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労働新聞 2020年5月25日号 トピックス

世界のできごと

(5月10日〜5月19日)

トランプ政権、対中圧迫さらに強化
 トランプ米大統領は五月十四日、新型コロナウイルス対策を理由に「中国との関係をしゃ断することもできる」と、断交を匂わせて中国をけん制した。さらに、米上院は同日、「ウイグル人権法案」を全会一致で可決、「人権」を口実に中国当局者に制裁を科せるようにした。さらにトランプ政権は、約四十億ドル(約四千三百億円)の中国株を保有する連邦職員年金基金に中国株の排除を命じ、米ナスダック市場も中国企業の上場を事実上制限するルール改定に乗り出した。米国は、華為技術(ファーウェイ)に対する半導体の禁輸措置も強化した。コロナ禍のなか、米国は対中攻勢をエスカレートさせている。

WHO、米国の孤立深まる
 世界保健機関(WHO)の年次総会が十八日に行われ、台湾が求めたオブザーバー参加を見送った。次回総会で話し合うことになり、米国が求め、中国が反対した台湾の参加はとん挫した。米国はテドロスWHO事務局長を「中国寄り」と非難、拠出金の停止を無期限にすることや「脱退」まで示唆(しさ)した。総会では、新型コロナウイルスへの初動対応の検証やワクチン開発での協力を求める決議案を全会一致で採択した。だが米国は、ワクチンを各国に公平に普及させるため、最初に開発した企業の特許権を制限するという文言の受入れを拒否した。米国の孤立が、各所で深まっている。

WTO事務局長が辞任
 世界貿易機関(WTO)のアゼベド事務局長は十四日、任期を一年前倒しし、八月末で辞任することを表明した。事務局長は「個人的な決断」と述べたが、紛争処理を行うWTO上級委員会が、米国が委員の選任を拒否したことで機能停止に陥っていることが背景にある。トランプ政権は、「WTOは中国を途上国扱いしている」と不満を募らせていた。WTOは、米国がグローバル化のために設立を主導した国際機関だが、「米国第一」によって機能不全に陥っている。コロナ禍で強まる、各国の保護主義傾向がさらに強まる可能性が高い。

イスエラルで大連立政権
 イスラエルで十七日、ネタニヤフ・リクード党首を首班とする新政権が発足した。新型コロナ対策を口実に、第二党の「青と白」、第三党の労働党も加わる大連立政権。二〇一九年から三度の総選挙を経ての新政権だが、ネタニヤフ首相が汚職疑惑で起訴されるなか、国民の不満を解消することは不可能。一年半後に「青と白」のガンツ元参謀総長に首相を譲るという約束も、履行されるか不透明。しかも、新政権は、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸の入植地をイスラエルに併合することを認めている。シュタイエ・パレスチナ自治政府首相が「パレスチナ人の権利を奪うもの」と批判しているように、アラブ人民の批判は不可避だ。

アフガン新政権で合意
 ガニ・アフガニスタン大統領とアブドラ前行政長官は十七日、新政権の樹立で合意した。両氏は一九年九月の大統領選で争い、今年三月にはそれぞれ大統領就任を宣言する異常事態が続いていた。今回、米国が演出し、アブドラ氏が反政権勢力タリバンとの和平交渉を推進する「国家和解高等評議会」議長に就任することで合意した。だが、背後には深刻な部族対立があり、米国とタリバンの捕虜交換も遅れるなか、政権の先行きは不透明だ。

人民のたたかい

(5月10日〜5月19日)

 食品加工労組の国際組織である「国際食品関連産業労働組合連合会」(IUF)は十八日、経済協力開発機構(OECD)に対し、米国ファストフードマクドナルドで労働者へのセクハラが相次いでいると申立を行った。  韓国の民主労総は十二日に会見を行い、政府の新型コロナ対策について、「最低の前提条件を無視している」と指摘した。政府は「基幹産業の安定」のために労使双方に努力を求めているが、「解雇禁止」は約束していない。  韓国のソウルで十三日、市内再開発により強制退去を求められた住民と民主労総、貧困社会連帯などが抗議集会を行った。

日本のできごと

(5月10日〜5月19日)

緊急事態宣言一部解除、無策続く
 政府は五月十四日、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための緊急事態宣言を三十九県を対象に一部解除した。残る八都道府県は判断を保留した。「人口十万人当たりの一週間の累積感染者数が〇・五人以下」などの基準を元に総合的に判断したものだが、そもそも直近のPCR検査数は政府が目標とした「一日二万件」どころか一万件にもならず、日本医師会から「財源投入がない」「自治体など個々の医療機関、企業の自主努力に丸投げ」と批判された。この状況での解除判断は無責任で、経済への打撃を恐れ「強いられた」もの。医療機関などでの集団感染も続き、国の無策が国民の健康と安全を脅かす事態が続いている。

GDP連続減、増税にコロナが拍車
 内閣府は十八日、二〇二〇年一〜三月期の国内総生産(GDP)を発表した。実質で前期比〇・九%減、年率換算で三・四%減となった。マイナス成長は昨年十月の消費税増税から2四半期連続。個人消費や輸出の落ち込みが大きく、増税にコロナ感染拡大が拍車をかけた格好。緊急事態宣言が出されて以降の四〜六月期はさらに記録的な落ち込みが必至で、国民経済と生活は打撃を受けている。

賃金8割直接給付も対応遅れる
 厚生労働省は十五日、コロナ感染拡大で勤め先から休業手当が支払われない労働者に向けた新たな給付金について、中小企業の労働者に賃金の八割程度を支給する方針を示した。本人がハローワークに申請して受け取る。政府は企業に雇用調整助成金を支給してきたが、手続きの煩雑さなどから手当を払わない企業が続出していた。二〇一一年の東日本大震災の際にも被災地で「みなし失業」の仕組みを導入しており、安倍政権は前例を活用しもっと早く労働者を支援すべきだ。

検察庁法強行断念、黒川検事長辞任
 安倍首相は十八日、自民党の二階幹事長らと会談、検察庁法改悪案の今国会での成立断念で一致した。幹部職を退く役職定年の年齢を過ぎても政権の判断でとどめられる内容で、検察人事への介入が強まることに国民的抗議が殺到していた。また違法な閣議決定で定年が延長された黒川・東京高検検事長は賭け麻雀の発覚で辞任、政権の思惑は大きくつまづいた。国民の声の一定の勝利と言えるが、最高裁人事を含め安倍政権の司法への介入策動は続いており、引き続き警戒が必要だ。

外交青書、中国敵視いっそう強める
 茂木外相は十九日、二〇年版外交青書を閣議で報告した。世界保健機関(WHO)総会への台湾のオブザーバー参加を「一貫して支持」とした。また「きわめて重要なパートナー」と位置付け、昨年版で半ページだった分量を倍増させた。北方領土については「わが国が主権を有する島々」とし、昨年版で消えた「日本に帰属」との記述が事実上復活した。韓国は「重要な隣国」との表現が三年ぶりに復活した。日米関係は「史上かつてなく強固」と、昨年の表現に「史上」を付け加えた。中国攻撃を強める米国と歩調を合わせる内容だ。

自衛隊初の宇宙作戦隊発足、米と歩調
 宇宙分野を専門的に扱う自衛隊で初の部隊「宇宙作戦隊」が十八日、航空自衛隊府中基地(東京都)で発足した。人員は約二十人で、人工衛星やスペースデブリ(宇宙ごみ)の監視から始め、将来は宇宙空間での攻撃への対処も想定する。昨年十二月に米軍が宇宙軍を発足させ、また五月の日米首脳会談では安全保障面での宇宙協力の強化を確認している。中国やロシアをにらみ、宇宙での軍拡を続ける米国と歩調を合わせたものだ。

再処理工場「合格」もサイクルは破綻
 国の原子力規制委員会は十三日、原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す日本原燃六ケ所再処理工場(青森県)の審査書案を了承、事実上「合格」とした。核燃料の再処理を推進するとした政府のエネルギー基本計画に沿ったものだが、プルトニウムを利用する高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉、普通の原発でプルトニウムを利用するプルサーマル計画も住民の反対で広がっていない。核兵器に転用可能なプルトニウムの大量保有は世界の警戒も強い。破綻した核燃料サイクルから一刻も早く撤退するべきだ。


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