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労働新聞 2021年2月25日号 トピックス

世界のできごと

(2月10日〜2月19日)

バイデン大統領、習主席と初協議
 バイデン米大統領と習近平・中国国家主席の初の電話協議が二月十日、行われた。大統領は香港やウイグル、台湾をやり玉に挙げて圧力を加えた。習主席は「中国の内政問題」と応じず、大統領に冷静な対応を促した。また大統領は中国の国有企業優遇策や知的財産保護をめぐる問題で不満を表明した。一方、習主席は気候変動問題などで協力できる余地があると明言、攻勢をかわした。同日、バイデン大統領は対中政策をめぐり米軍の配備態勢などを検討する対策チームを国防総省に設置することをぶち上げた。「米国が出遅れたら、中国がわれわれを打ち負かす」(バイデン大統領)と泣き言を述べざる得ないほどに、中国の台頭は押しとどめることは難しい。米国の対中政策はすでにほころびを見せている。

一時の「協調」演出したNATO会合
 北大西洋条約機構(NATO)は十七日、バイデン米政権発足後の初となる国防相理事会を開催した。ストルテンベルグ事務総長が三〇年までに「NATO二〇三〇イニシアチブ」と題した改革構想を提案した。トランプ前政権下で生じた米国との亀裂を修復し、日本やオーストラリアなど多国間で中国やロシアに対抗する狙いがある。初参加したオースティン米国防長官は「NATOとの関係を活性化させる」と強調した。だが、対中・対ロをめぐっては加盟国間でも温度差があり、地に落ちた米国への「信頼」が全面的に回復する見通しはない。「協調」は限定的なものだ。

コロナワクチン、10カ国に偏重
 ユニセフ(国連児童基金)のフォア事務局長と世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について共同声明を発表した。すでに実施された一億二千八百万回の四分の三以上が世界の国内総生産(GDP)の六〇%を占めるわずか十カ国に偏重していると指摘。二十五億人の人口を抱える約百三十カ国では、一回目の接種さえ行われていない。各国の指導者に対しては、国を超えてパンデミックを実質的に収束させてウイルス変異を抑制することができる戦略を採用するよう呼びかけた。国家間の格差が、コロナ対策でも如実にあらわれている。

イエメンで40万人が死線さまよう
 ユニセフやWHO、世界食糧計画(WFP)、国連食糧農業機関(FAO)の国連四機関は十二日、イエメンで今年、五歳未満の子ども二百三十万人近くが急性栄養不良に陥ると警告した。うち四十万人が重度で、緊急に治療を受けなければ命を落とす可能性があるとしている。同国ではサウジアラビアが支援する暫定政権とイランが支持する武装勢力の対立が激化、サウジ主導の連合軍が空爆を行うなど内戦状態である。米軍も一時、同国へ駐留し連合軍を支援してきた。バイデン大統領は軍事支援の停止を明言したものの、サウジの行動への理解を示して米国の責任については語らなかった。

人民のたたかい

(2月10日〜2月19日)

 アルゼンチンで十七日、女性に対する暴力・殺人事件の急増に対して全国一斉の抗議デモが行われた。今年に入り女性が四十四人殺害され、犯人の五人に一人は警察や軍関係者。デモはこうした事態を受けて行われたもの。
 米国のシカゴなど十五都市で十六日、ファストフード関連で働く労働者が最賃時給を十五ドル(約千六百円)に引き上げることを求める一日ストライキを決行した。最賃は〇九年以来、時給七・二十五ドル(約七百七十円)のまま。バイデン大統領は最賃引き上げを公約に掲げたが、実現は不透明。
 インドの南部ベンガルールで十日、環境問題の活動家に対する弾圧に抗議行動が行われた。昨年からの農民運動に環境活動家・グレタさんが連帯を表明、これが「扇動」「共謀」とされ活動家が逮捕されたもの。

日本のできごと

(2月10日〜2月19日)

五輪強行へ橋本新会長が就任
 東京五輪組織委員会の理事会は二月十八日、会長に橋本参議院議員を選出した。女性差別発言で内外の批判を受けて辞任した森前会長の後任。五輪担当相には丸川参議院議員が就いた。だが橋本氏にはセクハラ問題もあり、英BBCが「うわべだけ」と報じるなど批判は根強い。また、丸山・島根県知事が聖火リレーの中止を検討するとしたことに対し、竹下衆議院議員(自民党県連副会長)が何ら権限がないにもかかわらず「(知事を)注意しようと思っている」と発言した。知事は、組織委員会の秘密主義も問題にした。政府・組織委員会は、国民そっちのけで五輪を強行開催しようとしている。

首相長男による接待で官僚更迭
 武田総務相は十九日、同省幹部が放送関連会社に勤める菅首相の長男から数回に渡って接待を受けていた問題で、幹部四人のうち二人を異動させると表明した。長男は、国家公務員倫理規程で接待を受けることが禁じられている「利害関係者」。しかも幹部が当初否定した、衛星放送をめぐる話題があったことも判明した。放送事業をめぐり便宜が図られていた可能性もあり、贈収賄事件に発展すしかねない問題だ。歴代政権のメディアとの癒(ゆ)着と、安倍前政権による「モリカケ問題」に続く政治の私物化と腐敗の一端が明らかになった。

「思いやり予算」、現状維持で合意
 日米両政府は十七日、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)について、三月末までの特別協定を一年間延長することで合意した。二〇二一年度の日本側負担は、過去五年間と同水準の約二千億円。トランプ前政権は四倍増を求めており、政府・与党内には安堵の声も聞かれる。だが、「思いやり予算」は一九七八年の導入時から三〇倍以上に拡大しており、これほどの負担は日本だけ。二〇二二年度以降の負担は再協議されることになっており、バイデン政権の態度次第でさらなる負担を求められる可能性がある。

与野党、海警法めぐり中国敵視競う
 菅首相は十七日、衆議院予算委員会で、中国の海警法を「国際法との整合性の観点から問題がある」と述べた。前原元国交相(国民民主党)が首相答弁を引き出したもの。海警法は、中央軍事委員会傘下の海警に武器使用や建造物の強制排除を認めるもの。尖閣諸島(沖縄県)におけるわが国の主権を侵害する可能性をはらむが、日米も同程度の武器使用を規定しており、「国際法違反」とまではいえない。敵視をあおる与野党の態度は、両国間の信頼醸成に逆行するものだ。

愛知県知事リコール巡り組織的不正
 大村・愛知県知事のリコール(解職請求)をめぐり、署名総数の八割以上、約三十六万二千人分が不正だったことについて、県選管が十五日、容疑者不詳で告発した。リコールは、知事が元従軍慰安婦を象徴する少女像などを展示した国際芸術祭の中止を求めた河村・名古屋市長らを「憲法違反の疑い」と批判したことなどに対して、高須医師や維新の会ら右翼勢力が反発したもの。不正は、広告関連会社がアルバイトを使って行っていた。リコールを主導した河村市長は関与を否定したが、真相究明と処罰が必要だ。

コロナ禍で大学・高専中退者急増
 文科省の調査で十六日、新型コロナウイルス感染症流行の影響で二〇年四〜十二月に国公私立大学・短大、高等専門学校を中退した学生が千三百六十七人、休学者は四千四百三十四人に上ることが分かった。中退者は十一、十二月に三百三十四人も増え、中退者全体が減少するなかでコロナ禍が深刻な影響を及ぼしている。これとて「氷山の一角」で、政府は困窮学生への支援策を急がなければならない。

相次ぐ大リストラ発表
 東芝は十二日、システムLSI(大規模集積回路)事業を見直し、早期退職と配置転換で八百二十四人の人員整理を行うと発表した。昨秋に発表したリストラ計画の一環で、対象の労働者は予定を上回った。また、日本たばこ産業(JT)も九州工場(福岡県筑紫野市)の閉鎖などを発表した。希望退職・退職勧奨は三千人に達し、子会社三工場も閉鎖する。コロナ禍を悪用し、労働者をさらに苦境に追いやるリストラは許せない。


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