ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2021年6月15日号 トピックス

世界のできごと

(5月30日〜6月9日)

米上院、包括的な対中対抗決める
 米上院は六月八日、先端技術分野で中国を封じ込めるための「米国イノベーション・競争法案」を可決した。同法は半導体の生産やハイテク分野を中心とする研究開発に今後五年間で総額二千五百億ドル(約二十七兆円)を投じるとともに、日本などの同盟国との連携強化も謳った。また同法は経済にとどまらず、香港や台湾、ウイグル問題を念頭に中国国内の「人権問題」への対応策も明記されている。対中対抗の強化は与野党の共通認識になっていることを示すとともに、日本などの先端技術を対中対抗の名の下に収奪する意図も透けて見える。

米国で露骨な富裕層優遇策が暴露
 英国ロンドンで開かれていた主要七カ国(G7)財務相会議は五日、法人税最低税率を「一五%以上」とすることや、GAFAなど巨大IT企業の税逃れを防ぐ国際課税ルールについて明記した共同声明を採択した。こうしたなか、米報道機関は内国歳入庁(IRS)の納税記録を公表した。それによれば、米アマゾン創業者のベゾス氏ら富裕層上位二十五人の合計保有資産価値は二〇一四年〜一八年に約四千十億ドル(約四十三兆円)増えたが、連邦所得税の支払額はわずか百三十六億ドル。ベゾス氏は〇七年、会社株価が二倍以上になったにもかかわらず、所得税を払っていなかった。米国では株式や不動産資産は売却されない限り、課税所得とみなされない。富の増加に対する「真の税率」はわずか一・一%。「多国籍企業への課税において、より公平な競争条件を整える」(イエレン米財務長官)と言うが、米国などは露骨な富裕層の優遇策を続けている。

景気悪化で1億人が深刻な貧困
 世界銀行は八日、「世界経済見通し」を公表した。二一年の世界の成長率を五・六%と予測、一月から一・五ポイント引き上げた。中国などの経済回復が世界経済の成長をけん引するとともに、主要国におけるワクチン普及や大型経済対策が各国の国内総生産(GDP)の急回復を支えていると指摘している。一方、新興国・発展途上国での景気悪化が長期化すれば二一年末までに約一億人が深刻な貧困状態に陥ると警鐘を鳴らしている。

ILO、「危機の終えん遠く」と警鐘
 国際労働機関(ILO)は四日、「世界の雇用および社会の見通し」と題する報告書を発表した。それによれば、コロナ禍で雇用と実労働時間の減少し、所得が急落、一九年時と比較して働く貧困層が世界で一億八百万人増加したと指摘している。本人およびその家族が一人一日当たり三・二〇ドル(約三百五十三円)未満で暮らす労働者を「働く貧困層」と規定、コロナで「貧困層の根絶に向けた五年間の前進が無に帰した」と述べている。その上で、危機の終えんはまだ遠く、雇用が以前の状態までに回復するには早くても二三年との予測している。

人民のたたかい

(5月30日〜6月9日)

 韓国で六月九日、全国宅配労働組合(約六千五百人)が過労死防止に向けて行われていた労組と企業側、そして政府・与党との協議が決裂したことを受け、無期限ストライキを行うと発表した。まず二千百人の組合員がストに参加、その他の組合員は仕分け作業を拒否する時限ストを行うとしている。八日に行われた政労使協議では今年一月に合意した作業に専任員を充てる対策の導入時期をめぐって、即時導入を求める労組側に対し、経営側は遅らせようという姿勢に終始していた。
 ドイツのベルリンで八日、日本の福島第一原発事故で生じている汚染水の海洋放出決定に抗議する集会が開かれた。日本やドイツ、韓国の反核、環境団体が開いたもので、「太平洋の核汚染を食い止めよう」と訴えた。
 ブラジル各地で五月三十日、新型コロナウイルス対策を軽視するボルソナロ政権に抗議するデモが行われた。ブラジリアではデモ参加者が議事堂前で大統領の弾劾とともにワクチン接種を急ぐよう求めた。大統領は新型コロナを軽視する発言を繰り返し、マスク着用などの感染対策にも反対。ブラジルでの死者は、世界で米国に次いで二番目に多い約四十六万人。感染者数も百六十万人超と、世界三位だ。


日本のできごと

(5月30日〜6月9日)

茶番の2年ぶり党首討論
 国会で六月九日、党首討論が行われた。枝野・立憲民主党代表は東京五輪の開催や新型コロナウイルス感染症対策などを質した。首相は具体的な感染対策には触れず、「思い出話」で「時間稼ぎ」した。対中包囲網を約束した日米首脳会談など、国の進路をめぐる重大事態に言及した党はなかった。党首討論は一九九三年に細川政権が導入したが、形骸化が進み今回は約二年ぶり。安倍・菅首相がまともに答えないだけでなく、与野党が基本政策で大差ないことが背景で、まさに茶番だ。

医療費負担倍増法案が可決
 改定高齢者医療確保法が四日、参議院本会議で自民、公明などの賛成で可決、成立した。一定以上の収入がある七十五歳以上の高齢者の医療費窓口負担を一割から二割に引き上げるもの。単身で年収二百万円以上、夫婦で三百二十万円以上の約三百七十万人が対象。高齢者の医療機関からの排除を強めるもので、対象拡大も不可避的。コロナ禍で国民の命と健康が大きく脅かされるなか、断じて許せない悪法だ。

台湾にワクチン提供で政治利用
 日本政府が提供したワクチン百二十四万回分が四日、コロナ感染が急増している台湾に到着した。米国も七百万回分の提供を表明した。提供されたのは日本で生産された英アストラゼネカ製品だが、日本では副作用などを理由に使用されていない。台湾当局は中国からのワクチン提供申出を拒否した上で受け入れており、米日台によるワクチンの政治利用。米日にとって、対中包囲網を強化するためのシンボルだ。

日豪2+2で「台湾」明記
 日豪両政府は九日、外務・防衛担当閣僚協議(2+2)を開いた。同会合は二年半ぶり。共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」と初めて明記、中国・海警法にも「懸念」を表明、自衛隊が防護できる他国軍艦艇にオーストラリアを加えることが確認された。米国に続き、集団的自衛権の対象としたもの。自衛隊と豪軍の共同訓練による入国手続き「円滑化協定」の調整加速でも合意した。中国に対抗した、米国主導の「クアッド」強化策でもある。だが、オーストラリアは資源を中心に輸出の約四割が中国向けであるなど依存度が高く、米日の思惑通りに進む保証はない。

骨太方針、コロナ打開めざすが…
 経済財政諮問会議は九日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案をまとめた。コロナ禍での「対応の遅れ」を認め、検討課題として「国と地方の新たな役割分担」を挙げ、保健所への指示権限の明確化などの対策を明記した。また、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を二五年度に黒字化する従来目標を「堅持」するとしたが、展望はない。支配層は噴出した諸矛盾を打開するにおおわらわで、犠牲は国民に押し付けられる。

規制改革会議、オンライン化掲げる
 政府の規制改革推進会議(議長・小林元経済同友会代表幹事)は一日、菅首相に答申を提出した。二五年までに約二万二千ある行政手続きの九八%以上をオンライン化する目標を掲げ、キャッシュレス支払いの普及も打ち出した。コロナ禍での政府の無様な対応を口実に、「デジタル化」を加速させたい財界の要求に沿ったものだが、情報漏えいなどのリスクが高まる。

デタラメなNTT接待報告書
 NTTは七日、総務省幹部などへの接待問題に関する調査報告書を公表した。一六〜二〇年、費用を折半しない会食は二十九件、うち政務三役が出席するものが五件。同社は澤田社長らを処分したが、「便宜供与」や「行政をゆがめた事実」は否定した。接待常態化の背景は、菅政権が「目玉」とした「携帯電話料金引き下げ」があるとされるが、まったく不十分な調査だ。

上場企業のリストラ急増
 東京商工リサーチは三日、上場企業による六月上旬までの希望退職者募集が五十社・一万二百二十五人に達したと発表した。昨年の一・七倍で、業種別ではアパレル・繊維の八社、電気機器の七社と続き、人数では日本たばこ(JT)の二千九百五十人が最多。これ以外の中小企業での解雇などは枚挙に暇がない。大企業はコロナ禍を口実に、競争力強化策を強めている。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2021