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労働新聞 2020年11月15日号 トピックス

世界のできごと

(10月30日〜11月9日)

バイデン候補が「勝利宣言」
 米大統領選挙で十一月七日、バイデン前副大統領(民主党)の当選が確実となった。バイデン氏は史上最高齢での就任、ハリス上院議員は女性初の副大統領となる。バイデン氏はデラウェア州での演説で、「癒やしの時」「結束をめざす大統領」などと述べた。重点課題には、新型コロナウイルス対策、経済再生、人種問題、気候変動対応の四つを掲げた。対中国など対外政策は、基本部分でトランプ政権と大差ない。バイデン氏の勝因は、トランプ政権のコロナ対策の失敗と、「ラストベルト地帯」の支持を得たこととされる。だが、トランプ大統領は敗北を認めず訴訟に訴える方針で、トランプ支持者のデモも続いている。バイデン新政権が発足しても経済は深刻で、社会の分断は修復不可能なほどで、難題が続く。

米議会選、「ねじれ」続く
 大統領選と同じ三日に実施された米連邦議会選で、下院は民主党、上院は共和党が多数を維持する「ねじれ」が続く公算が高まった。下院は民主二百十八(十四減)に対し共和二百一(四増)、未確定十六。上院は民主四十八(三増)、共和四十九(四減)、未確定三。民主党は二〇一八年に八年ぶりに下院の多数を得、今回は多数を維持したものの議席を減らした。民主党は新議会で、国民皆保険制度などを避け、コロナ対策やインフラ整備での財政出動を優先する考え。これは共和党との対立を避けるだけでなく、党内「左派」をけん制する狙い。共和党でも、陰謀論「Qアノン」信奉者が当選するなど、両党とも党内の分岐が拡大、バイデン政権の議会対策は容易ではない。

トルコ、「反西欧」色強める
 エルドアン・トルコ大統領は一日、「欧州のイスラム教徒は構造的な差別にさらされている」などと、預言者ムハンマドの風刺画問題を契機に欧州で高まる「反イスラム」風潮を厳しく批判した。東地中海でのガス田探査船活動も延長することも決め、権益を争う欧州連合(EU)は、トルコへの制裁措置を検討し始めた。エルドアン政権は、ナゴルノカラバフ紛争ではアゼルバイジャンを支援、リビア内戦にも介入するなど、米国を苛立たせてもいる。トルコの対外政策は、国内経済危機への不満をそらし、イスラム圏での影響力拡大を狙うものだ。

コロナ感染者5千万人突破
 米ジョンズ・ホプキンス大の集計で、新型コロナウイルスの世界の累計感染者数が八日、五千万人を超えた。感染者数は、十月中旬からの二十日間で一千万人も増えた。ブラジル、インドなど新興諸国に加え、十月から米欧での感染者が急増、一日あたりでも五十万人を超える最悪のペースとなっている。各国支配層は夏場までは、感染症の緩やかな収束と「経済再開」を想定していたが、もろくも崩れた格好。先進国の多い北半球が冬季に向かうなか、収束はとても見通せない。

人民のたたかい

(10月30日〜11月9日)

 米国各地で三日、トランプ大統領に抗議するデモが行われた。ワシントンのホワイトハウス前では約千人以上が、政府の政策や人種差別に抗議した。
 バングラデシュのダッカで二日、預言者ムハンマドの風刺画をめぐり、マクロン・フランス大統領に抗議するデモが行われ、十万人以上が参加した。
 アルゼンチン各地で四日、人工妊娠中絶の全面合法化を求め、女性によるデモが行われた。
 ポーランドのワルシャワで十月三十日、右派政権による人工妊娠中絶の事実上の禁止政策に抗議する集会が行われた。連帯する行動は英国、オランダなどにも広がっている。

日本のできごと

(10月30日〜11月9日)

学術会議問題で卑劣な姿勢あらわに
 菅首相は、日本学術会議の推薦会員六人の任命拒否をめぐる国会答弁で醜態をさらしている。十一月五日には、以前は学術会議が正式の推薦名簿を提出する前に政府と「一定の調整」が行われたと発言、「今回は調整が働かず、結果として学術会議から推薦された者の中に任命に至らなかった者が生じた」と答弁した。「以前」とは二〇一七年の安倍前政権下の会員改選時のこととしたが、当時会長だった大西隆・東大名誉教授はこれを否定している。菅首相が答弁に窮して官僚のメモを読み上げる様子が繰り返され、「答弁は自助で」などの野次も飛んだ。学術会議側に責任を転嫁し事態収拾を図る思惑だが、卑劣な姿勢が浮き彫りになるばかりだ。

与党の学術会議どう喝エスカレート
 自民党が日本学術会議のあり方を検討するプロジェクトチームを設置、年間約十億円の国費を支出する妥当性や組織形態の検証を進めていることについて、下村政調会長は六日、「学術会議は過去三回、最近では二〇一七年に軍事研究には協力しないと明言している。少しでも軍事に利用されるかもしれないと全部止めてしまえば、日本の防衛は誰が守るのか」などと批判した。しかし実際の一七年の声明は、軍事目的と見なされる可能性がある研究について、その適切性を技術・倫理面から審査する機関の設置を大学などの各研究機関に求める、きわめて穏健な内容。学術・教育機関への統制を強めるべく、デマを含めたどう喝をエスカレートさせている。

日米豪印で中国包囲の共同軍事演習
 日米豪印の四カ国は六日、インド洋のベンガル湾で実施していた共同訓練「マラバール」を終えた。日米豪印では十三年ぶりの開催。インド海軍の主導で海上自衛隊の護衛艦、米海軍の駆逐艦、オーストラリア海軍のフリゲート艦が加わった。対潜水艦戦や水上射撃、洋上補給での共同対処を確認、十一月中旬にはアラビア海で二回目を行う。四カ国の共同訓練について岸防衛相は「自由で開かれたインド太平洋の具現化を内外に示す効果もあった」と述べ、暗に中国をけん制した。

内部留保が12年連続で最大に
 財務省は十月三十日、一九年度の法人企業統計を発表した。大企業(資本金十億円以上、金融・保険業を含む)の内部留保(利益剰余金)は四百五十九兆円で、前年度から十兆円増加、比較可能な〇八年度以降十二年連続で最高額を更新した。経常利益は昨年十月の消費税率引き上げや新型コロナウイルスの感染拡大などの影響を受けて前年度を八兆円下回る五十兆円となった。第二次安倍政権が発足した一二年度から経常利益と内部留保は約一・四倍、配当金が約一・六倍に増える一方、労働者の賃金は一・〇五倍、機械や工場など有形固定資産も一・一倍とほぼ横ばい。異次元緩和や巨額財政出動が、配当金と内部留保ばかり増やしたことを改めて示した。

「コロナ解雇7万人」も氷山の一角
 厚生労働省は十一月六日、新型コロナウイルス感染拡大に関連した解雇人数が今年二月からの累計で七万人を超えたと発表した。ただ、全国の労働局やハローワークを通じた集計のみで、三十人未満のリストラには届け出義務がなく、また自主都合退職やグループ会社への出向のような事例は対象外。「七万人」は氷山の一角だ。同省は「解雇ペースは緩やかになっている」などとしているが、コロナ「第三波」の到来で、それを前提とした雇用調整やさらなる倒産・廃業も予想され、的確な実態把握を含む対策が急務だ。

「都構想」再び否決も条例で強行狙う
 大阪市廃止の是非を問う住民投票が一日に投開票された。反対六十九万二千九百九十六票、賛成六十七万五千八百二十九票で、反対多数となった。市廃止の否決は前回一五年五月に続き二度目。前回反対した公明党が賛成に転じたが、今回も大阪市民は市存続を選んだ。だが同市の松井市長(大阪維新の会代表)は五日、広域行政一元化条例案を来年の二月議会に提出すると表明、都構想の制度案で市から府に移管するとした成長戦略など事務約四百三十、財源約二千億円を中心に検討する意思を示した。否決されたら構想を、維新と公明で過半数を握る市議会で可決できる条例によって強行する策動で、民意を踏みにじる蛮行だ。


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