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労働新聞 2020年11月25日号 トピックス

世界のできごと

(11月10日〜11月19日)

バイデン次期大統領、電話会談
 バイデン次期米大統領は十一月十日、英独仏などの首脳と電話会談を行った。温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」や世界保健機関(WHO)への復帰を準備すると明言。中国との通商関係は「対抗」と述べ、「民主国家と連携していく」と、多国間連携で対中包囲網を構築する姿勢を示した。また「全体主義に立ち向かう」などと称し、二〇二一年中に主要七カ国(G7)やインドを念頭に「民主主義国サミット」を開催することを提案した。だが、トランプ大統領は「不正選挙」などと叫んで政権移行を拒み、民主党内も結束とは程遠い。各国も米国に「信頼」など置けず、次期政権はそのスタートから困難を余儀なくされる。

中国存在感示すRCEP
 日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など十五カ国は十五日、東アジア包括的経済連携協定(RCEP)に署名した。世界貿易額の三割を占める大型の自由貿易協定(FTA)で、品目ベースで輸出入関税の九一%を段階的に撤廃する。中国が参加する初の大型FTAで、その存在感を増す。一方、米国は「自国第一主義」の下、多国間FTAに消極的姿勢に終始、バイデン次期大統領もすぐには方向転換は難しく、東アジアでの米国のいっそうの存在感の低下を印象付けた。

世界の債務残高が過去最大
 世界の主要金融機関が加盟する国際金融協会(IIF)は十八日、二〇年末の世界の債務残高が過去最大の二百七十七兆ドル(約二京九千兆円)になるとの見通しを発表した。国内総生産(GDP)比で三六五%と、一九年から四〇ポイント以上拡大。コロナ対策での財政出動が大きな要因。IIFは「世界経済が将来(債務問題を)解消できるかは不確実性がある」と警鐘を鳴らしている。

トランプの悪あがき示す中東政策
 米政府は十七日、イラクとアフガニスタンに駐留する米軍の削減を発表した。アフガンは二千五百人と現状から四割減らす。イラクも二千五百人と同二割減らす。一方、トランプ大統領は突如エスパー国防長官を解任、イランの核関連施設に対する攻撃を提案、またポンペオ国務長官はイスラエルが不法に占領するヨルダン川西岸のユダヤ人入植地への訪問を強行した。一連の動きは、バイデン次期政権の中東政策を拘束する狙いがある。いずれにしても、米国の威信は低下、バイデン次期政権もその回復は容易ではない。

台湾叫ぶ「自由」のウソ明らかに
 中国・台湾の放送事業などを監督する「国家通信放送委員会」(NCC)は十八日、テレビ局の中大電視を「親中派」と決め付け、ニュースチャンネルの放映を許可しないと発表した。台湾当局は香港情勢などについて「報道の自由が北京政府に脅かされている」などと言い募ってきたが、今回の決定はまさにダブルスタンダードで、かれらが叫ぶ「自由」「民主」が偽りであることを自己暴露した。

人民のたたかい

(11月10日〜11月19日)

 スペイン領カナリア諸島で十四日、アフリカから到着した移民の生活環境の改善を求める市民のデモが行われ、数百人が参加した。困窮から脱するためにアフリカからたどり着いた人数は一万七千人近くに達し、昨年の総数の十倍を超えている。参加者は「尊厳ある受け入れを」と訴えた。
 韓国のソウルで十四日、一九七〇年に労働者の生活改善を求め焼身自殺した全泰壹の死去から五十周年を迎え、全国労働者大会が開いた。民主労総が主催、全国十四地域で行われた。主催者は文政権による労働法制改悪の動きについて、「労働者を武装解除させる」と厳しく批判した。前日の十三日には全泰壹の銅像が建つ場所で非正規の撤廃を求めるデモが行われ、労働者は弾圧に乗り出した警察に対し、実力闘争で闘った。

日本のできごと

(11月10日〜11月19日)

コロナ感染が最高レベルに
 新型コロナウイルスの新規陽性者が十一月十九日、二千三百七十一人と二日連続で過去最多を更新した。都道府県別では、東京都の五百三十四人が最多。東京都医師会は、感染を拡大させた「GoToキャンペーン」の中断を呼びかけた。西村経済財政・再生相は「神のみぞ知る」などと無責任な態度で、自治体や国民に対策を丸投げした。小池・東京都政も警戒レベルを引き上げた程度。菅首相も「静かなマスク会食をお願いしたい」などと緊張感さえない。検査体制や医療現場への支援は、二月時点から大きく変わっておらず、政府の無策・愚策はますます際立っている。

日米電話協議、中国敵視鮮明
 菅首相とバイデン次期米大統領は十二日、電話協議を行った。両者は「日米同盟の強化、インド太平洋地域の平和と安定に向けた協力」で合意、バイデン氏は、日米安保が沖縄県・尖閣諸島に適用されると明言した。次期政権でも、対中国強硬策に基本的に変化がないことを示すもの。汪文斌・中国外務省副報道局長は「(日米安保は)冷戦の産物」などと批判した。また、日米は十七日、迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」による大陸間弾道ミサイル(ICBM)迎撃実験に成功したと発表した。日米が中国への対抗と包囲を強めることを示したものだ。

日豪首脳、中国包囲強める
 菅首相と訪日したモリソン・オーストラリア首相は十七日、会談を行った。共同声明では、「自由で開かれたインド太平洋」を明記、日豪共同訓練を推進する「円滑化協定」に大枠合意するとともに、「緊張を高める威圧的で一方的な行動に強く反対」との表現で中国を強くけん制した。外務・防衛担当閣僚協議(2+2)の早期開催と、日米豪印四カ国の枠組みの重要性でも一致した。だが、両国とも経済では中国抜きで成り立たず、敵視政策との矛盾は深まるばかりだ。

RCEP署名、中国の存在感高まる
 日中韓、東南アジア諸国連合(ASEAN)など十五カ国は十五日、東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)に署名した。日本からの工業品輸出は、関税の九二%が即時・段階的に撤廃される。特に、中国向け無関税品目は現行八%から八六%、韓国向けも一九%から九二%まで拡大するため、財界は「歓迎」(中西・経団連会長)している。RCEPは、中国が参加する初の大型自由貿易協定(FTA)。安倍前政権はインドを引き込んで中国をけん制しようと画策したが、インドは離脱、相対的に中国の存在感が高まった。中国抜きにはアジア経済の将来が展望できないことを示すものだ。

官民で農産物輸出拡大狙う
 政府は十九日までに、二〇三〇年に農林水産物・食品の輸出額を五兆円規模に拡大させる実行戦略の骨子案をまとめた。牛肉・果実などを政府が「重点品目」に設定、目標・相手国を定めて集中的に売り込む。このため、海外需要や規制に対応した「輸出産地」育成、生産者への投資支援、物流整備などを掲げた。種苗法改悪など、安倍政権以来の大企業、ごく一部の農業者への支援策で、日本農業全体の活性化につながるものではない。

地銀の経営危機深まる
 上場地方銀行の六割にあたる四十九行・グループの二〇年四〜九月期の最終損益が減益・赤字だったことが、十六日までに判明した。福島銀行と百十四銀行(香川)は最終赤字。主な原因は、貸し倒れに備えた引当金の増加だが、地域経済の疲弊が背景。政府は地銀の経営統合を独占禁止法の適用除外とする特例法を施行、日銀も当座預金の金利上乗せで合併を促進させようとしている。コスト削減のための支店統廃合などが必至で、地方の衰退と利便性低下につながるものだ。

女川原発再稼働を容認
 村井・宮城県知事は十一日、東北電力・女川原発二号機の再稼働に同意した。二二年度以降の再稼働を予定、東日本大震災被災地で初。判断は、同原発再稼働を東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県)など東日本での突破口にしようとする菅政権の求めに応じたもの。安全対策や避難計画の信頼性も欠いたまま、国民の命を顧みず、被災住民を踏みにじるものだ。


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