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労働新聞 2021年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

バイデン政権不法移民の国外退去再開
 米国土安全保障省は十二月二日、米国で難民申請した「不法」入国者をメキシコ側に戻し、同国内で待機させる「移民プロトコル(MPP)」の再開を発表した。MPPはトランプ米大統領が導入した。バイデン氏は昨年の大統領選でトランプ氏の難民・移民規制策を批判し、一月の大統領就任直後にMPPを撤回していたが、逆戻りした恰好になった。MPP導入後はメキシコ側に「送還」された移民らが犯罪に巻き込まれる例が相次ぎ、人権団体や与党内からも判が出ている。

ドイツ3党連立の新政権発足
 ドイツでメルケル政権に代わって、社民党、緑の党、自民党の三党連立政権が発足した。連邦議会は八日、第一党の社民党のショルツ氏を新首相に選出した。社民党出身の首相は十六年ぶり。三党は基本政策で隔たりもあり、政権運営には課題も多い。新政権の外相には緑の党のべアーボック氏が就任、メルケル前首相が進めた対中・対ロ外交が軌道修正される可能性が高い。また欧州連合(EU)内部では移民政策などをめぐって不協和音も高まっており、EUの中心国として求心力をどう維持するかも注目される。

ウクライナ情勢めぐり米ロ直接協議
 米国はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の動きを後押しし、ロシアへの対抗を強めている。ウクライナとロシア国境で軍事的緊張が高まる中、バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領が七日、緊張緩和に向けで電話会談した。バイデン氏は「強力な経済制裁」を示唆してけん制、プーチン氏は「NATOの東方不拡大に加え、ロシア周辺に攻撃的兵器を配備しないという信頼に足る保証が必要だ」と強調した。対中対抗策に注力したい米国だが、ウクライナをめぐる動きにも手を取られている。

印ロ首脳会談で安保連携を強化
 ロシアのプーチン大統領は六日、インドを訪問しモディ首相と会談し安全保障面での連携強化を確認し、武器のライセンス生産など複数の安保協力事案に署名した。またロシア製最新防空ミサイルシステム「S400」の輸入も始めた。インドは米日豪印の「クアッド」にも加わっているが、ロシアとの関係も強化して「戦略的自律性」を保ちたい。

米の北京五輪外交ボイコット広がらず
 米政府は六日、来年の北京冬季五輪・パラに政府高官を派遣しない外交ボイコットに踏み切ると発表した。豪州、英国、カナダが同調することを表明している。一方マクロン仏大統領は九日、「(五輪を)政治問題化するべきではない」と述べ、米国に同調しないと表明した。イタリアも同調しないと表明、先進七カ国(G7)内の足並みも乱れている。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)

 英国の五十八大学で十二月一日、賃上げや労働条件改善などを要求して、大学教職員組合(UCU、十二万万九千人)が三日間のストライキに入った。大学側の回答はインフレ率を下回る賃上げにとどまっており、組合は、一律年額二千五百ポンドの賃上げのほか、賃金差別の一掃、非正規雇用の根絶などを求めている。
 米国・コロンビア大学で授業補佐や研究助手などで収入を得る大学院生らで作るコロンビア勤労学生組合(約三千人)による今年二回目のストライキが三日、二カ月目に突入した。学生らの主な要求は、賃上げ、医療保険給付対象の拡大、差別やハラスメント対応での中立的調停制度の導入など。
 米国の食品大手ケロッグでの二カ月以上に渡るストライキは七日、「製パン製菓タバコ製造製粉労働組合」(BCTGM)交渉チームと会社側による暫定合意が組合員の投票で否決され、ストは継続が決まった。組合は、賃上げ、医療保険、退職手当や有給休暇、正規・非正規の賃金体系改善などを要求している。
 米国の大手チェーンのスターバックスのニューヨーク州の直営店の従業員投票で同社初となる労働組合の結成が可決された。「スターバックス労働者連盟」は九日、「歴史的な勝利だ」との声明を発表した。


日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

臨時国会、所信で「敵基地攻撃能力」
 第二百七臨時国会が十二月六日に召集され、衆参両院本会議で岸田首相の所信表明演説が行われた。首相は従来通り「新しい資本主義」を強調したが、具体的内容に乏しく、安倍・菅政権継承の域を出なかった。一方で「敵基地攻撃能力」の保有検討を明言、「憲法改正」も強調するなど、米戦略に沿った軍拡に前のめりな姿勢を示した。内外政治で難問が山積する中、岸田政権は中国敵視で求心力を高めようと躍起だ。

安倍元首相「台湾有事は日米の有事」
 安倍元首相は一日、中国・台湾の研究機関が主催するイベントでオンライン講演し、中台関係について「台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の有事でもある」「台湾の国際的地位を一歩一歩向上させるお手伝いを」などと発言、露骨に中国の内政に干渉し中台の緊張をあおった。安倍氏はまた九日、派閥会合で北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」について「日本の意思を示す時は近づいている」と言及、岸田政権に米政府と足並みをそろえるよう迫った。自民内には「同調より主体的に」(福田総務会長)など慎重な意見も少なくないなか、安倍氏は右から政権を揺さぶり自身の影響力拡大を狙う。東アジアの緊張をあおる危険な策動だ。

憲法審で自公維国歩調、野党共闘後退
 衆議院は九日、今国会で初めて憲法審査会を開いた。自公与党に加えて日本維新の会と国民民主党が与党側の幹事懇談会に参加した。これまで立民などと野党側の幹事懇に出席していた国民は、今国会から与党側の幹事懇に参加、玉木代表が自ら審査会委員を務め「憲法議論は積極的にやり、審査会できるだけ開いて議論を深めようという立場。審査会を開くなという勢力とは一線を画したい」と記者会見で語った。改憲で四党の足並みをそろえたい自民からは「大きな進歩で、出席に敬意を表したい」(安倍元首相)と歓迎された。国民の改憲加担で野党共闘はさらに一歩後退した。

立民新代表に泉氏、野党共闘見直しも
 立憲民主党代表選挙が十一月三十日に臨時党大会で投開票され、決選投票の結果、泉健太氏が新代表に選出された。任期は二〇二四年九月末まで。旧国民民主党で国会対策委員長や政調会長を歴任した泉氏は「対決」よりも提言・提案型の野党を主張、共産党との野党共闘も一から見直す姿勢を示している。来年の参議院選挙をにらみ総選挙で後退した党勢立て直しが求められる泉氏だが、自民党政治への明確な対抗軸を示さない限り選挙でさえ勝利できないことは明白で、野党共闘が維持されたとしても国民のための政治実現への一歩とはならない。

米軍機がタンク投棄、大惨事と紙一重
 米空軍三沢基地(青森県三沢市)所属のF 戦闘機が三十日、飛行中に機体がトラブルを起こし、緊急着陸のため主翼に取り付けられていた燃料タンク二本を上空から投棄した。そのうちの一本は住宅街から数十メートルしか離れていない場所で発見されるなど、一歩間違えば大惨事となる事故となった。また戦闘機が緊急着陸して滑走路が使用不能となり、同日青森空港を発着する予定だった民間機八便が欠航した。防衛省は翌日、「安全性」が確認されるまで同機種の飛行停止を米側に要請したが、米軍はその翌日には飛行を強行した。これまでも三沢基地の米軍機はタンク投棄などの重大事故を繰り返しているが、米軍は住民の安全と日本の主権を完全に軽視し野放図な運用を強行し続けている。

米基地高濃度汚染水、発覚も公表せず
 沖縄県うるま市の米陸軍貯油施設で六月に人体に有害な有機フッ素化合物PFASを含む汚染水が流出した事故で、県・国・米軍の三者が事故後実施した調査で汚染水から国の暫定指針値の約千六百倍ものPFASが検出されたにもかかわらず、米側が合意しないため約四カ月間も調査結果を公表していない事実を地元紙などが十二月二日に報道した。日米地位協定を補う環境補足協定に基づく協議書では、立ち入り調査の条件として日米の合意に基づいて結果を公表することになっている。住民の生命や健康を守る責任を果たすには、地位協定を抜本的に改め、米軍と国・県との従属関係を解消するほかない。


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