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労働新聞 2019年9月5日号 トピックス

世界のできごと

(8月20日〜8月29日)

G7、宣言文書はわずか1枚
 フランス・ビアリッツで開かれた主要七カ国首脳会議(G7サミット)は八月二十六日、首脳宣言を採択して閉会した。通常、数十ページにも及ぶ宣言は、一時はその採択さえ危ぶまれたほど。結局、貿易、イラン、ウクライナ、リビア、香港の五項目を数行ずつ記すのみで、わずか一枚の短いものとなった。トランプ米大統領の存在で、昨年まであった「保護主義と闘う」との文言さえ入らず、イラン問題でも同国の核保有を認めず「地域の安定を優先」という一般的なものとなった。米国の策動の下、貿易問題をはじめ、地球環境や多国籍企業への課税問題、対中国政策などで諸国間の合意は困難となり、帝国主義諸国の「協調」機関であるG7は崩壊しつつある。

中国が対米報告措置を発表
 中国国務院は二十三日、米国が九月から発動する対中制裁関税「第四弾」への対抗措置を発表した。トランプ米政権は八月初旬、すべての中国製品(約三十三兆円)に一〇%の関税を課すと表明したが、国内経済の冷え込みを懸念し、一部の実施を十二月まで延期した。中国の措置は、原油や農産物など約七百五十億ドル分(約八兆円)の米国製品に五〜一〇%の追加関税をかけるもの。また、昨年末の米中首脳会談で停止していた、自動車部品などへの最大二五%の追加関税も十二月に復活させる。中国は国内安定のためにも対抗せざるを得ないが、トランプ大統領は再対抗措置を取ると表明、「企業は生産拠点を米国に移すなどの中国の代替先を迅速に探すよう命じる」と、攻勢を緩めない態度を鮮明にさせた。

イタリアで連立政権の組み替え
 イタリアのマッタレッラ大統領は二十九日、コンテ首相を首相候補に再指名した。「五つ星運動」と極右「同盟」による政権は、「五つ星」と民主党の連立に変わる。首相は一時、サルヴィーニ副首相率いる「同盟」が国会解散を求めて内閣不信任案を提出したことで辞意を表明していたが、連立の組み替えで続投する。だが、「同盟」が主導してきた移民救助船の入港拒否などの排斥策や、欧州連合(EU)の基準に反する財政運営など難題は山積、新連立内も意見の相違を抱えたまま。新政権も長続きする保証はなく、イタリア政局の混迷は欧州情勢を揺さぶる続ける。


中比、資源共同開発で合意
 訪中したドゥテルテ・フィリピン大統領と習近平国家主席が二十九日、会談を行った。南シナ海の領有問題については互いの見解が平行線をたどったものの、海洋天然ガスの共同開発を加速させることで合意、中国は、フィリピンの長距離鉄道の整備を支援することを約束した。南シナ海問題をめぐっては、米国が介入を策動し、ベトナムと中国が資源開発でつばぜり合いを演じるなどの動きがある。中比は互いに実利を重視して合意したことで、米国の介入は打撃を受けた格好だ。

人民のたたかい

(8月20日〜8月29日)


  G7サミットの開催地であるフランス・バイヨンヌで二十四日、サミットに抗議するデモが行われ、気候変動問題で各国首脳に「即時の行動」を要求した。隣接するスペインのアンダイエにも約一万五千人が集まり、環境問題や人権などの要求を掲げてデモ行進した。
 バングラディシュのラカイン州で二十六日、ロヒンギャ族など約五万人が自らの権利擁護を求めてデモ行進した。
 インドネシア・ニューギニア島で二十九日、警察による人種差別に抗議し、独立を求めるデモ隊が議会庁舎に突入し、放火した。ニューギニア島西部の住民の大部分は先住民で、インドネシアとの文化的共通点はほとんどない。
 韓国のソウルで二十六日、米GM傘下の工場を解雇された非正規労働者が復職を求めてハンストに入った。

日本のできごと

(8月20日〜8月29日)

日米貿易協定で大筋合意、一方的譲歩
 安倍首相は八月二十五日、米国のトランプ大統領とフランス南西部ビアリッツで会談、交渉中の日米貿易協定について基本合意に達したと表明した。農産物の関税を環太平洋経済連携協定(TPP)並みに大幅に引き下げることに加え、貿易協定とは別にトウモロコシを米国から輸入することも合意した。一方で日本側が求めていた米国の自動車本体の関税撤廃は見送られることが決まった。首相は「TPP水準にとどめた」と強調したが、数少ない公表された情報からも日本側が一方的に譲歩する内容であることは明白だ。日本農業を破滅に追い込む売国的合意を許してはならない。

財政検証、歴代政権の失政は明白
 厚生労働省は二十七日、公的年金の長期見通しを五年に一度点検する財政検証の結果を公表した。モデル世帯(夫は四十年間会社員・妻は専業主婦)の場合、六十五歳時点で受け取る年金水準を示す所得代替率(現役世代の平均収入との比較割合)は現在の約六割が二十七〜二十八年後には五割程度にまで低下するとした。同省は「政府が掲げる代替率五〇%維持は達成される見込み」としているが、経済成長や雇用確保を前提としており、額面通りには受け取れない。特に、基礎年金(国民年金)は、自動削減の期間が現在より三〜四年延長され、給付水準は現在より約三割も減らされる深刻な内容。安倍政権は参議院選挙をにらみ検証結果の公表を通常より三カ月遅らせていた。歴代政権の失政は明らかだ。

GSOMIA破棄、日本さらに孤立
 韓国は二十三日、軍事機密を守る日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を日本政府に通達した。日本が輸出管理を簡略化する優遇対象国(ホワイト国)から韓国を除外したことなどを理由とした対抗措置。GSOMIAは二〇一六年に米国の東アジア戦略に沿って日米韓同盟を強化する目的で米国主導で締結した協定。米国と歩調を合わせ、安倍政権は中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵視・排外主義を利用しながら同盟強化を進めてきたが、今回は排外主義によって同盟が一部後退した格好。韓国の対応について安倍政権は「地域の安保環境を完全に見誤った対応」(河野外相)などと批判したが、日本は東アジアでの孤立をいっそう深めている。

朝鮮高校無償化、最高裁が差別追認
 東京朝鮮中高級学校の生徒が国に対し高校無償化制度の適用を求めた訴訟で、最高裁判所は二十七日、原告側の上告を棄却、上告受理の申立ても受理しない決定を下した。また同日、大阪無償化裁判でも、最高裁が朝鮮学園側の上告および上告受理申立てを退けた。一三年から全国五カ所で闘われてきた無償化裁判だが、東京と大阪の裁判で原告敗訴の判決が確定した。国の差別政策を追認する不当判決以外の何ものでもない。

横浜市が「白紙」一転カジノ誘致へ
 横浜市の林市長は二十二日、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致に乗り出すことを正式に表明した。観光地の山下公園に隣接する山下ふ頭を整備し、二〇年代後半の開業をめざす。誘致表明は大阪府・市と和歌山、長崎両県に続き四カ所目。さらに北海道や東京都、千葉市なども誘致を検討している。立地区域は昨年七月成立のIR整備法で全国で最大三カ所とされ、早ければ来年中にも決まる見通し。林市長は今年四月の市長選の際には誘致を「白紙」としていたが、米カジノ産業を支援するトランプ米大統領やその手先である安倍政権の意を受けて、「本性」をあらわにした格好だ。


米軍ヘリ窓再び落下、県民は怒り
 米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属・CH53E大型ヘリの窓が二十七日、沖縄本島東海岸から八ロの海上に落下した一七年十二月に普天間第二小学校(同市)の校庭に窓を落下させた米軍機と同型機。。県や関係自治体に第一報が入ったのは事故から二日後で、謝花副知事は日米両政府に対し「一九九七年の日米合同委員会合意では、公共の安全・環境に影響を及ぼす可能性がある事件・事故は速やかに通報するとなっている。米側は公共の安全・環境に影響を及ぼすととらえてないのか」と抗議した。繰り返される事故に県民の怒りは高まっている。


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