ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2020年1月25日号 トピックス

世界のできごと

(12月10日〜1月19日)

米中「第一段階」合意も攻勢続く
 米中両国は一月十五日、通商問題での「第一段階の合意」に正式署名した。米国は三十日後に千二百億ドル(約十三兆円)相当分の中国製品に課している関税率を一五%から七・五%に下げる。中国は今後二年間で二千億ドル(約二十一兆六千億円)もの米国製品を上積み購入する。この合意で、二一年に米国の対中輸出は千二百億ドル強の純増に。トランプ政権による対中貿易戦争の影響で二〇一九年の中国の対米輸出は前年比一三%減と、〇九年と並ぶ過去最大の打撃に。米側も農家の破産申請が高水準に達するなど、大統領選に向けた「成果」に焦っていた。ひとまずの「合意」だが、一八年に発動した約二千五百億ドル分の中国製品に対する制裁関税は維持されており、「人権」問題などと併せ、米国の対中攻勢が終わったわけではない。

米、イラン司令官を殺害
 米軍は二日、イラクのバクダッドでイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官らを空爆で殺害した。米国はイラクの米大使館がデモ隊に襲われた事件について「イランの関与」と決め付けていた。欧州連合(EU)、中国、ロシアだけでなく、「イスラム教国家は外部の脅威から身を守るため結束すべき」(マレーシア・マハティール首相)など、世界の批判が集中。イラク国会は米軍の撤退を決議した。イランも八日、イラクの米軍基地二カ所を報復攻撃し、「核合意」にも対抗を強めている。米国はさらなる経済制裁を発表、中東への増派も決めた。ウクライナ旅客機がイラン軍によって誤って撃墜されるなど、米国の戦争挑発を原因とする事態悪化が続いている。中東地域への直接的関与を薄めたいトランプ政権だが、逆に泥沼に足をとられている。

米干渉の下、台湾・蔡氏再選
 中国・台湾の「総統」選挙が十一日に投開票され、独立志向を強める民進党の蔡英文氏が、国民党候補を破って再選された。蔡氏は習近平国家主席が唱える「一国二制度」の拒否を訴え、香港の混乱を利用しながら選挙戦を進めた。同時に行われた立法院委員選でも民進党が過半数を確保した。ポンペオ米国務長官などは事実上、蔡氏を支持する発言を繰り返すなど、外国勢力の干渉の下での選挙戦であった。対中けん制のカードとして台湾を利用するトランプ政権の策動が強まっている。


トランプ弾劾裁判、分断広がる
 ウクライナ疑惑をめぐって十六日、米上院でトランプ米大統領に対する弾劾裁判が始まった。大統領を「権力の乱用」「議会に対する妨害」の二つの条項で弾劾訴追する決議が、民主党が多数を占める下院が上院に送付したため。米大統領の弾劾裁判は史上三例目。下院では、トランプ大統領がウクライナが求めた首脳会談と軍事支援を凍結し、政敵のバイデン元副大統領の捜査開始を公言するよう要求したと認定していた。共和党が多数を占める上院での有罪認定には高いハードルがあるが、十一月の大統領選に向けて党派闘争は激化、国内の分断はいよいよ埋め難いものになりつつある。


中国、29年ぶりの成長率鈍化へ
 中国国家統計局は十七日、一九年の国内総生産(GDP)速報値が実質前年比六・一%増だったと発表した。成長率は一八年(六・六%増)から鈍化。政府が掲げた「六〜六・五%増」の範囲に収まったものの、二十九年ぶりの低成長となった。また一九年の新車販売台数は八・二%減で二年連続で前年を下回り、鉱工業生産も五・七%増と、一八年(六・二%増)を下回った。米トランプ政権による貿易戦争が、大きく響いて打撃を受けた。


ロシア首相交代で体制づくり
 ロシアのメドベージェフ首相は十五日、内閣総辞職を発表した。プーチン大統領はミシュスチン連邦税務局長官を次期首相に指名した。メドベージェフ首相は安全保障会議の副議長に任命された。大統領は同日、年次報告演説で議会や国家評議会の権限強化に向けた憲法改正を提案、中距離核戦力全廃条約(INF)を一方的に破棄した米国を念頭に、軍事的対抗を強める姿勢を強調した。また、シリアやリビアなど中東地域における和平に向けて仲介役を積極的に引き受ける姿勢を示した。二四年には任期を終える大統領だが、退任後も米国に対抗し続けられる体制づくりに向けて動き出した。


独ロ、米干渉排し合意
 ドイツのメルケル首相は一月十一日、モスクワでプーチン・ロシア大統領と会談した。会談ではロシア産天然ガスをドイツに運ぶ海底パイプライン「ノルト・ストリーム2」の早期稼動で一致した。米国はこれに「安全保障上の脅威」などと難癖をつけ、十二月に敷設事業者を対象とする制裁を決めていたが、これを一蹴(いっしゅう)した形。両首脳は、米が一方的に離脱したイラン「核合意」の維持でも合意、メルケル首相はリビアの和平に関する国際会議をベルリンで開催することを明らかにし、プーチン大統領も賛同した。

人民のたたかい

(12月10日〜1月19日)


 フランス・パリで一月十六日、マクロン政権による年金改悪に抗議するデモが行われ、約二十五万人が参加した。九日にも百七十万人が参加するデモが行われていた。十四日には港湾労働者が二日間のストライキを行った。
 スイスのローザンヌで十七日、気候変動への対策強化を求める青年のデモが行われ、約一万五千人が参加した。このデモは「ダボス会議」に向けて行われたもので、スウェーデンの環境活動家のグレタさんも参加した。
 米国ワシントンで四日、トランプ政権によるイランへの戦争挑発に反対するデモが行われた。デモは全米各地で取り組まれた。
 英国ロンドンで十一日、イランとの戦争に反対し、イラクからの撤退を求めるデモが行われ、千人が参加した。
 イラクのバグダッドで四日、米軍によるイランのソレイマニ司令官殺害に抗議する数千人規模のデモが発生した。参加者は「米国に死を!」などと叫んだ。
 ポルトガルの空港運営会社の労働者が十二月二十七日、三日間のストライキを行った。会社側は三年間、賃上げを凍結していた。
 オーストラリアのシドニーで一月十日、大規模な森林火災に対するモリソン政権の姿勢に抗議するデモが行われた。モリソン政権はパリ協定の目標策定で温室効果ガスの抜本的削減に踏み込まず批判を集めている。

日本のできごと

(12月10日〜1月19日)

安保60年、共同発表で強化うたう
 日米両政府は一月十七日、外務・防衛担当閣僚会議(2+2)を開き、共同発表を行った。発表文は、日米同盟を「強固で、幅広く、不可欠」などと自画自賛、「自由で開かれたインド太平洋」構想を「共有する」とした。さらに安倍政権は十九日、駐日臨時米代理大使や在日米軍幹部を招いてレセプションを開催した。首相は「百年先まで、日米同盟を堅ろうに守り、強くしていこう」などと発言した。だが、在日米軍の駐留経費負担増額や通商問題など日米間の懸案は増大しており、日米関係の先行きは平坦でない。

自衛隊中東派兵、軍事大国化さらに
 政府は十二月二十七日、自衛隊の中東派兵を閣議決定した。海上自衛隊の哨戒機は一月十一日、那覇航空基地から出発した。二月には護衛艦も出航する。民間船舶の安全確保を口実に、アラビア海で「情報収集」などを行う。米国主導で、イランをけん制するための「有志連合」には参加しないが、バーレーンの米海軍司令部に自衛官を派遣するなど、実態では結び付いたもの。安倍首相は十三日から中東三カ国を訪問し、自衛隊派兵への「理解」を求めた。アラブ首長国連邦(UAE)では完全なビザ(査証)免除措置の導入、サウジアラビアでは改革への「全面的支援」を表明、オマーンではカブース前国王を弔問した。中東情勢が緊張するなか、日本の存在感をアピールするものだが、中東の平和には役立たない。

20政府予算案を閣議決定
 政府は十二月二十日、二〇二〇年度政府予算案を閣議決定した。一般会計の総額は百二兆六千五百八十億円で、一九年度当初予算から一兆二千九億円増加。防衛費はミサイル迎撃システム「イージス・アショア」導入などで八年連続増額の五兆三千百三十三億円とする一方、社会保障費は概算要求から約一千二百億円も圧縮された。年金給付額も「マクロ経済スライド」で減額される。そのほか、ポイントを見返りにマイナンバーカードを普及させる制度などが盛り込まれた。同時に決定された税制改定大綱では、5G(次世代通信規格)の整備などに投資した際の大幅減税もある。軍事大国化で大企業優遇、国民生活軽視は鮮明だ。

19補正予算に軍事費計上
 安倍政権は十三日、一九年度補正予算案を閣議決定した。政府は、通常国会での成立をめざしている。追加歳出総額は四兆四千七百二十二億円で、うち、災害からの復旧・復興に約二兆三千八十六億円をあてる。だが、防衛費が四千二百八十七億円も含まれ、大部分は、米国などへのローン返済。自動ブレーキ搭載車購入時の補助や小中学生へのパソコン配備など、事実上の大企業支援策も含まれる。景気低迷への対処を迫られたものだが、財源として三年ぶりに赤字国債の追加発行を迫られるなど、財政はますます危機的だ。

日韓外相会談、打開のメドなし
 訪米中の茂木外相は一月十四日、サンフランシスコ郊外で韓国の康外相と会談した。両外相の会談は十一月以来三回目。元徴用工訴訟や輸出管理問題をめぐり互いの主張をぶつけ合い、またも平行線に終わった。安倍政権は韓国政府が解決策を提示すべきと強硬だが、文在寅・韓国大統領は十四日、日本にも「解決策を提示」することを求めた。安倍政権はマスコミを動員して排外主義扇動に明け暮れており、日韓関係が打開できるメドはない。


上限を超える残業続く
 総務省が十二月二十七日に発表した「労働力調査」で、月八十時間を超える残業をする労働者が約二百九十五万人に達し、一八年平均の三百十九万人とほとんど変化なし。昨年四月、大企業の残業に罰則付き上限(年七百二十時間以内など)が定められたものの、雇用者全体の五%もが過酷な労働を強いられている。「サービス残業があぶり出された」という見解もあるが、「サービス残業」は依然根深く、調査結果は「氷山の一角」にすぎない。


自動車・電機、春闘の「解体」進む
 自動車総連は一月九日、中央委員会を開き、二〇春闘でベースアップ(ベア)実額を統一で示すことを二年連続で見送り、各単組に委ねることを決めた。企業内最低賃金の前年比四千円引き上げという方針も決めた。電機連合もベアを三千円以上とする一方、教育や待遇などと合算した回答を認める方向。労働組合が賃金体系の多様化を追認するもので、「全体水準を上げてくれというのは今の生産性や働き方の議論に合わない」(中西・経団連会長)と軌を一にしたもの。春闘の「解体」にほかならず、認められない。


伊方原発の運転を差し止め
 広島高裁は十七日、伊方原子力発電所三号機(愛媛県)の運転について、地震や火山の噴火で住民の生命や身体に具体的な危険があるとして、認めない仮処分の決定を下した。山口県内の住民が訴えたもので、裁判長は「四国電力は十分な調査をせず、原子力規制委員会が問題ないと判断した過程には誤りや欠落があった」と断じた。福島第一原発事故以降、運転停止仮処分は四例目で、伊方では二例目。当然の判決だが、四国電力は取り消しを求めて異議申し立てを行う方針。安倍政権による再稼働は、またも打撃を受けた。


阪神淡路大震災から25年
 阪神淡路大震災から、十七日で二十五年を迎えた。六千四百三十四人の命が失われたが、今なお、神戸市、尼崎市などの被災十二市の有効求人倍率は全国平均を下回り、可処分所得も震災前の水準に戻っていない。この震災以降、東日本大震災などの地震災害、さらに台風など自然災害は厳しさを増す一方。さらなる大規模地震の可能性も指摘されている。安倍政権はインフラ強化を打ち出しているが、それだけではまったく不十分だ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020