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労働新聞 2020年3月5日号 トピックス

世界のできごと

(2月20日〜2月29日)

G20、危機感示すが具体策乏しく
 主要二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が二月二十二日、サウジアラビアのリヤドで開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響が広がるなか、「全ての利用可能な政策手段を用いる」との共同声明を発表した。だが、対応に追われる中国は閣僚級が欠席、各国の財政出動をめぐる姿勢も異なり、具体策には踏め込めなかった。国際通貨基金(IMF)が二〇二〇年の世界経済の成長見通しを引き下げたが、それでも楽観的との声が強い。情報技術(IT)大手など多国籍企業に対する国際課税制度についても議論が行われたが、米国は課税制度の採用を企業に委ねるという「骨抜き案」に固執、年内の最終合意は困難である。

トランプ大統領が初めて訪印
 トランプ米大統領は二十四日、インドを初訪問した。モディ首相との会談で液化天然ガス(LNG)の新規供給などで合意した。大統領は、二国間交渉の加速化を求めた。また、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋を守る」などと述べ、対潜ヘリなど三十億円ドル規模の武器輸出でも合意した。一方、米側はインドの高関税政策の撤廃を求めたが、モディ首相は応じなかった。5G(次世代通信規格)をめぐっても、米側は中国の華為技術(ファーウェイ)製品の締め出しを求めたが、同意しなかった。トランプ大統領は大統領選に向けた「成果」を演出したが、インドは米国との関係を一定改善しつつ、その対中包囲網と距離を置いた。

アフガンで「和平合意」
 アフガニスタンで〇一年のアフガン戦争以降駐留を続ける米国と旧政権勢力のタリバンは二十九日、カタールのドーハで和平合意に署名した。米軍は二一年春にもアフガンから完全撤退し、タリバンは「テロ組織」の活動拠点として同国を利用させないと確約した。米側は「アフガン撤退」を公約にしたトランプ大統領の再選につなげたい思惑。アフガン現政府とタリバンは同国の体制について協議を行うが、ガリ・アフガン首相は合意に盛り込まれた捕虜交換に不満を表明した。国家財政は破たんした最貧国で、火種は尽きず、再び米国は戦乱の泥沼に引きずりこまれる可能性もある。


米、韓国に駐留経費増要求
 エスパー米国防長官は二十四日、訪米した韓国の鄭国防相と会談した。エスパー氏は「防衛費の負担を米国の納税者に不釣合いに押し付けることはできない。韓国はより貢献すべき」などと述べ、在韓米軍の駐留経費の負担増を韓国に迫った。米韓の駐留経費をめぐる協議は昨年から続いており、二〇年分の駐留経費について、前年比五倍もの水準を要求してきたと伝えられていた。結局、今回の会談でも合意に至らなかったが、「あらゆる同盟国の負担増は最優先事項」(国防長官)と言うように、「自国第一」を叫ぶトランプ米政権の要求は際限がない

人民のたたかい

(2月20日〜2月29日)


 英国南部のブリストルで二十八日、若者を中心とする気候温暖化対策を求めるデモが行われ、約三万人が参加した。スウェーデンの環境活動家のグレタさんも参加、厳しく批判した。
 米国で二十八日、下院での公聴会に出席したポンペオ国務長官に抗議して反戦団体が抗議行動を行い、「イランへの制裁をやめろ」などのプラカードが掲げられた。
 ドイツ西部のハーナウで二十一日、極右勢力による人種差別の暴力を糾弾するデモが行われ約六千人が参加した。同地では極右思想の男がモスクを襲撃、十人を殺害した。デモの参加者は犠牲者の写真を掲げて、抗議した。
 英国で二十日、全国七十四の大学で教職員によるストライキが行われた。賃金や労働条件などの改善を求めて行われたもので、一六年の全国スト以来の規模。

日本のできごと

(2月20日〜2月29日)

政府の新型コロナ基本対策は不十分
 政府は二月二十五日、新型コロナウイルスの感染拡大に備えた基本政策を発表した。「重症者向けの医療体制を確保」するためとして軽症の人の自宅療養を求め、イベントには中止、延期などを求め、企業にはテレワークや時差出勤の推進を求めた。安倍首相は二十九日に会見を行い、二〇一九年度予算の予備費約二千七百億円の一部を使った、第二弾の対応策を十日程度でまとめるとした。だが、世界保健機関(WHO)の「警告」から一カ月近くを経ての対策は遅すぎ、具体性も乏しい。「ダイヤモンド・プリンセス」の検疫失敗に対する反省もない。「一部地域で小規模な集団発生」という現状認識も大甘で、国民生活は混乱のちまたにある。政府の無策こそ、国民の命と健康を危うくさせている。

政府、唐突に一律休校を要請
 安倍首相は二十七日、小中学校、高校などへの休校を要請した。期間は、三月二日から春休みまで。安倍首相は「子どもたちの健康、安全を第一に」などと理由を述べた。だが、唐突な発表で、最終決定は各教育委員会に丸投げ。しかも、保育所を対象者から外し、休校で影響を受ける保護者や教師、学童保育、給食関係者などへの配慮は皆無という無責任なもの。反対する専門家もいるなかでの強行に、学校現場や地域では混乱が広がっている。

肺炎リスク、経済に甚大な影響
 新型コロナ肺炎は、日本経済にも重大な影響を与えている。東京株式市場は二十八日、米ニューヨーク市場の下落も影響して五日連続で下落、日経平均株価は取引時間中では約四カ月ぶりの安値となった。日産自動車やキヤノンが九州工場の一時操業停止を決めるなど、企業は次々と操業停止や縮小を発表。家電量販店大手ラオックスは百六十人の希望退職を打ち出し、愛知県の旅館や北海道の食品会社が破産に追い込まれた。非正規労働者への解雇や労働条件悪化も数多ある。労働者、国民生活を守る闘いが急務だ。

20年度予算案が衆議院を通過
 二〇年度予算案が二十八日、衆議院本会議で、自公与党などの賛成で可決、衆議院を通過した。一般会計総額は過去最大の百二兆六千五百八十億円で、「三十日自然成立」の規定により、年度内成立が確定した。ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」導入など、防衛費は八年連続増の五兆三千百三十三億円、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の管理委員会費に三十八億円、一方で、社会保障費は概算要求から約一千二百億円も圧縮されるなど、国民犠牲で政治軍事大国化をもくろむ政策が目白押しだ。

海上自衛隊が中東で活動開始
 海上自衛隊の護衛艦が二十六日、アラビア海などでの「情報収集」活動を開めた。政府は昨年六月、ホルムズ海峡付近でタンカーが攻撃されたことを口実に、国会にさえ諮らず派兵を決めた。政府はイランに配慮してホルムズ海峡やペルシャ湾を活動領域に含めなかったが、米国主導の「有志連合」との連携は明白。米国のイラン敵視、トルコとシリアの軍事衝突など中東情勢は複雑でリスクだらけ。古川元財務副大臣など、自民党内にさえ反対論がある。直ちに撤兵すべきである。


JCM、要求額が大幅低下
 主要製造業の労働組合でつくる金属労協(JCM)は二十八日、二〇春闘の要求中間集計を発表した。ベースアップ(ベア)を含む平均要求額は三千六百八十九円で、昨年同時期より八・三%も減った。規模別では、組合員三百〜九百九十九人の労組で三千四百七十七円(三百八十九円減)、二百九十九人以下では三千八百八十一円(三百一円減)。景気後退、新型コロナウイルスに伴う企業業績の悪化が理由とする指導部の「腰砕け」を許さず、大幅賃上げを求めて闘おう。

原爆症認定に不当判決
 最高裁は二十五日、「経過観察中」である原爆被爆者を原爆症と認めるかが争われた上告審で、原爆症と認めない不当判決を下した。第二次安倍政権成立以降、認定基準の厳格化など対応は後退し続け、麻生首相(当時)と被爆者団体による「訴訟で争う必要のないよう解決を図る」という確認(〇九年)は反故(ほご)にされている。患者切り捨ての行政を追認した判断だ。


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