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労働新聞 2020年6月25日号 トピックス

世界のできごと

(6月10日〜6月19日)

米実務者会談で対中攻撃
 ポンペオ米国務長官と楊潔チ・中国共産党政治局委員(中央外事活動委員会弁公室主任)が六月十七日、ハワイで会談した。長官は新型コロナウイルス問題について中国の対応を責め、「香港国家安全法」や台湾問題などでも中国を非難した。楊委員は反論、同法の制定に変わりないことや、台湾は「密接不可分な領土」と主張した。同日、トランプ大統領は「ウイグル人権法案」に署名、「人権」を材料にしながら中国への圧力をエスカレートさせている。しかし、足元ではコロナ対策の失敗と、黒人殺害を発端とする抗議行動の広がりで揺さぶられている。中国への「責任転嫁」とも言える振る舞いに、世界から失笑が注がれている。

朝鮮、制裁緩めぬ米韓に警鐘
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は十六日、南北軍事境界線沿いの朝鮮・開城にある南北共同連絡事務所を爆破した。脱北者団体による「批判ビラ」散布が直接の契機だが、朝鮮はそれ以前から、二〇一八年の「板門店宣言」と「平壌共同宣言」の履行を求めていた。だが、韓国は米国が主導した国連制裁を踏み越える姿勢を示せなかった。爆破は、核放棄を求めながら制裁の手を緩めないトランプ政権に対する批判でもある。

米の身勝手な姿勢またも
 トランプ米大統領は十一日、アフガニスタンでの戦争犯罪捜査などを行う国際刑事裁判所(ICC)当局者に経済制裁を可能にする大統領令に署名した。ICCによる捜査や訴追に関与した個人が制裁の対象。ICCは三月、アフガンにおける戦争犯罪を捜査すると発表、対象に旧政権勢力タリバンだけでなく、米軍と中央情報局(CIA)を含んでいた。トランプ政権の態度には、人権団体から批判が上がり、欧州連合(EU)も「深い憂慮」を示した。香港問題などで「人権」を叫ぶ米国だが、ご都合主義も甚だしい。

「コロナ危機」で難民が過去最高の数
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が十八日に発表した年次報告によると、一九年末で世界の難民は過去最高の七千九百五十万人に達した。前年比八百七十万人増で、総人口の一%。うち四割が十八歳未満。三分の二以上がシリアや南スーダン、アフガニスタンなど五カ国出身者。報告は気候変動や飢餓、紛争などで解決の見通しがないことを指摘、新型コロナによる危機の深刻化が直撃しているとした。国際労働機関(ILO)も十二日、新型コロナで、世界の児童労働者数が二十年ぶりに増加、数百万人の子どもが労働を強いられる恐れがあるとした。

人民のたたかい

(6月10日〜6月19日)

 フランス全土で十六日、医師や看護師などの医療労働者がデモ行進を行い、医療予算の引き上げや待遇改善を求めた。パリでのデモには一万八千人が参加した。
 スイス各地で十四日、男女平等の賃金の実現や女性への暴力・差別の一掃を求めるデモが行われた。ジュネーブのデモには数千人の女性が参加した。
 フランスのパリで十三日、人種差別と警察の暴力に反対するデモが行われ、数万人が参加した。米国での抗議行動に呼応するもので、同国でも四年前に警察が黒人男性を殺害、「病死」と発表した事件があり、この真相究明も求めた。
 英国のオックスフォード大学は十七日、セシル・ローズの像の撤去を決めた。撤去を求める学生の要求に押されたもの。ローズはアフリカの鉱山開発で富を得、現ジンバブエを自らの名前から「ローデシア」と命名した。
 米国で「奴隷解放の日」に当たる十九日、全国でデモ行進などが行われた(写真)。白人警官による黒人男性の殺害事件への抗議行動が続くなかでの行動。国際港湾倉庫労組(ILWU)も八時間のストライキを実施、連帯を表明した。

日本のできごと

(6月10日〜6月19日)

通常国会閉会、政権の末期色強まる
 第二〇一回通常国会が六月十七日、閉幕した。野党は新型コロナウイルス対応を理由に会期延長を申し入れたが与党は拒否し、閉会中審査を開くことで合意した。今国会では、二〇二〇年度本予算と二度の補正予算、新型インフル特措法改悪、スーパーシティ法、改定外為法などが成立した。一方、国民の厳しい批判で、検察官の定年延長を含む国家公務員法改定案が廃案となったほか、種苗法改定案や国民投票法改定案の成立も見送られた。コロナ対策の無策に加え、数々の疑惑噴出で、政権末期色が強まっている。

河井夫妻逮捕、首相の責任重大
 東京地検特捜部は十八日、一九年の参議院選で地元議員らを買収したとして、河井前法相と妻の参議院議員を公職選挙法違反容疑で逮捕した。夫妻は自民党を離党したが、辞職は否定している。妻の選挙資金には、通常の一〇倍の一億五千万円が投入されたことも判明している。安倍首相は「責任」に言及したが、前法相を重用していたのは首相と菅官房長官だ。「桜を見る会」などに続き、自民党中枢を巻き込む疑獄事件で、政権求心力が大きく低下していることのあらわれだ。

第2次補正予算成立
 二〇二〇年度第二次補正予算が十二日、参議院本会議で可決、成立した。自民、公明のほか、維新、立憲、国民などが賛成した。補正予算の一般会計からの歳出は三十一兆九千百十四億円で、「緊急包括支援交付金」など医療機関への支援が二兆二千億円余にとどまる一方、企業を支援する劣後ローンや出資枠に約十二兆円など、企業支援が大部分。予備費が十兆円と、財政民主主義にも反する。四月末に成立した第一次補正予算による定額給付金さえ、いまだ国民に行き渡っていない。国民支援策としてはまったく不十分なものだ。

陸上イージス断念、見返りの危ぐも
 河野防衛相は十五日、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入計画を停止すると表明した。その後、国家安全保障会議(NSC)で撤回を決めた。秋田、山口両県に配備する計画だったが、地元が強く反発していた。費用負担も大きく膨らみ、調査のずさんさも発覚した。中国と朝鮮民主主義人民共和国を念頭にした、日米のミサイル防衛構想は見直しを迫られた。だが、同計画を対日要求の軸にしていた米国は、見返りとして、「思いやり予算」増額要求を強めるという観測もある。また、自民党内には「敵基地攻撃論」も浮上、撤回を悪用する動きも強まっている。

日銀、緩和政策を維持
 日銀は十六日、金融政策決定会合を開き、緩和政策の維持を決めた。日銀は三月以降、企業の資金繰り支援、上場投資信託(ETF)買い入れ拡大などを行った。黒田総裁は今回は追加策をとらず、「効果を見極める」とした。だが、百十兆円の資金繰り支援はほぼ大企業向けである上、追加策をとらないのは、可能な対策が限られていることでもある。黒田総裁は、「二二年度でも金利を引き上げる状況には遠い」と、手詰まり感を自白している。

大阪法定協、「都構想案」可決
 大阪府・市の法定協議会(法定協)は十九日、大阪市を廃止して四特別区を設置する「大阪都構想」制度案を可決した。維新と公明が賛成したほか、自民の二府議も賛成に回った。自民の二市議は反対した。維新府・市政は、府・市両議会の議決を経て、十一月にも二度目の住民投票を行う計画。都構想は、「究極の行政改革」とされる道州制に道を開くもので、住民生活を向上させるものではない。

超過死亡、コロナ禍の影響か
 新型コロナの「特定警戒」地域十三都道府県中、十一都府県の四月の死亡数が、平年を大きく上回る「超過死亡」であったことが、十一日までに分かった。東京の死亡数は一万百七人で、平年より一一・七%も多く、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡でも一割以上増えた。コロナ感染が分からず死亡したり、感染で血栓症などを起こしたケースが多数あることは確実で、コロナによる死者が政府統計を大きく上回っていることの証左。適切な治療が行われず、救える命を多数失わせた政府は犯罪的だ。


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