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労働新聞 2019年10月5日号 トピックス

世界のできごと

(9月20日〜9月29日)

国連総会利用し米、イラン攻撃
 第七十四回国連総会が米国ニューヨークの国連本部で開かれ、九月二十四日から一般討論が行われた。トランプ米大統領は「イランの血に飢えた欲望を支援すべきではない」などと口汚く攻撃した。中国には貿易協議で妥協する考えがないことを示すとともに、香港情勢を理由に中国を強くけん制した。イランのロウハニ大統領も演説、米国による制裁を「最も容赦ない経済テロ」と断じ、「核合意」に戻るよう諭した。米国のイラン制裁には、マレーシアのマハティール首相も「金持ちや強者の特権」と厳しく批判した。イラン包囲網を策したトランプ大統領だが、不利な立場に立たされた。

国連気候サミットで首脳ら追及
 米ニューヨークの国連本部で二十三日、気候変動サミットが行われた。スウェーデンの環境活動家グレタさんが演説、各国首脳に「皆さんが口にできることはお金と、経済成長は永遠に続くというおとぎ話」と厳しく指摘した。サミット前、国連は報告書を発表、二〇一五〜一九年の世界に平均気温が観測史上最高を記録、二酸化炭素の排出量は一八年に前年比二%も上昇したという。温暖化対策に背を向けるトランプ米大統領はグレタさんの演説をからかうツイートを行い、嘲笑の的となった。温暖化対策でも、資本主義を前提とした経済システムは持続不能に陥っている。

米政権に新疑惑発覚
 トランプ米大統領が七月にウクライナのゼレンスキー大統領に対して前副大統領で民主党の大統領候補の一人であるバイデン氏の息子に関する調査を要求した疑惑について二十四日、民主党はトランプ大統領の弾劾調査を決めた。トランプ大統領がウクライナへの軍事支援の条件としてバイデン氏の息子が役員を務めるガス企業に関する調査を繰り返し要求、内部告発の議会報告も阻んだとされる。政権側は電話記録をを公開したが、疑惑払拭とはならなかった。前回の「ロシア疑惑」は辛くも逃げ切ったが、来年の大統領選を前に不安定要素がまた浮上した。


英、議会閉会に無効判決
 英国の最高裁判所は二十四日、ジョンソン首相が十日から約一カ月の議会閉会を決めたことについて「違憲」判断を下した。判決では、政府が閉会の理由を明確にしていないと指摘、欧州連合(EU)離脱前の審議機会を奪ったと断じた。ジョンソン首相は「判決を尊重する」としつつ、あくまで十月末までの「強行離脱」をめざす考えを示し、議会を数日だけ開く案も取りざたされている。今後は議会が十月十九日までに新たな離脱協定をまとめられるかが焦点だが、欧州から世界に混乱が広がる可能性が日々高まっている。

人民のたたかい

(9月20日〜9月29日)


  フランス全土で二十四日、マクロン政権による年金制度改悪に反対するデモが行われて百七十カ所、約十五万人が参加した。このデモは労働総同盟(CGT)などの労組組織や学生や高校生の組織が共同で呼びかけたもの。パリでは一万二千人以上がデモに参加、「年金や賃金などの公共サービスの後退にノン」と訴えた。
 フランス・パリで二十一日、気候変動への対策と反核・平和を要求するデモが行われ、約五万人が参加した。森林破壊で被害に遭うアマゾンの先住民代表や、温暖化による水害に苦しむバングラデシュの代表も参加した。
 米国ニューヨークの国連本部前で二十日、「気候行動サミット」に合わせ各国に温暖化対策を求め、三十万人以上が集会とデモに参加した。世界百六十カ国以上で展開された「グローバル気候マーチ」の一環。デモでは「ウォール街を揺らせ」のシュプレヒコールが上がった。米国では五十州千百カ所以上で同様の行動が行われ、温暖化対策に背を向けるトランプ政権を厳しく批判した。

日本のできごと

(9月20日〜9月29日)

日米貿易協定で一方的譲歩
 訪米した安倍首相は九月二十五日、トランプ米大統領と首脳会談を行い、日米貿易協定とデジタル貿易協定の「最終合意」を確認し、共同声明に署名した。貿易協定は、牛肉・豚肉などの米国産農産品への関税を環太平洋連携協定(TPP)水準まで大幅に引き下げる一方、日本が輸出する自動車・同部品への関税撤廃は見送られた。米国側に一方的に有利な内容で、しかも今後、関税と非関税障壁も含んだ包括的交渉が行われるとされる。トランプ大統領は約七十億ドル(七千五百億円)規模の開放だとし、「巨大な勝利」と述べた。トランプ「再選」への「貢ぎ物」ともいうべき協定で、農業をはじめわが国国民経済はさらに追い込まれる。

気候変動会議でひんしゅく買う
 米ニューヨークで開かれた「国連気候行動サミット」で日本政府は演説を行わないなど、この問題に背を向ける米トランプ政権と同様の態度をとった。小泉環境相は二十二日、会見で「(火力発電を)減らす」と述べたものの、具体策は「先週大臣になったばかり」などと、見苦しい言い訳に終始した。米ロイターでさえ「何ら詳細を語らなかった」と批判するほどで、日本政府は国際的ひんしゅくを買った。

防衛白書、「防衛拡充」アピール
 河野防衛相は二十七日、二〇一九年度版「防衛白書」を報告し、閣議決定された。昨年末に策定された「新防衛計画大綱」や中期防衛力整備計画(中期防)を踏まえ、宇宙やサイバー空間を含む「新領域」における防衛の拡充に力点を置いている。また、中国やロシアの兵器開発を強調、「安保環境が急速に変化している」と指摘した。同盟国との関係では、「自由で開かれたインド太平洋構想」に基いて、オーストラリアやインドの記述が増加。一方、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄した韓国の順位が下がった。安倍政権が進める、対米従属下の軍事大国化をアピールするものだ。

日豪が初の航空共同訓練
 航空自衛隊とオーストラリア空軍との初の共同訓練「武士道ガーディアン」が二十四日、北海道と青森県周辺空域で始まった。両国の安全保障協力深化に基づくもの。丸茂航空幕僚長とハプフェルド空軍本部長が、「インド太平洋の平和と安定に向けた貢献についての認識を共有する」などとする共同声明を発表した。南太平洋諸国との関係を強める中国に対抗する狙いだ。

日仏包括的海洋対話で中国けん制
 日本とフランスが二十日、フランス領ニューカレドニアで初の「包括的海洋対話」を開いた。外務当局間を中心に海洋政策について議論するもので、「航行の自由」「持続可能な開発」やプラスチックごみ問題などが議題となった。両国は、海洋情報の共有に関する政府間取り決めの作成や共同訓練の継続、西アフリカ・ギニア湾での海賊への対応検討などで合意した。南太平洋に植民地が残るフランスと連携し、中国へのけん制を強める狙いだ。


関電に「原発マネー」環流
 関西電力の八木会長を含む幹部二十人に、高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役から、計約三億二千万円の資金が環流していたことが二十七日までに分かった。一七年までの七年間に渡り、地元建設会社からの資金が原資。関電は昨年夏に内部調査をしたが、結果を一年も隠し、会見時も回答を拒んだ。国民が負担する電気料金が環流していたもので、電力業界の腐敗は「底なし」。中西・経団連会長(日立会長)も「友達で悪口言えない」などと免罪した。原子力行政のデタラメさとゆ着の構造も暴露された格好だが、「氷山の一角」にすぎない。


地域医療切り捨てる「病院再編」
 厚生労働省は二十六日、全国の公立病院と赤十字などの公的病院(一千六百五十二病院)の約三割について「再編統合」が必要とする報告をまとめた。「非効率な医療による医療財政の圧迫」が口実で、二〇年九月までに病床削減や診療機能縮小、他病院との統合などを検討すべきとする。政府は都道府県に「地域医療構想」をつくらせ、「効率」の名の下に病床削減を進めており、今報告はその一環。地域住民の健康を支える公立病院を一方的に「再編統合」することは許されない。


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