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労働新聞 2021年8月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月30日〜8月19日)

タリバン、アフガン全土を制圧
 アフガニスタンで八月十五日、イスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧した。タリバンが本格攻勢を開始して南部の州都ザランジを制圧して以来わずか十日間でほぼ全土を制圧した。米欧や日本が支援してきたガニ政権は不正・腐敗まみれの果てにあっけなく崩壊。政府軍・治安部隊は全く無力だった。タリバンの報道官は「追い求めてきた国家の自由と人びとの独立を手に入れた」と語った。米国は対テロを口実に二十年間にわたってアフガンを侵略、蹂躙(じゅうりん)してきた。アフガン側は民間人だけで四〜五万人の犠牲者が出たとされる。多額の戦費をつぎ込んだ挙句、米国内には厭戦気分が広がり、撤退期限としていた八月末まで持ちこたえられず、「サイゴン陥落」を想起させるぶざまな敗走劇を世界にさらした。

ASEAN関連の外相会議開かる
 東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした一連の外相会議が開かれた。二日のASEAN外相会議から、六日のASEAN地域フォーラム(ARF)外相会議まで続いた。米国は欧州との関係を再構築して対中包囲網を強めようとし、一連の会議に合わせ英国は空母打撃群を南シナ海に派遣するなど、対中包囲とASEANをめぐる綱引きはいちだんと激しくなっている。中国は「域外国の介入」を強く非難、ASEANの内部からも米国の「人権外交」押しつけを「内政干渉」とする反感も生まれている。

米韓合同軍事演習始まる
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が強く反対する中、朝鮮半島有事を想定した米韓合同軍事演習が十六日始まった。今回の演習は図上演習のみ行われるが、バイデン米政権が歴代政権と同様に朝鮮を敵視し、東アジアの不安定化を画策していることのあらわれだ。

コロナ感染拡大世界で二億人突破
 新型コロナの感染は世界で引き続き拡大し、五日、感染確認者は二億人を突破、死者は四百二十五万人を超えた。現在は感染力が強い「デルタ株」が中心で、世界的に感染の波は第五波に入った模様。欧米では三回目のワクチン接種の動きが拡大している。ワクチン不足の中で先進国と新興諸国との接種格差が広がり、世界保健機関(WHO)は九月末まで三回目接種の中止を求めている。また、「ラムダ株」の世界的な拡大も懸念される。コロナ禍の長期化は東南アジアの製造業を直撃、自動車の操業停止や物流への影響も出ている。

IPCCが地球温暖化早まる予測
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は九日、地球温暖化のテンポが早まるという第六次報告書を公表した。IPCCは設立以来初めて、ごくわずかな例外を除き、温暖化は全て「人間の活動によるのは疑う余地がない」と断定、すでに「手遅れになっている」と報告した。各国と企業は温暖化対策を新たな投資先として、技術開発や資源確保の競争を激化させている。

人民のたたかい

(7月30日〜8月19日)

 レバノンのベイルートの港湾で起きた大爆発から一年となる八月四日、真相究明や責任者の追及などを求めて数千人が首都各地でデモ。元閣僚らが事情聴取を拒否しているため、関係者の処罰は一向に進んでいない。デモ隊は犠牲者の写真を掲げ「免責特権の剥奪を」などと要求して治安当局と激しく対峙した。
 チリのカセロネス銅鉱山の労働者が十日からストライキに入った。労働条件をめぐって鉱山側と組合の協議が決裂、本格的な操業再開は未定。同鉱山は、年間十万トンの銅原料を生産、日本全体の輸入量の約一割を占める。日本のJX金属が一〇〇%の権益を持つ。
 ドイツで十日、機関士労組(GDL)が賃金の改善を求め、ストライキに突入した。夏休みに入っている同国各地で鉄道の運行が乱れた。貨物列車から始まったストは、十一日には長距離列車など他の鉄道サービスにも拡大し、十三日まで続いた。


日本のできごと

(7月30日〜8月19日)

五輪閉会、感染爆発・医療崩壊に拍車
 東京五輪が八月八日、閉幕した。五輪開催で医療資源を割いたことやお祭りムードを盛り上げたことで新型コロナウイルスの感染は開催期間中も爆発的な拡大を続け、医療崩壊に拍車をかけた。また政府は南米で大流行しているコロナ変異株の「ラムダ株」が国内で初めて検出されたことを、検出から十七日も経過した六日に公表するなど、五輪開催のために国民の安全に直結する情報統制も行った。国民の生命と生活を犠牲にした菅政権の罪はきわめて重い。

在宅死放置の原則自宅療養方針
 厚生労働省は二日、コロナ感染者の多い地域では原則として入院対象者を重症患者や特に重症化リスクの高い人に絞り込み、入院しない人を原則自宅療養とすることを可能とする方針を公表した。重症化リスクの高い高齢の感染者の減少や、デルタ株の広がりに伴う感染者増を背景に、病床ひっ迫を避ける狙いとの説明だが、これまで「原則」だった入院や宿泊療養を自宅療養に変更、事実上の方針転換。これについて政府対策分科会の尾身会長は「政府とは毎日のように相談・連絡しているが、この件に関しては相談したことはない」と明かすなど、医療放棄・在宅死放置の言語道断を政権の独断で強行した。コロナ禍がまさに人災であることの証左だ。

終戦の日、負の歴史への反省皆無
 菅首相は十五日、就任後初めて終戦記念日の全国戦没者追悼式で式辞を述べた。「先の大戦では三百万余の同胞の命が失われた」と述べるも、日本が引き起こしたアジア太平洋戦争で二千万人を超すアジア諸国民の命を奪ったことにまったく言及せず、一方で安倍前政権が集団的自衛権の行使容認を正当化するために使用した「積極的平和主義」には言及した。同日には萩生田文科相、井上科学技術担当相、小泉環境相の三閣僚が靖国神社を参拝、また安倍前首相も参拝するなど、政府与党には侵略・植民地支配の歴史を反省する姿勢は皆無で、むしろ中国への敵視姿勢を示す機会として利用する許しがたい蛮行を重ねた。

馬毛島に大規模港湾、一大拠点化も
 防衛省は六日、鹿児島県西之表市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地建設計画に関連し島内に整備する港湾施設のイメージ図を公表した。島東側に護衛艦などが接岸できる大規模な係留施設建設を予定、沖合約千三百メートル、南北約千メートルに及ぶ大規模な施設となる。米軍の強襲揚陸艦や自衛隊の大型艦船、また事実上の空母へと改修する海上自衛隊の護衛艦も入港可能となり、日米の一大軍事拠点とされる可能性もある。港湾施設予定地は地元漁民にとっての好漁場でもあり、大規模基地化による種子島や屋久島などの住民生活への悪影響は避けがたく、危険な計画だ。

沖縄で米軍機部品落下、あわや大惨事
 在沖米海兵隊は十三日、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属のオスプレイ一機が飛行中に重さ約二キロのパネルとフェアリングと呼ばれる覆いを十二日に落下させたと通知した。大惨事と紙一重の事故だが、沖縄防衛局への通知は落下から一日近く経っており、また十九日には実際の部品は五倍近く大きかったたことを発表するなど、県民の安全安心軽視も甚だしい。こうした状況に対し玉城知事は事故原因究明までの同型機飛行停止を求めているが、米側は「必要ない」と応じず、日本政府も「米側による適切な措置が取られている」(岸防衛相)と停止を求めていない。危険な状態を放置する日米両政府の姿勢は許されない。

コメ先物廃止、財界の策動とん挫
 農水省は六日、大阪堂島商品取引所が申請した米先物取引の恒久的な「本上場」への移行を不認可とした。同取引所は米先物取引から完全撤退する方針を表明、米先物は上場廃止となる。米の先物取引は二〇一一年に試験上場され二年間の期限を四回延長してきたが、取引に参加する生産者や流通業者の数が増えず認可基準を満たさないと判断された。コメ流通の全面自由化を求める財界の意に沿って導入された試験上場だが、コメを投機の対象とすれば価格や生産の不安定化は避けられない。コメ生産は国の食料安全保障に直結する問題で、国は責任を持つべきであり、先物廃止は当然だ。


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