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労働新聞 2021年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月20日〜1月29日)

バイデン新政権発足、遠い「結束」
 バイデン米大統領による新政権が一月二十日、発足した。大統領はパリ協定への復帰、世界保健機関(WHO)の脱退撤回、メキシコとの「国境の壁」建設中止など計十五本もの大統領令に署名、トランプ前政権からの転換を印象付けた。だが、欧州など同盟国との亀裂も埋め難い。一方、中国が経済・政治両面で台頭している。トランプ支持者による連邦議会突入事件に見られるように、国内の分断はさらに深刻化している。「米国の結束」をうたったバイデン大統領だが、同時に「団結は愚かなる幻想」と吐露せざるを得ないほどで「準内戦」ともいえる状況。米国の存在自体が、世界の平和にとって危険だ。

新START、玉虫色の「延長」
 米ロ両政府は二十六日、新戦略兵器削減条約(新START)を五年延長することで大筋合意した。同条約は二月五日に期限が迫っていた。米国は枠組みに中国を加えると主張していたが棚上げした。ロシアは「完全合意」と受け止めているが、米側は延長期限までに「迅速に取り組む」と発表するなど齟齬(そご)が生じている。バイデン米大統領は「米国や同盟国に害を及ぼす」とロシアを非難するなど、対抗を弱めていない。各国は新STARTに含まれない「小型核爆弾」の開発を行っており、真の核軍縮には程遠い。

米、新政権でも対中敵視継続へ
 米バイデン政権で指名されたブリンケン国務長官は二十七日、初の会見を行った。国務長官は中国について、ウイグルや香港問題をあげつらい非難した。二十三日には中国の戦闘機が台湾の防空識別圏(ADIZ)内を飛行したことを理由に「台湾が十分な自衛能力を維持できるよう支援する」との声明を発表した。サキ米大統領補佐官も二十五日、「中国との戦略的競争は二十一世紀を決定付ける」と、対中対抗へ新戦略を策定する考えを示した。大統領就任式には台湾の代表を出席させるなど、バイデン政権は中国敵視政策を継続、欧州などの同盟国とともに「人権」を口実に対決を強める姿勢を鮮明にした。一方、中国に習近平国家主席は「『新冷戦』を行えば、世界を分裂や対抗に押し付けるだけだ」とけん制した。

世界の政府債務が戦後最大に
 国際通貨基金(IMF)は二十八日、世界の財政状況を分析した「財政モニター」を公表した。先進国の政府債務が二〇二一年の国内総生産(GDP)比で一二四・九%と、二〇年比二・二ポイント上昇して戦後最悪。コロナ禍による企業などへの支援策で世界の財政赤字がGDP比で八・五%と高水準となることが響いた。二〇年の世界全体の財政赤字はGDP比一一・八%となり、リーマン・ショック直後の〇九年(七・三%)を大きく上回る。二一年は全体で八・五%を見込む。二十七日には新型コロナウイルスの感染者数が世界全体で一億人を超えたことが判明、今後、各国が追加の支援策やワクチン供給などでいっそうの財政支出を強いられることも予想されるなど、政府債務の増加が世界経済・政治に大きな不安定要素としてのしかかっている。

人民のたたかい

(1月20日〜1月29日)

 インドのニューデリーで二十六日、農業改革の撤回を求め農民などがトラクターデモを実施し、全土で約一千万人が参加した。地方政府からも批判が上がっている。
 ブラジルのサンパウロなど五十都市で二十四日、コロナ対策を軽視するボルソナロ政権の退陣などを求めるデモが行われた。同国のコロナ死者は二十一万人を超え、議会では政治責任を問う弾劾手続きの議論が始まっている。
 米国ワシントンで二十二日、核兵器禁止条約の発効を歓迎するデモが行われた。参加者は「歴史的な日」と歓声を上げ、条約に背を向けるバイデン政権に対する圧力を加えようと訴えた。

日本のできごと

(1月20日〜1月29日)

特措法、刑事罰削除も本質変わらず
 自民党と立憲民主党は一月二十八日、新型コロナウイルス対策をめぐる協議で、インフルエンザ特措法と感染症法の両改定案に盛り込まれた、入院を拒否した感染者などへの刑事罰を撤回することで合意した。自らが遊興に明け暮れながら国民に罰則を課そうとする政府・与党への批判が高まり、譲歩を迫られた。ただ、過料は行政罰として減額されただけで残り、事業者への補償は明記されず。国民への統制を強める本質は変わらない。妥協した立民の責任も重大だ。

日米首脳、初の電話会談
 菅首相とバイデン米大統領は二十八日、初の電話会談を行った。両者は日米同盟強化や「自由で開かれたインド太平洋」、コロナ対策や気候変動問題などでの「緊密な連携」で一致した。茂木外相とブリンケン国務長官、岸防衛相とオースティン国防長官も会談した。米側は「尖閣諸島を含め日本の防衛に対する揺るぎない関与」を表明した模様。首相は、バイデン政権発足後アジアで最初の会談相手と誇った。だが、対中関係や「思いやり予算」協議など、日米の矛盾激化は必至だ。

核兵器禁止条約参加を否定
 核兵器の開発・使用・威嚇の禁止などを取り決めた核兵器禁止条約が二十二日に発効したことに対して、菅首相は国会で「条約に署名する考えはない」と、改めて参加を拒否した。与党の一部が求めるオブザーバー参加にさえ、否定的態度。首相は「現実的に核軍縮を進める道筋を追求」と述べたが、具体的行動は一切ない。最大の核保有国である米国を擁護し、被爆者の願いを踏みにじる態度は許しがたい。

辺野古に自衛隊配備計画
 「沖縄タイムス」などが二十五日、キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市辺野古)に陸上自衛隊の水陸機動団を常駐させることで、日米が二〇一五年に秘密合意していたと報じた。水陸機動団は「日本版海兵隊」で、相浦駐屯地(長崎県佐世保市)を拠点とする。加藤官房長官は「承知していない」と述べたが、在沖米軍のニコルソン四軍調整官は肯定しており、「既定路線」でもある。中国に対抗した南西諸島の軍備強化の一貫で、撤回以外にない。

国旗き損罪提出の策動
 自民党の高市前総務相ら「保守団結の会」は二十六日、日の丸を傷つける行為を処罰できる「国旗損壊罪」を盛り込んだ刑法改定案を議員立法で提出したいと下村政調会長に申し入れた。高市氏は「外国の国旗と同等の刑罰」と正当化したが、米最高裁でさえ、国旗を焼いた人を罰した州法を「違憲」としている。「思想・良心の自由」などを犯すもので、許してはならない。

年金が「GoTo」で減額に
 厚生労働省は二十二日、二一年度の公的年金支給額を発表した。満額でも月六万五千七十五円で、前年度比〇・一%(月六十六円)の減額。減額は四年ぶり。厚生年金支給額も、標準家庭で月二百二十八円減の二十二万四百九十六円。マクロ経済スライドは発動されなかったが、現役世代の賃金や消費者物価指数の低下が響いた。とくに政府が進めた「GoToキャンペーン」が影響した。キャンペーンを利用機会が少ない高齢者への年金支給額を減らし、負担をあげて押し付けるものだ。

コロナ禍のさなかに病床削減
 厚労省は二十五日までに、「地域医療構想」で病床削減を進める「重点支援区域」に、山形県置賜、岐阜県東濃の二区域を加えた。指定済みの宮城、滋賀、山口などに加え計十四区域となった。国の支援で医療機能を再編、病床数を減らすもの。コロナ禍で医療体制充実の切実性が増すなか、まったく逆の政策であり、国民の命を顧みない菅政権の本質が示されている。

休廃業企業が大幅に増加
 東京商工リサーチは二十日までに、二〇年通年の休廃業・解散企業数を発表した。休廃業企業は過去最多の四万九千六百九十八件で、前年比一四・六%増。倒産(七千七百七十三件)と合わせ、全企業の約一・六%が消滅した。とくに飲食業などで消滅した。休廃業企業の従業員数は十二万六千五百五十人(前年比二六・四%増)だが、これさえ「氷山の一角」。休廃業と失業は、政府の責任である。


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