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労働新聞 2022年3月25日号 トピックス

世界のできごと

(3月10日〜3月19日)

ウクライナ情勢めぐり米中首脳会談
 米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は三月十八日、電話会談を行った。両首脳の会談は昨年十一月以来。会談の大半はロシアのウクライナ侵攻に割かれた。バイデン大統領はロシアに中国が物的な支援を行えば「結果が伴う」などと言い立てた。だが、習主席はロシアへの制裁に反対する姿勢を改めて示すとともに、「(両国は)世界の平和と安定のために努力しなければならない」といさめるとともに、ロシアとウクライナとの和平協議を支持すべきだと強調した。ウクライナ情勢を利用しながら、中国へ圧力をかける米国だが、中国は米国の狙いを見透かし、冷静な姿勢に終始した。

FRB、2年ぶりにゼロ金利解除
 米連邦準備制度理事会(FRB)は十六日、二〇二〇年三月から実施していたゼロ金利政策を解除し、政策金利を〇・二五%引き上げることを決定した。利上げは一八年十二月以来。今回含め、年内に〇・二五%幅の利上げを計七回行うことも決めた。ウクライナ情勢の激化で、原油高騰や穀物供給の不安定化、物価上昇を受け転換する。二月の消費者物価指数は前年同月比で八%も上昇、国民の不満が高まっていた。急激な利上げは企業向け貸出金利や住宅ローンの金利上昇をもたらすもので、「米経済は金融引き締めに耐えられる」(パウエル議長)と強がるが「(物価高と不況が同時に進んだ)一九七〇年代型のシナリオに向かうリスク」(サマーズ元米財務長官)との指摘も上がる。基軸通貨ドルを握る米国の利上げは、新興国に流入した投資マネーが米国に逆流、新興国に影響を与えかねず、世界経済に打撃となる可能性もはらんでいる。

敵がい心広めるゼレンスキー大統領
 ウクライナのゼレンスキー大統領は十六日、米議会でオンライン演説を行い、北大西洋条約機構(NATO)によるウクライナ上空の飛行禁止区域の設定や戦闘機など追加の軍事支援を求めた。同大統領はロシアへの敵がい心を最大限あおり立てた。バイデン米大統領は同日、ウクライナに対して戦略無人機など八億ドル(約九百五十億円)規模の追加支援策を発表した。停戦協議が続く中、ゼレンスキー大統領の演説、バイデン大統領の対応はいっそう戦火を拡大させるものだ。

シリア大統領がUAE訪問
 シリアのアサド大統領は十八日、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビを訪問、ムハンマド皇太子と会談した。シリア内戦はアサド政権が軍事的勝利を確実にし、アラブ諸国は政策の転換を迫られていた。会談でムハンマド氏は「シリアはアラブの安全保障の柱」と述べ、人道支援への協力を伝えた。この会談に米国は「アサド政権を正当化させるもの」と苛立ちを隠さなかった。中東地域での米国の存在感の低下はいっそう鮮明となった。

人民のたたかい

(3月10日〜3月19日)

 イタリアのピサ市で三月十九日、同市にあるガリレオ・ガリレイ空港の作業員が「人道支援」と称してウクライナへの武器供給を行うことに反対する集会を開いた。ウクライナ行きの貨物機には人道援助物資が積まれると説明されていたが、作業員が弾薬など武器が入った箱を発見、積み込み作業を拒否していた。労働組合は「現政権が私たちを戦争に巻き込もうとしている」と批判するとともに、「人道主義の装い」は、ウクライナでの戦乱をさらに激化させる「偽りの援助」だと指摘、こうした航空便の運航をただちに停止するよう求めた。
 ギリシャのアテネで十八日、ウクライナの戦乱で燃料や肥料の高騰で苦しむ農民が減税や補助金の拡充を求め集会やデモを行った。年初から燃料価格の高騰に抗議する行動が行われていた。同国政府はこの間、減税などを行ってきたが、農民はこうした対策は不十分と抗議した。
 韓国のソウルで十一日、先の選挙で次期大統領に選ばれた尹氏が公約に掲げた「女性家族省の廃止」の撤回を求める集会が開かれた。主催した女性団体は男女間の対立を選挙利用したと尹氏を厳しく批判した。


日本のできごと

(3月10日〜3月19日)

ロ制裁で米と歩調、財界から慎重論も
 岸田首相は三月十六日、対ロ制裁の強化を盛り込んだ主要七カ国(G7)共同声明に基づいてロシアへの制裁で歩調を合わせる方針を示した。ロシアへの世界貿易機関(WTO)の規定に基づく最恵国待遇を撤回し、低関税をやめる対応などが柱。ロシア産原油の禁輸などの米国の制裁措置に日本や独は応じられない状況で協調姿勢を強調することが狙い。日本政府は前日にロシアに輸出禁止する半導体などハイテク製品の詳細を発表するなど米国に迫られるように制裁を強めている。一方で物価高騰が国民経済を冷え込ませるなか、「日本は島国でエネルギー資源に乏しい。制裁は慎重に議論すべき」(九州電力社長の池辺和弘・電気事業連合会会長)など異論も出ている。

日印首脳会談、ロ包囲網形成は不発
 岸田首相は十九日、インドのニューデリーでモディ首相と会談した。ウクライナ情勢を受け、岸田首相はモディ首相に対ロ政策で米欧と共同歩調をとるよう呼びかけたが、ロシアと軍事・経済面で関係の深いインドは姿勢を変えず、共同声明でもロシア明記は見送られた。一方、両首相は「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」としての両国関係をさらに発展させることで合意、岸田氏は五年間で五兆円規模の投融資を行うと表明した。また日米豪印四カ国の枠組「クアッド」の多分野での協力拡大でも一致した。米欧の意を受けたロシア包囲網強化の思惑は不発だったが、中国をにらんだ軍事・経済関係強化は進めた格好だ。

自民党大会、「連合」明記し秋波
 自民党は十三日、党大会を開催した。岸田首相(党総裁)は演説で、憲法九条への自衛隊明記や緊急事態条項創設を掲げる党の「改憲四項目」について「いずれも取り組まなければならない課題」と語った。一方で昨年の総裁選などで安倍・菅両政権との違いとして強調した「新自由主義的な政策の転換」には言及しなかった。また党運動方針には「連合並びに友好的な労働組合との政策懇談を積極的に進める」と「連合」を明記、関係を強める国民民主党と関係の深い労組との連携に前向きな姿勢を打ち出した。夏の参院選をにらみ支持基盤を広げ、同時に野党を割る思惑が露骨だ。

年金受給者に臨時給付案、与党に焦り
 自公与党は十五日、年金受給者らを対象にした臨時給付金支給を岸田首相に提言した。首相も国会答弁で積極的な姿勢を示した。公的年金の二年連続減額などを念頭に一人あたり五千円の給付が取り沙汰されているが、困窮者への生活支援対策としては合理性がなく、金額も不十分。「参院選を前にした投票率の高い高齢者に対するバラマキ」という批判が与党内からも上がるが、コロナ禍や物価高騰で国民経済は低迷し内閣支持率は低空飛行、政権与党の焦りが色濃いことの証左だ。

広島県議を一転起訴、出所徹底解明を
 二〇一九年の参院選広島選挙区をめぐる大規模買収事件で検察当局は十四日、河井元法相夫妻から現金を受け取った広島県議ら三十四人を公職選挙法違反(被買収)で起訴した。検察は昨年七月に受領側百人全員を不起訴にしたが、検察審査会が「起訴相当」と議決したため再捜査し、対応を一転させた。百万円単位に及ぶ高額な現金を受領した違反者もおり起訴は当然だが、総額約二千八百七十万円もの買収資金の出所は未解明。自民党本部から陣営に提供された一億五千万円から支出された疑いが濃厚だが、岸田首相は「説明は果たされた」と再調査を拒否した。真相の徹底解明が必要だ。

春闘集中回答、問われる連合の姿勢
 自動車、電機、鉄鋼などの大企業は十六日、労働組合の春闘要求に対し集中回答した。自動車では日産が月八千円の満額回答で、トヨタ自動車も既に満額回答を得ている。電機では日立と東芝、NECが三千円の満額回答で、三菱電機や富士通も前年実績を上回った。二年分の賃上げを一括で行う鉄鋼では日本製鉄が二二年度に三千円、二三年度に二千円を回答、三菱重工業とIHIはベアが復活、千五百円に。相次ぐ満額の背景には労使一体となった産業構造の変化への対応を求める財界の方針もあり、大手回答が労働者全体の賃金底上げにつながる保証はない。中小労組の春闘はこれからが本場で、連合指導部の姿勢が問われている。


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