月に設計変更を申請したが、県は昨年11月に軟弱地盤の最も深い地点で地盤調査が行われていないなどとして設計変更を不承認に。対して防衛局は昨年12月に行政不服審査法に基づき国交相に審査請求した。岸田政権内の身内の論理による不当な判断だ。県民の総意に反し完成のあてのない基地建設はただちに中止するべきだ。

過疎地域指定自治体、初の半数超え
 総務省は1日、一昨年の国勢調査の結果に基づく「過疎地域」を公表した。国は過疎法に基づき人口の減少率が大きく財政力が弱い市町村を過疎地域に指定、財政支援などを行っているが、今回全国で65市町村を追加、全国1718市町村のうち885となり、1970年の過疎法施行以来初めて全国の半数を超えた。島根県で19市町村すべてで指定されたほか、鹿児島県は鹿児島市を除く42市町村が指定された。長年にわたる国の失政があらためて明らかになった格好だ。


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