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労働新聞 2021年3月5日号 トピックス

世界のできごと

(2月20日〜2月28日)

米、野蛮なシリア空爆
 米国防総省は二月二十五日、米軍がシリア東部のシーア派装勢力施設を空爆したと発表した。バイデン政権は、イラクの米国施設に対するロケット弾攻撃への「報復」と説明した。狙いは、武装勢力を支援しているとされるイランへのけん制強化。バイデン政権は核合意を一方的に離脱して再制裁に踏み切ったトランプ前政権の政策からの転換を模索、今回も国防総省は「用心深く行動」などと、イランとの全面対決を望まない態度も見せた。だが、国内には強硬論が強く、調整は容易ではない。

バイデン政権、空前の景気対策
 米下院は二十七日、一・九兆ドル(約二百兆円)の新型コロナウイルス対策法案を可決した。バイデン大統領が就任前に打ち出したもので、共和党の合意へ得られず民主党単独での可決。深刻なコロナ禍によって強いられたもので、再度の現金給付などを含む。だが、コロナ禍での死者は五十万人を突破するなど深刻な国民生活を救えるかどうか不透明。連邦準備理事会(FRB)による緩和政策と相まってインフレを引き起こし、低所得者層の生活をさらに痛めつける可能性もある。ただでさえ厳しい国家財政赤字をさらに拡大させるもので、米国が世界経済の不安定要因となっている。

バイデン、サプライ網「見直し」へ
 バイデン米大統領は二十四日、半導体、電気自動車(EV)用バッテリー、医薬品、レアメタルの四種類のサプライチェーンの見直しを求める大統領令に署名した。入手先が中国に「過度に依存」していないか、百日以内に判断する。さらに、防衛、公衆衛生、通信技術、エネルギー、輸送、食料生産の六分野については、一年間の評価も要求している。自動車用半導体の不足解消という短期的目的だけでなく、同盟国との協力で中国との対抗をめざす政策の一環だ。

G20、危機対策延長で合意
 二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が二十六日、オンラインで行われた。会議は、コロナ対策の「いかなる拙速な撤回も避けなければならない」などと合意した。初参加したイエレン米財務長官が、欧州と対立していたIT(情報技術)大手企業へのデジタル課税で譲歩して「協調」を演出した。だが、発展途上国へのワクチン支援では具体策がまとまらなかったほか、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の配分でも一致できないなど、先進諸国と途上国間の対立が目立った。

パリ協定目標、達成に「ほど遠い」
 国連気候変動枠組み条約事務局は二十六日、「パリ協定」に基づいて各国が提出した温暖化ガスの排出削減目標(二〇三〇年)についての報告書を公表した。報告書は、提出された目標が協定の達成に「ほど遠い」とした。グテレス国連事務総長は「野心的な目標を提出する必要」を訴えた。しかも、協定を批准した約百九十カ国・地域のうち、目標を提出したのは半数以下の七十五カ国・地域のみ。バイデン政権は協定に復帰したが、目標未提出で最大の排出国としての責任を放棄。これを見て、中国やインドも提出しなかった。トランプ政権による離脱の「ツケ」は大きい。

人民のたたかい

(2月20日〜2月28日)

 米国ニューヨーク州で昨年起きた、警察官による黒人男性殺害事件に対し、同州大陪審が警官七人を不起訴としたことに抗議するデモ行進が行われた。遺族は、民事裁判による追及をめざしている。  スペインのセビリアで二十六日、コロナ禍を理由とする政府の規制で衣装業界が苦況にあるとして、女性たちがフラメンコ衣装によるデモ行進を行った。



日本のできごと

(2月20日〜2月28日)

宣言を一部前倒し解除
 政府は二月二十六日、新型コロナウイルス対策本部の会合で、緊急事態宣言対象地域の十都府県のうち首都圏を除く六府県で二十八日に前倒し解除することを決めた。六府県では飲食店の営業時間の短縮要請措置などを段階的に緩和する。これについて日本医師会が「解除という強いメッセージで日本全体に悪い影響が出てはならない。今後適切な対応をするという条件付きで今回の解除を了承した」(釜萢常任理事)と苦言を呈するなど、危ない橋を渡る決定だ。PCR検査拡充など根本的なコロナ対策は一向に改善されないなど、国民犠牲の悪政が続いている。

河野担当相、ワクチン供給で大風呂敷
 新型コロナウイルスのワクチン接種を担当する河野行革相は二十六日、六十五歳以上の高齢者全員分のワクチンを六月中に全国の自治体へ配送できる見込みだと発表した。しかし、「欧州連合(EU)の承認が得られることが大前提」とした上、現状は自治体に明言されている確保量は目標の二%ほどという状況で、翌日行われた全国知事会でも「ワクチン供給については確定した情報を提供して欲しい」(新田富山県知事)などのクレームが相次ぎ、実現を疑問視する専門家も多い。東京五輪開催の強行と政権支持率低下の歯止めのための大風呂敷だ。

尖閣めぐり緊張高める日本の行動続く
 海上保安庁と米国の沿岸警備隊は二十一日、小笠原諸島周辺で巡視船同士の合同訓練を実施した。沿岸警備隊との日本近海での合同訓練は二〇一八年五月以来。「違法操業する外国漁船の取り締まりを想定」としているが、沖縄県尖閣諸島周辺での中国船の動きをにらんだもの。また政府と自民党国防部会などの合同会議で二十五日、中国海警局の船などの乗組員が尖閣諸島に上陸しようとした場合、正当防衛や緊急避難に当たらなくても、海上保安庁らが相手を負傷させる可能性のある「危害射撃」を行える場合があり得るとの見解を示した。日中間の緊張を高める危険な策動だ。

東電、福島原発の地震計故障を放置
 東京電力が、福島第一原発三号機の原子炉建屋内に昨年設置した二基の地震計が故障していたにもかかわらず修理などの対応を取らずに放置していたことが二十二日に判明した。このため十三日に起こった最大震度六強を観測した地震の揺れのデータを記録できず、公表もしていなかった。この地震では使用済み核燃料の貯蔵プールからの水溢れも起こっており、廃炉がいっそう困難な状況になった。東電では、一月に社員が他の社員のIDカードを使って柏崎刈羽原発(新潟県)の中枢である中央制御室に入室していたことが発覚、二月には安全対策工事の不備も相次いで露呈した。東電の危機管理体制は依然としてズサンで、国の責任も厳しく問われなければならない。

経済的権利の男女格差、解消遠く
 世界銀行は二十三日、経済的な権利をめぐる男女格差を調査した年次報告書を公表した。日本は百九十の国や地域のうち、昨年の七十四位から八十位に低下した。調査は一九年九月から二〇年十月までの期間を対象に職業や子育てなど八分野における女性の権利に関わる法律や規定を評価したもので、日本は居住地の選択や旅行などの「移動」では満点だったが、報酬額の男女間格差などをみる「賃金」やセクハラなどへの対応を測る「職場」の各分野で達成度が半分にとどまり順位が低下、主要7カ国(G7)の中では最下位となり、自民党政権下で差別解消に向けた取り組みが進んでいないことが浮き彫りになった。

維新が「都構想」代替の条例案提出
 大阪府の吉村知事は二十五日、「広域行政を一元化する条例案」を府議会に提出した。大阪市の都市計画や大型開発など七分野の権限と財源を府に委託することが柱。大阪維新の会は、昨年十一月に「大阪都構想」が住民投票で再度否決されたため、条例によって市の財源と権限を奪うことをもくろんでいる。維新が単独で過半数を占める府議会と、公明党を含めて過半数を占める市議会で成立すれば四月一日に条例が施行される。背景にはカジノ誘致の算段がコロナ禍で崩れた維新の焦りがあるが、昨年の住民投票同様、コロナ対策ないがしろの一方で「都構想」に血道をあげる悪政は犯罪的だ。


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