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労働新聞 2021年9月15日号 トピックス

世界のできごと

(8月30日〜9月9日)

アフガン暫定新政権発足
 米軍が八月三十日、アフガニスタンから完全撤退、二十年に渡るアフガン侵略戦争は米国の完全な敗北で終結した。だが、敗退後も米国等はさまざまな条件を持ち出しタリバン政権への圧力をかけ続けている。アフガンの政権を握ったタリバンは七日、暫定政権の主要閣僚を発表した。首相代行に就いたアクンザダ師は声明で、「全ての国と強く健全な関係を築きたい」と表明、国際法の順守や人権保護、アフガンを国際テロの温床に回帰させないと強調した。タリバンの報道官は「さまざまなグループで構成する包摂的な政府を、今も模索している」と記者会見した。米国等は戦後復興を妨害するような圧力を止めるべきである。戦後復興のために新政権への国際的な承認と支援が急務である。

EU即応部隊創設の動き
 欧州連合(EU)は九月二日、国防相会合を開き、五千人規模のEU独自の即応部隊創設の構想を明らかにした。アフガニスタン撤退をめぐる混乱で、米国への軍事面での依存への危機感は強まっている。EU加盟国内では大きな異論はなく、ボレルEU外相は十一月にEUが示す戦略案に盛り込むことを明らかにした。EU内部にも対ロシアでは米国に依存せざるを得ない国もある。だが政治、経済、軍事面での戦略的自立をめざす動きはますます強まるだろう。

米外交立て直し迫られる
 バイデン米大統領と習近平中国国家主席が九日、米側からの申し入れで電話会談を行なった。バイデン氏は「米国は一度も『一つの中国』政策を変えようと思ったことはない」「誤解や誤判断あるいは予想外の衝突を避け、米中関係を正しい軌道へと戻したいと願っている」などと述べ、習氏も「中米関係が安定した関係に戻るよう促進したい」と述べたと報道されている。アフガンで失敗したバイデン氏は対中外交の立て直しを迫られており、「台湾」問題や中国国内の「人権」問題などには全く言及できなかった。一方で、二十四日には、対中包囲強化のための日豪印の首脳と「クワッド」の初対面会合を予定するなど、米外交の二面性もあらわになっている。

ワクチン格差世界で拡大
 世界で「デルタ株」など変異ウイルスが猛威をふるうなか、途上国と先進国のワクチン格差は広がる一方である。ワクチン接種完了者は米欧諸国では約五割だが、アフリカでは三%にも満たない。二十カ国・地域(G20)は六日、イタリアのローマで保健相会合を開き、ワクチンの公平な分配などの共同宣言を採択した。だが、ワクチン普及について具体策には踏み込めず、先進国の自国優先の「出し惜しみ」が続いている。国際通貨基金(IMF)は八月、主要七カ国(G7)などに対し、「約束した九億回の十%しか出荷されていない」と指摘した。ワクチン分配の仕組み「コバックス」への拠出の実績は米国は表明した一割、EUでもドイツ、イタリアは未拠出、EU全体でも三%しか拠出していない。ワクチンの拠出と増産は先進各国の責任である。

人民のたたかい

(8月30日〜9月9日)

 フィリピンのマニラで九月一日、医療従事者らが「多くの同僚が亡くなったり感染したり、辞職に追い込まれているにもかかわらす、われわれは手当をもらうために保健省の前にまだひざまずいている」と、政府に手当の支払いを求めてデモを行い、怒りの声を上げた。
 インドのウッタル・プラデーシュ州で五日、数十万人の農民が参加して、モディ政権が進める農業法の撤廃を求める集会が行われた。昨年来からの同法の撤廃を求める抗議行動で、最大規模。ムザッファルナガル市で、五十万人以上が参加した。史上最長の農民による抗議行動が続いている。
 中米エルサルバドルのサンサルバドルで五日、現職大統領の再選禁止の憲法解釈を変更し、連続再選を狙うブケレ大統領に対して、「独裁反対」などの声を上げるデモが行われた。徴兵制導入や女性への暴力対策の遅れなどで政権を批判する市民団体、学生組織などが参加した。


日本のできごと

(8月30日〜9月9日)

首相の退陣表明、1年で政権投げ出し
 菅首相は九月三日、月内に実施する自民党総裁選に出馬しないと表明、事実上退陣を表明した。新型コロナウイルス対策での失政や五輪開催強行などで国民の命と生活を危機に追い込み支持率が低迷、大型選挙での敗北などで昨年九月の就任から約一年で政権を投げ出す結末となった。これを受けて事実上自民党総裁選が始まったが、新たな政権も難題山積みだ。

宣言また延長、制限緩和案も提示
 菅政権は九日、コロナ対策で二十一都道府県に発令中の緊急事態宣言に関し、宮城・岡山両県を除く十九都道府県での延長を決定した。期限は三十日までで、宮城などはまん延防止等重点措置に移行させる。また同時に新たな行動制限の基本方針案を発表した。希望する国民全員の接種が終わる見込みの十〜十一月頃を目安にワクチン接種や陰性証明の提示などを要件に制限を緩和、宣言やまん防が解除されていなくてもイベントの上限人数の引き上げや飲食店での酒類提供の解禁も検討するなどとした。「宣言慣れ」「自粛疲れ」が指摘されるなか、総選挙を前に国民の不満をそらす思惑が透けるが、ワクチン頼みの楽観論でさらなる感染拡大を引き起こす危険性もある。

デジタル庁発足、国民監視強化の危険
 政府のデジタル庁が一日、正式に発足した。各府省庁に対する勧告権など強力な総合調整の権限を持ち、国の情報システムを統括・監理する。約六百人の職員のうち約二百人を民間から起用、大半が民間企業に籍を置いたままテレワークなどで公務をこなす。コロナ禍であらわになった「デジタル敗戦」のばん回を狙う菅政権肝入りの行革だが、国家権力による国民の管理・監視のさらなる強化が真の狙い。官民癒着や便宜供与、個人情報の漏洩(ろうえい)の危険も指摘されており、今後同庁の廃止を求める運動が必要だ。

概算要求、四年連続で過去最大更新
 財務省は八月三十一日、二〇二二年度予算の概算要求を締め切った。総額は一般会計で百十一兆円台となり、四年連続で過去最大を更新した。特に防衛費は五兆四千七百九十七億円を計上、十年連続で前年度を上回り、八年連続で過去最大の更新をもくろまれている。「中国の脅威」を念頭に、長射程ミサイル開発費や最新鋭ステルス戦闘機購入のほか、沖縄本島に新たなミサイル部隊設置なども計画している。自公与党は、過去最大の血税を、コロナ禍で貧窮する国民のためには使わず、米国と足並みをそろえた中国威嚇のために注ぎ込んでいる。

英空母が横須賀初入港、中国包囲強化
 英空母クイーン・エリザベスが九月四日、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に入港した。英空母の入港は初。五日にはオランダ海軍のフリゲート艦も海上自衛隊横須賀基地(同)に入港、これらの空母打撃群は二日から東シナ海、四国・関東南方で実施される日米英・オランダとカナダの五カ国共同訓練「パシフィック・クラウン」に参加、数週間にわたり共同訓練などを行う。日米両政府は中国への軍事的包囲網への欧州引き入れに血道を上げているが、これらは東アジアの軍事的緊張をあおる危険な蛮行だ。

全国知事会が国民運動本部創設へ
 全国知事会の新会長に三日、鳥取県の平井知事が就任した。平井氏は「政府が動かなければ感染防止対策が進まないと言うだけでは済まされない。私たちは現場で命を抱えており、政府とは別の、多次元の国民運動的な手法が必要」として、知事会に日本医師会や経団連など諸団体と協調した国民運動本部設置、協調した取り組み推進や国民への情報発信を進めると語った。コロナ対策で自治体独自の取り組みの重要性を訴えたが、これはコロナで失政・無策を続ける政府や政権与党への不安・不満のあらわれでもある。

秋元被告に実刑判決、安倍氏にも責任
 カジノを中核とする統合型リゾート(IR)事業をめぐる収賄と組織犯罪処罰法違反(証人等買収)の罪が問われた裁判で、東京地裁は七日、元内閣府副大臣で衆院議員の秋元被告(自民党離党)に懲役四年の実刑判決を言い渡した。カジノは安倍前政権が成長戦略の目玉として推進してきた国策で、任命責任も含め安倍前首相の責任も厳しく追及されるべきだ。


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