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労働新聞 2019年8月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月30日〜8月19日)

米、「第4弾」の対中関税
 トランプ米大統領は八月一日、米国が輸入するすべての中国製品(約三十三兆円)に九月一日から一〇%の関税を課すと表明した。これまでの対象は半導体など中国以外からの代替が利く分野が大半だったが、今回は携帯電話や衣服など中国からの輸入依存度が高い消費財が多く、米企業も打撃を被る。米中貿易協議は七月三十一日に終了したが、米国は執拗(しつよう)に中国の構造問題を問題視、さらに農産物の大量購入を迫って進展は見られなかった。また、米国は五日に中国を二十五年ぶりに「為替操作国」に指定した。ただ、十三日には「第四弾」のうち、金額ベースで全体の約六割への追加関税を十二月に延期すると表明せざるを得なくなった。消費の冷え込みで来年十一月の大統領選で不利になることを恐れたものだ。

FRBが 年ぶりに利下げ
 米連邦準備理事会(FRB)は七月三十一日、〇八年のリーマン・ショック以来となる十年ぶりの利下げを行った。中身は政策金利を〇・二五%引き下げ、二・〇〇〜二・二五%にするもの。米国では四〜六月期の実質国内総生産(GDP)も前期比から減速、レイオフも急増するなど、景気後退局面が鮮明になっていた。この利下げに対してトランプ大統領は「失望した」とし、一%もの追加利下げ圧力を強めている。だが、低金利は経済刺激どころか、債務拡大と金融機関の収益力を弱める結果となる可能性も指摘されていおり、米経済のかじ取りは困難をきわめている。

INF失効、米ミサイル開発に狂奔
 米国と旧ソ連が一九八七年に締結した中距離核戦力(INF)廃棄条約が八月二日、失効した。米国は二月に一方的に破棄を通告、期限切れを迎えた。トランプ政権は条約失効後を見据え、ロシアや中国に対抗するため中距離ミサイルの開発・配備を進めようと計画、十九日には地上発射型巡航ミサイルの飛行実験を行った。ロシアは「鏡のように同じ態度で臨む」(プーチン大統領)として対抗を宣言、中国も米国が主張するロシアに中国を含めた形での枠組みを拒否している。条約破棄を居直る米国はミサイル開発の「自由」を手にし、中ロに対して、軍事面で対抗しようとあがいている。


米のベネズエラ圧殺壁に
 米国が支援する野党勢力が混乱を引き起こしているベネズエラ情勢をめぐる国際会議が六日、ペルーのリマで開かれた。米国からはボルトン大統領補佐官らが乗り込み、マドゥロ政権の全資産凍結、同国と商取引を行う企業にも制裁を課すとともに、ロシアや中国、トルコなどへも制裁を広げると言い放った。こうした米国の姿勢に対し、欧州連合(EU)は「一方的措置の域外への適用に反対」と表明。この間、トランプ米政権はベネズエラに圧力をかけ続けてきたが、野党勢力によるクーデターも失敗、米国のシナリオは失敗した。さらにEUとの対立表面化で、米国の策動は壁にぶち当たっている。

人民のたたかい

(7月30日〜8月19日)


  米国テキサス州で八月七日、同地を訪れたトランプ大統領の人種差別・排外主義の言動に抗議する集会が開かれた。同地では人種差別主義者による発砲事件で三十人以上が死亡する事件が起きていた。参加者は「人種差別とトランプを歓迎しない」と訴え、トランプ大統領にいる移民排斥などの言動が事件の温床になったと主張した。
 ブラジルの約八十都市で十三日、ボルソナロ政権による教育予算の削減に抗議するデモが行われ、サンパウロでは約十万人もの学生・教職員などが参加した。ボルソナル大統領は教育分野について「文化的マルクス主義」と敵視、五月には公立大学予算を三割も削減する方針を発表していた。
 ポルトガルで十二日、トラック運転手の二つの労組が賃上げと労働条件改善を求め無期限ストライキに突入した。労組は昨年、団体協約締結、賃上げ、失業手当などの引き上げを勝ち取ったが、経営側は協約を実行しないままだった。社会党のコスタ政権は経営側の要請に応えて民間徴用を強行、左派野党から厳しい批判の声が上がっている。
 韓国ソウルの日本大使館前で十日、日本政府による対韓輸出規制に抗議する集会が開かれ、約一万五千人が参加した。主催は労組や市民団体で構成する「安倍糾弾市民行動」。参加者は規制撤回を求めるとともに発端となった徴用工問題についても謝罪と賠償を強く求めた。八日にも日本大使館前で学生が集会を開き、徴用工被害者への謝罪と賠償、植民地支配の反省と清算を迫った。
 韓国ソウルで十四日、旧日本軍による「慰安婦」問題の解決を求める集会が開かれた。同日は一九九一年に「慰安婦」被害者が初めて実名で名乗り出た日で、韓国では「慰安婦をたたえる日」とされている。全世界十カ国三十四の都市でも連帯集会が開かれた。この集会には多くの学生も参加、「ゆがめられた歴史によって涙を流す人がいなくなるようにがんばる」との声が上がった。
 中国・台湾でも同日、日本政府に対して「慰安婦」被害者への謝罪と補償を求める集会が開かれた。台湾でも日本軍によって「慰安婦」にされた被害者が名乗り出ている。
 ドイツ・ベルリンで十四日、日本による慰安婦問題を告発し、日本政府の謝罪と補償、すべての戦時性暴力の根絶を求める集会が開かれた。旧日本軍による慰安婦国際メモリアルデーに合わせて行われたもので、在独韓国人団体や在独日本人女性グループが主催。参加者は「安倍首相は歴史的責任を果たせ」と訴えた。

日本のできごと

(7月30日〜8月19日)

政府、韓国への制裁をエスカレート
 安倍政権は八月七日、韓国を、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る国(ホワイト国)から除外する政令を公布した。日本からの工作機械などの輸出が制約される可能性が強い。七月に発動された、半導体材料の輸出管理厳格化に続く措置で、韓国も対抗措置を発表した。元徴用工問題への報復であることは明らかだが、日本企業にも悪影響を与える。安倍政権による排外主義と歴史への無反省ぶりは許しがたい。

「表現の不自由展」に言論弾圧
 愛知県で開催されていた国際芸術祭の実行委員会は三日、元従軍慰安婦の少女像を含む「表現の不自由展・その後」の中止を決めた。実行委会長である大村県知事は、放火を匂わせるなどの脅迫があったことを理由とするが、実施団体に一方的に通告する不当なもの。河村・名古屋市長や松井・大阪市長(日本維新の会代表)は、少女像の展示中止を要求、脅迫を扇動した。菅官房長官も、補助金不交付の可能性に言及した。展示を守るべき責任を放棄し、言論圧殺に加担する行政と当局は許せない。

日銀、緩和示唆するも限界付き
 日銀は七月三十日、金融政策決定会合を行い、現行政策の維持を決めた。併せて「物価安定の目標に向けたモメンタム(勢い)が損なわれるおそれが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」などとする声明文を発表した。黒田総裁は、「金融緩和にかなり前向きになった」と述べた。米欧の中央銀行が緩和傾向を強めるなか、円高による景気悪化を防ぐ意思を示したもの。だが、日銀の緩和政策はすでに限界で、経済環境は、厳しさを増すばかりだ。

原爆の日、首相は核廃絶に冷淡
 広島市は八月六日、長崎市は九日、被爆から七十四回目の「原爆の日」を迎えた。松井・広島市長は「平和宣言」で、自国第一主義の台頭が核廃絶の動きも停滞させていると、名指しは避けつつ米国を批判、日本政府にも核兵器禁止条約の批准などを求めた。政府への要求が明記されることは異例。だが、安倍首相は「核兵器国と非核兵器国の橋渡し」などと言うのみ。被爆者団体との懇談でも同条約への参加を拒否するなど、核廃絶に背を向けた。

終戦の日、首相は「過去」言及せず
 政府主催の全国戦没者追悼式が八月十五日、開かれた。安倍首相の式辞は、前年まであった「歴史と謙虚に向き合う」との表現を削除した。併せて、「世界が直面している課題」のため「国際社会と力を合わせて全力で取り組む」と新たに盛り込まれ、対米従属下で大国化をめざす安倍政権の意思が示された。同日、安倍首相は靖国神社に玉串料を奉納、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」などが参拝した。歴史に無反省な安倍政権の姿勢は許されない。


昭和天皇、米軍依存の新証言
 田島・宮内庁初代長官(一九五三年まで在任)による、昭和天皇との会話記録が十九日までに明らかになった。天皇は、全国で反米軍基地闘争が起きるなか、「一部の犠牲はやむを得ない」と、基地を許容していた。現憲法の改悪と再軍備の必要性にも言及したという。米国による琉球諸島の占領を望んだ「天皇メッセージ」(四七年)と同様のもの。マスコミは「戦争への反省」に言及することを望んだ点だけを宣伝、天皇を美化している。戦後の天皇制が対米従属政治を支えたことが改めて示された格好だ。

最低賃金、依然として低水準
 中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)小委員会は七月三十一日、二〇一九年度の全国の最低賃金の目安を時給九百一円(三・一%、二十七円増)とする方針を決めた。政府の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で「早期に全国平均で一千円をめざす」としたのを受けたもので、東京都と神奈川県は初めて一千円を超える。引き上げ額は過去最大だが、これでも、年収二百万円以下のワーキングプア水準。都市部と地方との格差も深刻で、地方からの人口流出を促す一因。「全国一律一千五百円」の早期実現が必要だ。


リクナビ、労働者選別の個人情報販売
 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートが、学生の同意を得ずに、人工知能(AI)による約八千人分の「内定辞退率予測」を販売していた問題で、根本・厚生労働相は八月八日、購入企業を調査すると表明した。購入企業は、トヨタ自動車、東京エレクトロンなど三十八社。各社は「合否に使っていない」などと言うが、信用できない。同意なしの情報収集・売買、企業による情報共有は、個人情報保護法や職業安定法などに反し、特定の労働者を就業から排除することにもつながる。先端技術が大企業のためだけに使われることに、警戒が必要だ。


福島原発、処理水保管が限界に
 東京電力は八日、福島第一原子力発電所の汚染水を除去設備で処理した後の処理水を保管するタンクが、二二年夏に満杯になるとの試算をまとめた。すでに、原発敷地内のタンクは九百六十基・約百十五万トンに達し、一日約百七十トンも増え続けている。東電の発表は、漁民などの反対を押し切って、政府が海洋放出を認めるための世論誘導でもある。経産省は九日、処理水に関する小委員会を約七カ月ぶりに開いた。溶融燃料(デブリ)の取り出しなど廃炉作業どころではなく、デタラメな原子力行政の責任は重大だ。


横浜市が「カジノ」立候補へ
 横浜市は十九日までに、カジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する方針を決めた。候補地は山下ふ頭が有力。林市長は一七年の市長選の際に「慎重」姿勢を示していたが、当選後は市民説明会を開き、「再開発」を理由に港湾事業者に移転を求めていた。政府は今秋にも「カジノ管理委員会」を設け、IR事業者の適格性や設置区域の基準などを定める予定。誘致合戦のし烈化は必至。すでに横浜市の港湾事業者らは反発しているが、全国で運動を発展させることが重要だ。


熊本地震、被災者なおざり
 熊本県は十三日、一六年の熊本地震で被災し、仮設住宅で生活する被災者が七月末で八千九百六十八人と、初めて一万人を下回ったと発表した。これは、最長四年の入居期限の延長条件から、民間賃貸住宅を探していることを除き、被災者の退去を促したことが理由の一つ。七月にも七世帯の延長希望が拒否されている。建設型仮設から災害公営住宅に転居し、家賃負担に苦しむ被災者も多い。国・県は被災者の生活再建に万全を尽くすべきだ。


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