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労働新聞 2019年9月25日号 トピックス

世界のできごと

(9月10日〜9月19日)

FRB、連続利下げを表明
 米連邦準備理事会(FRB)は九月十八日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を〇・二五%引き下げ、年一・七五〜二・〇〇%とすることと、民間銀行が預ける超過準備預金への付利を二・一%から一・八%に引き下げることを決めた。利下げは七月に続くもので、大統領選挙を意識したトランプ政権の要求に配慮たもの。ただ、国内の景気「格差」は深刻で、十人中二人の地区連銀総裁は「景気過熱」を恐れて反対した。パウエル議長はさらなる金融緩和も示唆(しさ)しているが、FRB内の意見対立は大きく、以降の金融政策を縛ることになる。

ECBも緩和拡大
 欧州中央銀行(ECB)理事会は十二日、二〇一八年十二月以来の量的緩和政策の再開を決めた。量的緩和は、月二百億ユーロ(約二・四兆円)ペースで国債などを買い入れる。また、銀行がECBに余剰資金を預ける際の金利を現在のマイナス〇・四%から同〇・五%に引き下げた。マイナス金利の「深堀り」。さらに、「物価目標の実現がしっかりと見通せるまで」政策金利を引き上げないと約束した。英国の欧州連合(EU)離脱、イタリアの政情不安などに備えたものだが、緩和政策だけで経済浮揚が不可能なことは明白だ。

米・サウジ、対イラン強硬で一致
 サウジアラビア東部の石油施設が攻撃されたことをめぐり、米国は「イランの関与」と決めつけ、包囲を強化している。トランプ米大統領は十八日、イランへの大幅な制裁強化を指示した。同日、サウジアラビアを訪れたポンペオ米国務長官はムハンマド皇太子と会談し、イランへの非難で一致した。トランプ大統領は、イラク戦争を引き合いに軍事介入には消極姿勢も見せたが、可能性をすべて排除したわけではなく、制裁強化は緊張激化につながる。だが、欧州諸国は「イランの関与」に懐疑的で、プーチン・ロシア大統領も「入念な調査が必要」と発言する、米国の態度は国際的にも支持されていない。


ボルトン解任、トランプ政権混乱続く
 トランプ米大統領は十日、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任し、後任にオブライエン人質問題大統領特使を任命した。背景には、アフガニスタンへの介入策や、イランや朝鮮民主主義人民共和国の「核問題」への対応をめぐる意見の違いがあると報じられている。一部には米国の対外強硬策が後退するとの見解もあるが、両者は「米国第一」で同じで、手法が若干異なるのみ。ただ、政権の内紛はやまず、混乱が続いている。

人民のたたかい

(9月10日〜9月19日)


  全米自動車労組(UAW)傘下の約五万人の労働者が十五日、ゼネラルモーターズ(GM)の米国九つの州三十一拠点でストライキに突入した。UAWのストは〇七年以来で、四年に一回の労働協約改定に合わせたもの。UAWは、生産停止が発表された三工場の再開、賃上げ、臨時雇用者の待遇改善などを要求している。
 フランスのパリで十三日、マクロン政権による年金改革に反対するストライキが行われ、地下鉄十路線と地域鉄道二路線が運行停止に追い込まれた。ストライキは、〇七年以降で最大規模のものとなった。
 韓国ソウル駅前で十六日、ストライキを闘っている、コレイル観光開発(鉄道公社の子会社)の労働者が、直接雇用を求めて集会を行った。
 ベトナム・クアンナム省にある韓国系縫製工場の労働者約六千人がストライキを行った。労働者向け食堂の衛生状態の悪さに抗議したもので、会社側は謝罪に追い込まれた。

日本のできごと

(9月10日〜9月19日)

再改造内閣発足、安倍色さらに色濃く
 安倍首相は内閣改造と自民党役員人事を行い、第四次安倍再改造内閣が九月十一日、発足した。閣僚十九人のうち十七人を交代、小泉進次郎氏を初入閣させて人事刷新を演出したが、麻生副総理兼財務相と菅官房長官は留任、茂木経済財政・再生相を外相に、河野外相を防衛相に横滑りさせ、党でも二階幹事長と岸田政調会長を続投させるなど、骨格を維持した布陣となった。また加藤厚労相や萩生田文科相など側近の起用を増やし、改憲実現への野望をここでも鮮明にした。対米従属・排外主義外交や多国籍大企業のための改革など、いっそう色濃くなることが予想される。

安倍政権の千葉被害軽視あらわ
 安倍首相は十三日、閣僚懇談会で停電の全面復旧に全力をあげるよう関係閣僚に指示、また経産省内に対策本部を設置した。九日未明の台風上陸から四日が経過しており、千葉県内で大規模な停電・断水被害が明らかになった後も内閣改造を優先させた対応は事態軽視にほかならない。また十七日には被害に対し予備費十三億二千万円を計上する方針を示したが、県民には「あまりに少ない」などと怒りが広がった。初動の遅れなど被災住民の命と生活を軽視した対応は明らかな人災だ。

旧民進が共同会派も展望見えず
 立憲民主党の枝野代表と国民民主党の玉木代表、社会保障を建て直す国民会議の野田代表は十九日、衆参両院で院内会派を組むことに合意した。衆議院百十七人、参議院六十一人の会派となる。連合などの意を受けたものだが、統一地方選や参院選を経て遺恨は深く、「統一会派」ではなく「共同会派」でようやく合意した。政策の相違も大きく、次期総選挙での協力も容易ではない。そもそも日米基軸などで与党と違わず、展望はない。

東電旧経営陣に「無罪」の不当判決
 二〇一一年三月の福島第一原子力発電所事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人に対して東京地裁は十九日、無罪判決を言い渡した。一連の裁判で、巨大津波の可能性を示した政府機関の予測などで事故を防ぐ機会があったにもかかわらず対策を怠った経営陣の姿勢が鮮明になったが、判決では「大津波は予見できなかった」とした。経営陣を免責した地裁判決は原発再稼働を進める安倍政権の意に沿った茶番で、被災者の思いとかけ離れた許し難い判断だ。

諫早湾訴訟、漁業権消滅認めず
 長崎県の国営諫早湾干拓事業をめぐり、潮受け堤防排水門の開門を命じた一〇年の確定判決を強制しないよう国が求めた訴訟の上告審判決で、最高裁は十三日、国の訴えを認めて「開門禁止」とした二審の福岡高裁判決を破棄、同高裁に差し戻した。また確定判決時点の漁業者の共同漁業権が免許期間の経過で消滅、開門を求める権利も失われたとした二審判決についても、権利消滅を認めないとした。ただ排水門を開門すべきかは判断せず、相反する司法判断が並立するねじれは継続する。「宝の海」再生への道は半ばだ。


ゲノム編集食品、審査と表示見送り
 消費者庁は十九日、ゲノム編集技術のうち、特定の遺伝子の働きを止めただけの手法を使った食品の表示について、厚労省の安全性審査の対象外とし、事業者の任意とすることを決めた。同省は十月からゲノム編集食品の届け出制度を開始する。消費者団体などから安全審査と表示の義務化を求める声が上がっていたが、米国では規制がなく、日本政府もこれにならった。ゲノム編集技術は歴史が浅く不安定で、食の安全を軽視する蛮行だ。


豚コレラで豚へのワクチン接種へ
 農水省は十三日、埼玉県の養豚場で豚コレラの発生を確認したと発表した。関東地方での確認は初めて。江藤農水相は養豚場の豚へのワクチン接種を表明した。昨年九月に岐阜市で二十六年ぶりに豚コレラが確認されて一年となるが、政府は野生のイノシシにワクチンを接種する一方、国際機関からの「非清浄国」格下げで輸出できなくなる事態を恐れて豚への接種を避けてきた。東海地方での「封じ込め」失敗を受けた転換に、早期のワクチン接種を求めてきた地方からは「遅すぎる」との批判も。殺処分を強いられた農家への対応を含め、対応加速が必要だ。


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