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労働新聞 2020年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

バイデン次期政権も対中対抗を踏襲
 バイデン次期大統領は十二月二日、中国との既存の合意を「全面的に再検討」した上で「一貫した戦略を開拓できるようにする」などと述べた。トランプ政権による対中制裁関税などについて、直ちに解除する意思がないことも示した。議会の超党派諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」も一日、中国について「覇権をめざしている」などと決めつける年次報告書を公表した。新型コロナウイルス感染拡大についても「利用している」と口汚く批判、「過小評価すれば自由な国際秩序を守る対応が遅きに失する」などと、同盟国に同調を求めた。トランプ政権は中国高官に対する制裁も発表、米国の対中対抗は党派を超えたものである。

豪州、対中けん制強めるが
 オーストラリア議会は八日、地方自治体が外国政府と結んだ協定を外相が破棄できる法案を可決した。約百三十の協定が対象となり、うち四十八が中国に関わる。外資買収法の改定案も可決、港湾などインフラへの中国投資への警戒を示した。また、米国と超音速兵器を共同開発する方針を示すなど、軍事面でも中国に対抗する姿勢を強めてきた。だが、中国は輸出の三割超を占める最大の貿易相手国で、矛盾激化は必至。おりしもアフガニスタン駐留豪軍兵士による非武装の捕虜や民間人殺害が暴露され、モリソン政権は弁明に追われている。首相の対中姿勢は「逆恨み」とも言われ、世論の失笑を買っている。

EU・英のFTA交渉が難航
 欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長とジョンソン英首相は九日、ブリュッセルで会談し、EU離脱後の英国との自由貿易協定(FTA)締結交渉について協議を行った。協議は進展が見られず、英国が事実上残留している「移行期間」の期限である十二月末までにFTAが締結できない可能性が高まった。年明けの欧州、世界経済は、波乱に陥る可能性がある。

ワクチン接種の平等訴え
 米国ニューヨークの国連本部で開かれていた新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)に関する特別会合が四日、閉幕した。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はワクチンの入手について、「貧困国が富裕国によってないがしろにされることは受け入れがたい」「解決法は私有物でなく、世界の公共財だ」と訴え、米国などによるワクチンの独占の動きを強くけん制した。また、トランプ米政権を念頭に、「科学が陰謀説によって退けば、ウイルスは増殖する」と批判した。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)

 インドのニューデリーで九日、農業分野での規制緩和の撤回を求めるデモが行われた。農民の抗議行動は十一月から続いていた。八日には全国ゼネストが行われ、労働者や学生などが農民への支持を表明した。
 英国ロンドンで六日、インドにおける農業の規制緩和に抗議する農民の闘いに連帯するデモが行われた。数千人が参加、「農民に正義を」と訴えた。
 フランス各地で五日、マクロン政権の治安強化策に反対するデモが行われ、五万人以上が参加した。パリでは五千人が参加、法案の撤回を迫った。
 アルゼンチン各地で四日、人工中絶の合法化を求めるデモが行われた。フェルナンデス政権は国会に人工中絶を全面的に合法化する法案を提出。ブエノスアイレスでは数千人の女性が参加した。

日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

追加経済対策、コロナ対策置き去り
 菅政権は十二月八日、臨時閣議を開き、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策を決定した。事業規模は七三・六兆円、うち財政支出は四十兆円。感染再拡大のさなかにもかかわらず、防止対策費はわずか六兆円で、PCR検査の拡大や医療機関の減収補てんなどは盛り込まれなかった。逆に、デジタル化や小規模事業者再編などの経済構造転換に五一・七兆円、公共事業五・九兆円などで、「GoToトラベル」は来年六月末まで延長される。危機を逆手に大企業の競争力強化を助けるものだ。

自衛隊派遣、政府の失政明白
 政府は七日、コロナ感染が拡大している北海道と大阪府に対し、要請に応じて自衛隊医官・看護官を派遣する方針を固めた。北海道旭川市の医療機関でクラスター(感染集団)が相次いで病床使用率が高まり、災害派遣を要請したもの。深刻な事態で、最大の責任は「GoTo」などで感染拡大のきっかけをつくった政府にある。また、看護官派遣を岸防衛相に要請した吉村「維新」大阪府政も、保健所・病院の統廃合を進め、無益な「住民投票」に行政資源を駆り立てた責任がある。

第二〇三臨時国会が閉会
 第二〇三臨時国会が五日、閉会した。与党は前通常国会閉会後、五カ月も国会を開かなかった。本国会では普通郵便の土曜配達を休止する改定郵便法、改定種苗法、日英包括的経済連携協定(EPA)などを成立させた。衆議院憲法審査会では国民投票法改定案が実質審議入りした。野党はコロナ対策議論のための会期延長を申し入れたが、自公・維新は拒否した。安倍前首相の「桜」疑惑、吉川元農水相の贈収賄疑惑などでの支持率低下とさらなる批判を恐れ、閉会を強行したものだ。

日英EPAで大きく譲歩
 日英包括的経済連携協定(EPA)が四日、参議院本会議で自公、維新、立憲などの賛成で承認された。英国の欧州連合(EU)離脱を控え、日本EU・EPAから英国が除外されることの代替策。協定では、ソフト系チーズで日欧EPAでの輸入枠の余剰分に、英国産品に低関税を適用する。パスタなど十品目で、日欧EPAを超えて原産地規則が緩和されるなど、農産物市場開放を進める流れは不変。デジタル分野ではIT(情報技術)企業の利益を擁護、個人情報保護規定は後回しとなった。英側が「大勝利」と評価するほど、国民経済を売り渡す協定だ。

種メジャーに奉仕する種苗法改悪
 改定種苗法が二日、参議院本会議で自公、維新、国民などの賛成で可決、成立した。ブランド果実などの種・苗木の海外流出を防ぐ名目だが、実際は登録品種の自家増殖に許諾制を導入して海外などの種子メジャーに奉仕するもの。自家採取・増殖が禁止され、農家は大量の種・苗を買うか、許諾料を支払わなければならない。農業競争力強化支援法などと併せ、生産者を食い物にするもので、審議入りから三週間足らずで成立した。付帯決議では「適正価格で安定的に供給される」ことなどが盛り込まれたが、拘束力はない。

学術会議改革で自民案まとめる
 日本学術会議について、自民党のプロジェクトチーム(座長・塩谷元文科相)は九日、三年後をメドに政府から独立した法人格に改編する案をまとめた。会員選考手続きの「透明で厳格な運用」や自主財源を促すなど、菅政権による介入の流れを引き継ぐもの。軍事研究に否定的な学術会議を批判する立場から、自民党内にはより強硬な意見も出ている。会議の自主性、学問の自由を否定し、世論誘導を強化しようとする危険な策動だ。

高齢者窓口負担拡大決まる
 政府は九日、全世代型社会保障検討会議で、七十五歳以上の医療費窓口負担を二割に引き上げる方針を決めた。当初、年収百七十万円以上を対象としたい政府に対し、公明党は二百四十万円以上を提案、結局、二百万円以上(約三百七十万人)で決着した。山口・公明党代表は、「かたくなにこだわっているということでは必ずしもない」と、来夏の東京都議選を前にしたパフォーマンスであることを自己暴露した。国民負担増には、日本医師会も反対しているが、きわめて当然である。


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