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労働新聞 2020年9月15日号 トピックス

世界のできごと

(8月30日〜9月9日)

米国防総省、中国の年次報告書発表
 米国防総省は九月一日、中国の軍事力に関する年次報告書(二〇二〇年版)を発表した。報告書は、中国の核弾頭数を「今後十年で少なくとも二倍になる」と予測、アフリカなどでの海外拠点の拡大にも警戒感を示すなど、敵視をいちだんとあらわにさせた。米国が中国の予想核弾頭数(約二百発)を明らかにするのは初めてで、米ロ間の核軍縮交渉に中国を巻き込む狙いからのもの。報告書は、いくつかの分野で中国が米国と同等もしくは上回っているとの見解を示し、特に海軍について「世界最大の海軍力を保有」と、警戒感をあらわにさせている。中国の「脅威」をあおり、自国の軍備増強を正当化する狙いがある。

EU英交渉、ジョンソン首相が修正案
 ジョンソン英首相は九日、欧州連合(EU)からの離脱協定に修正を加える法案を議会に提出した。懸案の英領北アイルランドとアイルランドの国境問題について、英国側に優位な権限を定めるもの。だが、EUは離脱協定の修正は「国際法違反」と反発、撤回を求めた。首相は、「十月中旬の首脳会議まで」としている自由貿易協定(FTA)交渉でEUに揺さぶりをかける狙いがあると思われるが、EUが強硬姿勢を強める可能性もあり、まさに「捨て身」の施策。だが、法務当局トップのジョーンズ氏が首相提案に反発して辞任するなど、英国内でも矛盾が拡大している。

ロ・白ロ会談、干渉反対で一致
 ラブロフ・ロシア外相とマケイ・ベラルーシ外相は二日、モスクワで会談した。両者は、ベラルーシ政局の混乱に関し、米欧の内政干渉に「反対」することで一致した。翌日にはミシュスティン・ロシア首相がベラルーシを訪問、ルカシェンコ大統領のモスクワ訪問も発表されるなど、両国による国家連合の「強化」をアピールした。ロシアは、ベラルーシ向けの十億ドル(約一千五十億円)の融資の借りかえを示唆した。支持率が低下傾向のプーチン政権にとっては、支持獲得の狙いもある。強まる米欧の圧力に抗し、両国は結束を強めようとしている。

チェコ議長訪台も国内に溝
 台湾訪問中のビストルチル・チェコ上院議長は三日、蔡英文「総統」と会談した。チェコと台湾は国交がないが、ビストルチル議長は「我々がEUの先導役になる」とぶち上げた。アザー米厚生長官の訪台に続くもので、台湾の「国際的地位」向上を後押しするもの。王毅・中国外相は「公然とした挑発」と反発している。ポンペオ米国務長官が八月中旬、チェコ議会で演説するなど、米国は中国・東欧関係にくさびを打ち込む策動を強めていた。議長の行動はこれに追随したもの。だが、ゼマン・チェコ大統領は広域経済圏「一帯一路」に賛同、ビストルチル議長の訪台にも反対した。米中対立のなか、チェコのみならず欧州各国政権の態度が注目されている。

人民のたたかい

(8月30日〜9月9日)

 米国オレゴン州ポートランドにおける反人種差別デモが五日、連続百日目となった。五十人以上が不当にも拘束されたが、一部の参加者は火炎瓶を投げてで激しく抵抗した。ニューヨーク・マンハッタンでも三日、同様のデモが行われた。
 韓国政府は四日、全国教職員労働組合に対する「労働組合と見なさない通知」を取り消した。全教組は、七年間に及ぶ不当処分を振り返り、政府に「心からの謝罪」と「解雇者元職復帰」などを要求した。
 韓国のソウルで三日、公共運輸労組イースター航空操縦士労組と民主労総などが、イースター航空における整理解雇の中止を求めて国会前に座り込んだ。
 スイスのトリエントで六日、温暖化ガスの増加が氷河に悪影響を与えることに警鐘を鳴らし、二百人がデモを行った。
 パキスタンのラワルピンディで四日、仏紙が預言者ムハンマドの風刺画を再掲載したことに抗議するデモ行進が行われた。
 ドイツのフランクフルトで一日、反戦・核廃絶を求めるデモ行進が行われ、野党や労組が参加した。参加者は、世界の地域紛争の解決を訴えた。

日本のできごと

(8月30日〜9月9日)

歴史的な景気後退、データで次々と
 内閣府は九月八日、四〜六月期の国内総生産(GDP)改定値を発表した。物価変動を除いた実質で前期比七・九%、年率換算では二八・一%減と、一次速報値から下方修正された。また七日には七月の景気動向指数(二〇一五年=一〇〇)速報値も発表、基調判断は十二カ月連続で景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」で、リーマン・ショック前の〇八年六月から十一カ月続いた過去最長の「悪化」期間を更新した。コロナ禍での歴史的な景気後退と安倍政権の無策・失政が官製統計からもあらためて示された格好だ。安倍政権は退陣に追い込まれたが、バトンを渡された次政権の置かれた厳しい環境を示すものでもある。

非正規労働者過去最大減、特に女性に
 総務省は七月の労働力調査を発表した。就業者数は非正規労働者が前年同月比百三十一万人減の二千四十三万人と、過去最大の下げ幅だった。非正規労働者の就業者数は三月から五カ月連続の前年割れ。正規労働者は大きな変化はなく、非正規が雇用の「調整弁」としてしわ寄せを受けたことが鮮明となった。男女別では、季節的な変動要因を除いた前月比で就業者は男性の二十九万人増に対し女性は十八万人減、昨年末からは男性二十六万人減に対し、女性は八十七万人減で、リーマン・ショック時よりいっそう女性に大きな打撃が及んでいることをあらためてデータで浮き彫りになった。次政権の責任と課題はきわめて重い。

待機児童で政権目標達成を断念
 厚生労働省は四日、希望しても認可保育所などに入れない待機児童が今年四月一日時点で昨年より四千三百三十三人少ない一万二千四百三十九人だったと発表した。調査を始めた一九九四年以降で最少だが、政府が掲げた待機児童を二〇二〇年度末までにゼロにする目標の達成について、加藤厚労相は「なかなか厳しい状況にある」と述べて達成を事実上断念し先送りする方針を明らかにした。安倍政権は「女性の活躍」を掲げて、保育所経営への企業参入を進めて保育の質を下げた挙句、目標そのものも未達成に終わった。安倍政権下での失政・悪政を象徴する結果となった。

教育公的支出、先進国で最低レベルに
 経済協力開発機構(OECD)は八日、一七年の加盟各国などの国内総生産(GDP)に占める小学校から大学に相当する教育の公的支出の割合を公表した。日本は二・九%で、OECD平均の四・一%を大きく下回り、比較可能な三十八カ国のうち下から二番目。またOECDは日本の国公立大学の授業料(学士課程)について「データが入手可能な国々の中で最も高い」と分析、貸与型奨学金などによって日本の学生の卒業時の平均負債額は二万七千四百八十九ドル(約二百九十万円)に上るとした。安倍政権下での教育の貧困化が、国際機関から示された格好だ。

日産融資1千3百億円に政府保証
 日本政策投資銀行が五月に決めた日産自動車への危機対応融資千八百億円のうち、千三百億円に政府保証を付けていたことが七日に判明した。コロナ禍で業況と資金繰りが悪化した企業が対象の融資で、新型コロナで損害担保が付いたのは日産が初めてだが、返済が滞った場合は保証分の八割を国が実質補填(ほてん)する。危機対応融資の政府保証額として過去最大で、これまで最大だった〇九年の経営再建中の日本航空に対する約六百七十億円の政府保証付き融資では、同社は翌年に経営破綻し、約四百七十億円の国民負担が生じた。コロナ禍で多くの国民が疲弊、中小零細企業が倒産・廃業に追い込まれるなか、不透明な日産優遇に疑惑が深まっている。

コンビニ公取調査、大手に改善要求
 公正取引委員会は二日、コンビニエンスストアの調査報告書を公表した。加盟店に対する二十四時間営業の強制や過剰な仕入れの強要などについて独占禁止法が禁止する「優越的地位の乱用」にあたる恐れがあるとし、独禁法に触れかねない点を自主点検し、今年十一月末までに報告するよう求めた。公取委による実態調査は八年ぶりで、多数のコンビニのオーナーが本部からの不当な扱いを訴えていたことを受けたもの。遅きに失した調査だが、大手八社は不当を改めるべきだ。


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