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労働新聞 2021年5月25日号 トピックス

世界のできごと

(5月10日〜5月19日)

米ロ、本格的な関係改善見通せず
 ブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相は五月十九日、アイスランドで会談した。バイデン米政権発足後、米ロの外相が対面で会談するのは初。ブリンケン氏は「同盟国に攻撃的な行動を取るなら対応」とロシアをけん制し、これに対してラブロフ氏は「米ロ間で深刻な隔たりがある」と明言、溝は埋まらなかった。一方、米国はドイツとロシアを結ぶガスパイプライン計画をめぐる制裁の一部発動の見送りを発表、対ロ関係を安定化させる姿勢も見せた。米側は「唯一の競争相手」と決め付ける中国へ外交資源をシフトさせる狙いだが、中ロ間の今年一〜四月の貿易額は過去最高額に達し、外交・安全保障でも連携を強化、米国の分断策が成功する見通しはない。

イスラエル、連日のガザ空爆
 イスラエルは十日から連日のようにパレスチナ自治区ガザに空爆を行い、子ども含む二百人以上が殺害された。この間、イスラエルは東エルサレムに居住するパレスチナ人の立ち退きを迫り、弾圧を強めていた。またイスラエルはガザへ直接軍事侵攻する構えも見せた。同国ではネタニヤフ首相の組閣が失敗、政権崩壊打開へ強硬姿勢を見せ支持を高める狙いもあった。また爆撃の口実としてイスラム組織のハマスによる攻撃への「報復」を挙げるが、事実上の無差別爆撃で、この暴挙に国際社会はもちろん国内からも「無意味な戦い」との声が上がっている。

空爆支持する米「人権」の欺まん
 バイデン米大統領は十五日、ネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長とそれぞれ電話で協議したが、ネタニヤフ氏にはイスラエルの行動を「強く支持する」と明言した。十六日には国連安保理が開かれたが、米国はイスラエル寄りの姿勢に終始、「ある国の反対で声明を発表できない」(中国)と米国を批判する声が欧州含む各国から上がった。トランプ前政権時代に露骨にイスラエルへのテコ入れを図ってきたが、基本姿勢はバイデン政権に代わっても変わっていない。「人権外交」を掲げるバイデン政権だが、そのペテンが満天下にさらされた格好だ。

五輪不参加の示唆で中国揺さぶる
 米民主党のペロシ下院議長は十八日、中国の香港やウイグル問題を口実に二〇二二年の北京冬季五輪をめぐり、選手団以外の外交使節の参加を見送る「外交的ボイコット」を実施するよう呼びかけた。同氏は〇八年にも北京夏季五輪の開催に際して、チベット問題を理由に当時のブッシュ大統領に開会式欠席を要求していた。また共和党議員からも同様の声が上がっており、国内政策では激しく対立する民主、共和両党だが、中国敵視のいっそうの強化では一致している。現在のところバイデン政権や米五輪委員会はボイコットの可能性を否定しているが、対中敵視強化のカードに五輪を使おうという意図が見え隠れする。

人民のたたかい

(5月10日〜5月19日)

 イスラエルによるパレスチナへの空爆に抗議する行動が全世界で広がりを見せている。五月十四日にはパレスチナのヨルダン府側西岸でデモが行われ、五千人以上がイスラエルの蛮行に抗議した。隣国ヨルダンでも数千人が国境近くに集まり、パレスチナへの連帯を訴えた。
 また、一九四八年にイスラエルによって約七十万人が故郷を追われ難民となった「ナクバ(大災厄)の日」に当たる十五日は全世界の主要都市でパレスチナに連帯する取り組みが行われた。英国ロンドンでも数千人が「パレスチナに自由を」と声を上げた。オーストラリアのシドニーでは数千人が参加、「ガザを解放せよ」と訴えた。・ベルリンでは約三千五百人が抗議デモを行った。
 米国ニューヨークでも十八日、イスラエル領事館前で抗議行動が行われた。この行動にはユダヤ系住民も参加、「中東で起きていることは正義に反する。だから、ユダヤ系が立ち上がり反対の声を上げた」と訴えた。
 スペインのバルセロナで十三日、学生が大学予算の増額を求めるデモを行った。学生たちは過去の緊縮政策による予算削減と民営化を批判、「公教育を守れ」と叫んだ。


日本のできごと

(5月10日〜5月19日)

緊急事態宣言が「底なし」の拡大
 政府は五月十六日、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言の対象地域に北海道、岡山、広島を加えた。地域は九都道府県に拡大、「まん延防止等重点措置」の適用地域も群馬、石川、熊本が追加されて十県となった。岐阜、沖縄の追加も検討されており、変異株のまん延は「底なし」の様相だ。一方、東京、大阪でのワクチン大規模接種の予約受付が始まったが、予約サイトに重大な欠陥が見つかるなど政府の対応は無様そのもの。菅政権は国民の命を危険にさらし続けている。

日米仏が中国敵視で合同訓練
 日米仏軍は十五〜十七日、長崎・宮崎・鹿児島県で合同訓練を行った。仏軍が日本国内の訓練に加わるのは初。内容は「離島防衛」に加え、市街地戦を想定、実戦色を強めた。日米はフランスを中国包囲網に引き込む契機にしようとし、訓練の定例化も決めた。四月の日米首脳会談以降、「反中国同盟」をさらに強化する策動の一貫で、アジアの緊張を著しく高めるものだ。

改悪入管法事実上廃案へ
 自民党と立憲民主党は十八日、衆議院で審議中の出入国管理法改定案を事実上廃案とすることで合意した。同案は、三回以上の難民申請者を強制送還対象にするなど、人権をいちだんと侵害する内容。名古屋出入管局収容中のスリランカ人女性が死亡する事件も発生、反対の声が高まっていた。自公与党は政権支持率のさらなる低下を恐れて強行できなかった。死亡事件の究明と、現在の劣悪な制度の抜本見直しが必要だ。

管理強化のデジタル関連法成立
 参議院本会議で十二日、デジタル関連法案が自公与党に加え、維新、国民などの賛成で可決・成立した。司令塔的役割を果たすデジタル庁を新設、民間企業による個人情報の利活用を拡大させ、自治体による保護策を認めないなどの内容。個人情報の自己決定権をかなり認める欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)と比して劣る内容。デジタル化で立ち遅れたわが国大企業に「儲(もう)け口」を提供、国民には管理強化と個人情報漏えいのリスクを押し付けるものだ。

GDP過去最大の下落
 内閣府は十八日、二〇二〇年度の国内総生産(GDP)成長率を公表した。一〜三月期の実質成長率が前期比▲五・一%(年率換算)と三期ぶりマイナスとなったのをはじめ、昨年度は同▲四・六%と一九九五年度以降最大の下落となった。コロナ禍で個人消費と設備投資が大きく落ち込んだことが主因で、輸出も半導体不足で自動車が伸び悩んだ。四〜六月期も緊急事態宣言と政府の支援なしで、個人消費はさらに落ち込む見通し。日本経済は先進国中最悪ともいえる状況だ。

知事リコールめぐり元県議ら逮捕
 愛知県警は十九日、大村県知事のリコール運動をめぐる署名偽造事件で、運動事務局長の元県議(元維新衆院候補)ら四人を地方自治法違反容疑で逮捕した。事務局長は昨秋、全体の八割もの署名を偽造させた疑い。従軍慰安婦像の展示に反発した、河村・名古屋市長や高須院長、維新勢力ら極右勢力による運動の正体があらわになった。

パナ、「キャリア」口実のリストラ

 パナソニックは早期退職による「割増退職金」上限を四千万円に設定し、人材サービス企業などを利用する一大リストラを準備していることが十六日、分かった。同社はこれを「特別キャリアデザインプログラム」と言い、「人員削減が目的ではない」としているが、給与が比較的高い中高年層を切り捨てて、国際競争力強化のためにコスト削減を狙ったものだ。

アスベスト訴訟、国と企業の責任認定
 最高裁は十七日、元作業員や遺族が国・メーカーを訴えた「建設アスベスト訴訟」の上告審判決を下した。判決は、建設資材に含まれたアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんなどの健康被害について、国とメーカーの責任を認めた。一方、屋外作業に従事した原告の救済は否認。判決を受け、政府は原告に最大一千三百万円の和解金を支払う方針を表明したが、国と企業はすべての被害者に補償すべきである。


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