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労働新聞 2021年6月5日号 トピックス

世界のできごと

(5月20日〜5月29日)

イスラエルとハマス停戦合意
 東エルサレムからのパレスチナ人の強制退去命令などに端を発したイスラエルとパレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスとの十一日間にわたる大規模な衝突は五月二十一日、エジプトの仲介で停戦に合意した。イスラエルの空爆などでガザ地区では子どもを含む二百四十三人が犠牲となった。エルサレムをめぐる対立は続き、今回の停戦も長続きする保証はない。今回の大規模衝突で米国は国連の会議でもイスラエル寄りの姿勢に終始して停戦を妨害、衝突を長引かせた。中東での米国の存在感も弱まっていることが浮き彫りになった。

米韓首脳会談、独自性保つ韓国
 バイデン米大統領と韓国の文在寅大統領が二十一日、ホワイトハウスで会談。共同声明で「朝鮮半島の完全な非核化」をめざし、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との「対話を模索していく」方針を確認し、文氏が目指す南北対話について、バイデン氏が支持を表明した。また「台湾海峡の平和と安定維持の重要性」と明記、名指しを避けつつも中国をけん制するものとなった。米国は、中国を牽制する日米豪印の「クアッド」に韓国を同調させる目論見だが、文大統領は慎重な姿勢だ。会談に先立ち、韓国政府は中国側と事前の擦り合わせを行なったことで、声明に対する中国の批判も抑制的なものとなった。また対米投資などで米国の譲歩を引き出すなど、韓国のしたたかな外交は、米追随一辺倒の菅政権の外交姿勢とは対照的だ。

WHO、先進国へのワクチン偏重警告
 世界的なコロナ感染収束が見通せない中、世界保健機関(WHO)のオンラインで始まり、テドロス事務局長は演説で「世界は依然として非常に危険な状態」と述べ、一部の先進国にワクチンが集中している現状の是正を訴えた。テドロス氏は、今年の感染者が既に昨年一年間の合計を上回っており、死者数も今後三週間のうちに昨年一年間を超えるだろうと指摘した。世界のワクチン接種の七五%が、わずか十カ国に集中している点を挙げ、「恥ずべき不公平だ」と批判した。だが、先進国を中心にワクチンを自国優先で囲い込んだり、政治的な戦略物資として利用する動きが相次いでいる。

米予算教書発表、実現へ道険し
 バイデン大統領は二十八日、二二会計年度予算教書を議会に提出した。歳出は、インフラ投資や社会保障などの成長戦略を踏まえ、コロナ感染拡大前を三五%上回る六兆百十億ドル(約六百六十兆円)を要求した。政権発足後初となる予算教書で、政府が経済活動に積極介入する「大きな政府」路線を鮮明にした。国防費では、対中抑止力強化を柱に過去最大の研究開発予算を配分した。財政赤字は二二年度に一兆八千三百七十億ドルに上り、今後十年間、一兆ドル台で推移し、債務残高は、二三年度以降も第二次大戦直後を上回る水準が続く。バイデン氏は超党派での合意をめざしているが、議会での共和党の反対は強く、成立は見通せない。

人民のたたかい

(5月20日〜5月29日)

 米国ミネソタ州ミネアポリスなど米各地で二十五日、昨年五月に黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官に首を押さえつけられて死亡した事件から一年を迎え、追悼集会や人種差別の撤廃を訴える抗議活動が行われた。
 英国内で働く米配車・宅配サービス大手のウーバー運転手を組織する全国都市一般労働組合(GMB)は二十六日、同社が自らを労働者代表として認めた合意を結んだ。英最高裁は二月、ウーバーの運転手らを従業員として扱うべきという判断を示していた。GMB(組合員約六十二万人)は、ウーバーの英国内の運転手・配達員約七万人を代表して最低賃金の保証や有給休暇の付与などの団体交渉を行なう。
 ブラジル各地で二十九日、ボルソナロ大統領の新型コロナ対策に抗議するデモが行われた。ブラジリアではデモ参加者が議会前で大統領の弾劾を訴え、ワクチン接種を急ぐよう要求した。デモはこのほか、リオデジャネイロなど各地で行われた。野党や労働組合は、大統領が接種事業を遅らせていると批判を強めている。


日本のできごと

(5月20日〜5月29日)

緊急事態再延長、失政で2カ月近くに
 菅政権は五月二十八日、新型コロナウイルス対策として東京や大阪など九都道府県に出されている緊急事態宣言を六月二十日まで期限を延長することを決定した。同時にまん延防止等重点措置についても関東三県など五県の期限を同日まで延長する。東京など四都府県は二回目の延長で、菅首相が「短期集中」と言って始めた今回の宣言は二カ月近くにも及ぶことに。コロナ検査など感染防止策や医療拡充、業者への補償も依然として不十分なままで、菅政権の失政ぶりがきわまっている。一方で東京五輪実施に向けて医療資源など国力を割き、国民の生命と生活は踏みにじられ続けている。

改悪医療法成立、医療崩壊促す危険
 改定医療法案が二十一日、参院本会議で自公与党などの賛成多数で可決・成立した。消費税を財源い病床削減を進めた病院に財政支援する内容で、地域医療構想で示されたは四百三十六の公立・公的病院の再編統合リストも撤回されていない。またすべての勤務医に年九百六十時間の時間外労働上限を設けたものの、年千八百六十時間を上限とする特例を追認しており、医師の過労死増加につながりかねない。医師・看護師の抜本的な増員、医療提供体制の拡充こそが求められているコロナ禍のなか、むしろ医療崩壊を促す危険な改悪だ。

改悪少年法成立、厳罰化で少年法後退
 改定少年法が二十一日、参院本会議で自公与党などの賛成多数で可決・成立した。現行法の全件家裁送致は維持しながらも、十八・十九歳の少年を「特定少年」と規定、成人と同様の刑事手続きを取る検察官送致(逆送)の対象犯罪を拡大し、実質的に少年法の適用を除外する範囲を広げて刑罰化を図る内容で、起訴後は実名報道も解禁される。十八歳以上を「成年」とする改正民法と同じく、二〇二二年四月に施行される。更生と再犯防止、立ち直りのための少年法を後退させる改悪で、あらゆる方面で国民監視・弾圧強化を進めるための一手でもある。

日EU首脳声明、「台湾」を初明記
 菅首相は二十七日、欧州連合(EU)のミシェル大統領などとオンラインで会談した。年一回の定期首脳会議だが、実施は二年ぶりで、菅政権では初めて。発表された共同声明では初めて「台湾」に言及、中国による東シナ海・南シナ海での現状変更の試みに「強く反対する」と記し、EUが対中国政策に関与することも確認した。四月の日米首脳会談の成果文書に書き入れた「台湾海峡の平和と安定」の文言を踏襲、六月に英国で開くG7首脳会議(サミット)でも「台湾問題」を取り上げる流れをつくる狙いで、菅政権は米国の先兵として中国包囲強化を買って出ている。

給与額8年ぶり減、パート数は初の減
 厚生労働省は二十八日、二〇年度の毎月勤労統計調査を発表した。一人当たりの現金給与総額(月平均)は前年度比一・五%減の三十一万八千八十一円で、八年ぶりに減少、リーマン・ショック後の〇九年度(三・三%減)以来十一年ぶりの下げ幅となった。飲食サービス業(七・〇%減)や運輸・郵便業(五・四%減)など外出の自粛などの影響を受けやすい業種で賃金の落ち込みが目立った。パートタイム労働者数は千五百九十三万五千人で〇・九%減った。減少は調査を始めた一九九〇年以来初で、非正規雇用で雇い止めが広がったことを示している。既に明白となっている実際が公的統計で改めて示された格好で、国には国民生活を守る早急な対応が求められている。

米軍、過去に沖縄への核攻撃容認も
 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は二十二日、一九五八年の「第二次台湾海峡危機」の際、米軍の統合参謀本部が中国本土への核兵器使用計画を準備するよう当時のアイゼンハワー政権に提言していたことを報じた。当時の米政権が中国に対する核兵器の使用を検討していた事実は既に公になっていたが、今回初めて計画の具体的な内容が明らかになり、参謀本部議長は報復として沖縄などの米軍基地が核攻撃される事態も容認する意向だったことも判明した。日米両政府が中国への軍事的包囲網を強化、沖縄を含む南西諸島や九州の基地機能を増強させているが、これが住民にとってきわめて危険であることを再認識させられる史実だ。


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