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労働新聞 2020年6月5日号 トピックス

世界のできごと

(5月20日〜5月29日)

黒人殺害に全米で怒り広がる
 米国のミネソタ州ミネアポリスで五月二十五日、無抵抗のアフリカ系住民が警官に殺害された。抗議行動が全米に広がり、トランプ政権を直撃している。人種差別に対する怒りに加え、新型コロナウイルスの感染拡大と大量失業への不満が爆発、鎮圧に乗り出した警察、州兵に対して、実力闘争を挑んでいる。抗議行動には黒人だけでなく、白人、ヒスパニックの人びとも参加している。

米、香港問題利用し、対中攻勢
 トランプ米大統領は二十九日、中国の「香港国家安全法」導入に対する対抗策を発表した。香港への関税やビザ(査証)の優遇を止め、中国本土並みの規制を課すことや、当局者への制裁を示唆(しさ)した。世界保健機関(WHO)にも、事実上の脱退を宣言した。香港への制裁は中国企業だけでなく、米企業にも悪影響を及ぼす。このほか、ウイグル族の「人権」を口実に中国の団体などに制裁を課す決定も下した。一方的攻撃に、中国は警告を発した。欧州連合(EU)も「制裁は問題解決の方法ではない」(ボレル外交安保上級代表)とし、中国との投資協定交渉を続ける考えを示した。対中攻勢を強めるトランプ政権だが、黒人殺害事件をきっかけに国民の怒りが爆発、足元が大きく揺らいでいる。

EU、危機打開へ復興計画案
 EUの欧州委員会は二十七日、新コロナ禍からの復興計画案を公表した。新たに補助金と融資からなる七千五百億ユーロ(約八十九兆円)の基金を創設する、すでに合意された支援策と合わせて、総額一・八五兆ユーロ(約二百二十兆円)もの規模。補助金はEUが債券を発行して資金を調達、イタリアなどに回す。こうした大規模な共通債券の発行は初めて。オランダなどは反対しているが、慎重だったドイツが方針を転換した。EUはコロナ危機の克服に向けても、独自性を打ち出した。

全人代、「通年プラス成長」打ち出す
 中国で二十二日、全国人民代表者会議が開会した。全人代は通常三月に開かれるが、コロナ禍で延期していた。李克強首相が報告を行い、二〇二〇年の実質成長率の数値目標は設定しなかった。GDP比の財政赤字率を二〇年は三・六%以上に高めた(一九年は二・八%)。地方政府のインフラ債券を三兆七千五百億元、特別国債の一兆元発行などで経済を支える方針。併せて、雇用対策に力を入れ、「通年でのプラス成長を実現」と強調した。対米関係では「経済のデカップリング(切り離し)は誰の利益にもならない」と述べた。また、「香港国家安全法」を制定した。米国の攻勢が激化するなか、習近平政権が国内を安定させられるか、カジ取りはますます難しい。

米、またも国際条約から脱退表明
 米トランプ政権は二十一日、領空開放(オープンスカイズ)条約から脱退すると発表した。大統領は、ロシアが同条約に違反していると決め付けて居直った。同条約は〇二年に発効、米ロ、欧州など三十四カ国が加盟。「軍事活動の透明性」をうたい、互いに非武装偵察機の領空内飛行を認めるもの。ロシアは米側が証拠を示していないと反論した。独仏、イタリアなど十カ国も「遺憾」を示す共同声明を出した。米国は、中距離核戦力(INF)全廃条約など国際条約から相次いで離脱、危機を諸外国に転嫁する「米国第一主義」がエスカレートしている。

人民のたたかい

(5月20日〜5月29日)

 スペインのバルセロナで二十六日、同地にある日産自動車工場の閉鎖に抗議する行動が行われた。参加した労働者は作業服を丸めて地面に置き、工場労働者とほぼ同数の「二万五千人の家族」という文字を作成した。また政府も雇用を守るよう要求している。
 イスラエルのエルサレムで二十四日、汚職容疑で起訴されたネタニヤフ首相の初公判に合わせて、退陣を求めるデモが行われた。
 フランスのパリ北部で二十一日、医師や看護師など約四百人が賃上げと労働条件の改善を求めてデモを行った。鍋や皿を叩き、病院への資金増額、新型コロナへの十分な対策を求めた。

日本のできごと

(5月20日〜5月29日)

政府、緊急事態宣言を全面解除
 安倍首相は五月二十五日、首都圏一都三県と北海道を対象とした新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を解除すると表明した。二十一日には、大阪、京都、兵庫でも解除されていた。首相は、新規感染者が一日五十人を下回ったことなどを理由に、「日本モデルの力」などと誇った。だが、政府が国民に多大な犠牲を強いた責任は重い。約一カ月半ぶりの宣言解除は、経済への打撃と政権支持率急落に追い込まれてのもの。新規感染者は増加傾向で、企業倒産や失業はさらに増える傾向にある。「日本モデル」などというのはゴマかしだ。

コロナ関連会議、またも議事録残さず
 菅官房長官は二十九日、新型コロナ対策をめぐる専門家会議について「議事録は残さなくても問題はない」と述べた。「政策の決定または了解を行わない会議」に該当するという「根拠」だが、こじつけにすぎず、政府自身がコロナ問題を公文書管理のガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定したことにさえ反する。自民党は旧民主党政権時代、議事録保存を要求してきた経過もある。安倍政権下、森友・加計学園問題や「桜を見る会」など、公文書改ざん・廃棄が次々と発覚したが、政策検証手段さえ奪うものだ。

第2次補正予算を閣議決定
 政府は二十七日、二〇二〇年度第二次補正予算を閣議決定した。追加歳出は三十一兆九千百十四億円で、事業規模は百十七兆一千億円。政府系・民間金融機関を通じた実質無利子・無担保融資六十兆円超など、企業への資金支援が大部分。その他、テナントへの「家賃支援給付金」、雇用調整助成金の上限引き上げなど。だが、医療支援がわずか二兆九千八百九十二億円であるなど、国民生活を守るにはきわめて不十分だ。

大企業のためのスーパーシティ法成立
 人工知能(AI)、自動運転、遠隔診療など先端技術を集約した「スーパーシティ」を実現する国家戦略特区法改定案が二十七日、参議院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数で可決・成立した。夏にも自治体の公募を開始、政府が事業計画書を承認すると規制緩和の特例が認められる。「情報漏えい防止」などの付帯決議が付いたものの、大企業などの実施主体が個人情報を一元的に管理、住民監視体制は著しく強化される。財界の望む規制緩和のための「実験場」でもある。

国民投票法断念など、政権窮地
 高齢者の雇用拡大を理由に、公的年金の受給開始を七十五歳まで繰り下げられるようにする年金改革法が二十九日、成立した。パートへの厚生年金適用も広げられるが、十分な賃上げがなければ、労働者はさらに困窮しかねない。一方、与党は二十日、農家による自家採種を禁じるなどの種苗法改悪案の成立を見送った。憲法改悪のための国民投票法改定案も、同じく見送られた。法案を絞って今国会に臨んだ安倍政権だが、支持率低下を前に成立させ切れず、政権末期の様相だ。

危険なSNS規制論議
 自民、立民の国対委員長は二十五日、インターネットでの誹謗(ひぼう)中傷を防ぐ法整備で一致した。SNS(交流サイト)での中傷が、女子プロレスラーの死亡に関係しているとの報道が契機。だが、定義はあいまいで、一部識者は政府批判を含めるべきかの言動を繰り返している。自民党の「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策PT」(座長・三原じゅん子参議院議員)も議論を始めた。コロナ対策の遅さや、在日外国人へのヘイトを放置する態度と対照的に、政府・与党の対応の早さは異常。言論弾圧を強める動きに警戒が必要だ。

春闘1次集計、賃上げ鈍化
 経団連は二十一日、二〇春闘の第一次集計結果を公表した。大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は二・一七%の七千二百九十七円(前年比一千十三円減)。コロナ感染拡大以前の分が大部分だが、伸び率は二年連続で鈍化、企業の消極姿勢は鮮明。だが、連合中央の「中間まとめ」は「賃上げの流れは維持されている」と楽観的。三百人未満の中小組合の額・率が全体を上回るなど前進点はあるが、四割近い組合が交渉中で、ストを構えた闘いが求められる。


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