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労働新聞 2019年6月5日号 トピックス

世界のできごと

(5月20日〜5月29日)

欧州議会選挙、「懐疑派」が前進
 欧州議会選挙(定数七百五十一)が五月二十三〜二十六日、欧州連合(EU)加盟各国で行われた。「親EU」勢力全体では全体の三分の二を維持したが、旧来の二大勢力である中東右派と中道左派が後退、両勢力の合計では初めて過半数を割った。「EU懐疑派」は全体の三分の一に達し、とくに右翼系の二会派の合計は百十二議席で三十議席以上増加した。英国、イタリア、フランスでは第一党となった。欧州有権者の政治意識の分裂があらわになったことで、各国での政治闘争、階級闘争の激化も必至だ。

メイ英首相が辞任表明
 英国のメイ首相が二十四日、六月中旬に首相と保守党党首を辞任すると表明した。メイ首相は、当初の予定である三月末までにEU離脱案をまとめられず、さらに、自らの離脱案の合意を得るために二度目の国民投票を行う条項を追加したことで、与党や閣内からも反発が広がっていた。後任には強硬離脱派が有力視されているが、残留を求める世論も根強く、分断は深刻化している。英国情勢はさらに混迷、世界経済にも重大な影響を与える可能性が増している。

イラン大統領、米との対話を拒否
 イランのロウハニ大統領は二十一日、制裁を続ける米国との交渉を拒否すると述べた。大統領は、米国との関係を「経済戦争」と規定、「抵抗しか選択肢はない」と明言した。ロウハニ大統領は、「合意」で定められた義務の一部を履行停止することも発表した。他方、ポンペオ米国務長官は、サウジアラビアの石油タンカーが破壊行為を受けた事件を「イランが背後にいる」と決めつけて揺さぶった。トランプ大統領は二十四日、米軍一千五百人を中東に追加派兵することを決めた。「無条件の対話」に言及する米国だが、実際には圧迫を緩めず、中東情勢をさらに不安定化させている。


インド総選挙、首相続投決まる
 インド総選挙(定数五百四十五)の開票が二十三日に始まり、インド人民党(BJP)を率いるモディ首相が三百議席以上を得て勝利宣言を行った。BJPが二期連続で政権を担うのは初めて。昨年末の地方選で大敗した首相は、カシミールでのテロ事件をを口実にパキスタンを空爆するなどで「強い首相」をアピールした。農民の「所得倍増」やインフラ整備への投資を訴えたことも、支持につながった。二〇五〇年には経済規模で日本を抜くと予想されるインドだが、六%以上に高止まりする失業問題や「格差」など、課題は多い。

人民のたたかい

(5月20日〜5月29日)


  アルゼンチン全土で二十九日、マクリ政権による緊縮政策に反対し、主要労組がゼネストに突入した。
 韓国・蔚山の現代重工業で二十七日、同社による大宇造船の買収に反対し、五百人の労働組合員が本社に突入した。会社側は不当にも支部長らを告訴、一万二千人の労組員は二十八日から全面ストに入った。
 ニュージーランド全土で二十九日、賃上げと労働時間短縮を求め、教員労組がストライキを行った。昨年来のストは三回目で、五万人が参加した。
 アルジェリアのアルジェで二十四日、ブーテフリカ前政権に関与した関係者の処罰を求め、数千人がデモ行進した。
 ベルギーなど世界の百二十五カ国二千三百五十都市で二十四日、気候変動の危機を訴えるデモが行われた。学生を中心に約百八十万人が参加した。
 フランス・パリのルーヴル美術館の労働組合が二十七日、ストライキに入った。労働者は、増え続ける訪問客らに対応できないとして、当局に抗議している。

日本のできごと

(5月20日〜5月29日)

日米首脳会談、対中国で踏み込む
 安倍首相と訪日したトランプ米大統領が五月二十七日、会談した。安倍首相は屈辱的なほどに大統領を歓待、F35戦闘機の大量購入も改めて約束した。大統領は貿易交渉について「八月に発表がある」と、「先送り」で参議院選挙を控える首相に恩を売った。日本にとっては、農産物や自動車を中心に通商交渉でハードルが上がることは必至。トランプ大統領が横須賀基地で「力による平和」と演説したように、日米同盟での日本の負担も避けられない。対米譲歩は、国民生活・国民経済はさらに追い込み、アジアの緊張を高めるものだ。

月例経済報告、後退を糊塗
 内閣府は二十四日、月例経済報告を発表した。政府の景気への認識として「緩やかに回復」という基調を維持しつつ、景気の減速感についての「このところ」「一部に」との表現を削除し、とくに輸出・生産の回復が遅れると判断した。なかでも、米国による対中制裁の激化が響いている。十月の消費増税の方向性は確認したが、国民生活は増税に耐えられない。従来の「戦後最長の景気回復」という判断との整合性を維持してアベノミクスの破綻をつくろいつつも、景気悪化を認めざるを得ないジレンマがにじみ出ている。

外相、韓国への敵視続ける
 河野外相と康・韓国外相が二十三日、フランスのパリで会談した。河野外相は元徴用工問題で、韓国外務省報道官が日本企業による賠償履行を求めたことを非難、仲裁委員会の開催を受け入れるよう求めた。韓国側は回答を留保した。三カ月ぶりの外相会談だが、日本側の執拗(しつよう)な態度で、またも物別れに終わった。一方、自民党外交政策合同会議は二十九日、二十カ国・地域(G20)首脳会議での日韓首脳会談を見送る。

公明党、「都構想」めぐり裏切り
 松井・日本維新の会代表(大阪市長)と公明党の佐藤・大阪府本部代表は二十五日に会見し、「大阪都構想」で協力することを表明した。維新は、二〇二〇年秋に再度の住民投票をめざしている。公明党は先の大阪府・市長選で維新候補が勝利したことを理由としたが、「衆参同日選」観測が高まるなか、維新との協力で小選挙区の議席を守ろうとする党利党略。府本部の態度は一八〇度の転換で、有権者に対する重大な裏切り。憲法改悪で維新との協力を願う安倍官邸の意向が反映したものでもあり、厳しい批判が必要だ。

パワハラ防止法が成立
 職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が二十九日、参議院本会議で可決・成立した。企業に再発防止策や相談窓口の設置を求め、改善がない場合は社名を公表する。厚生労働省は年内にも、パワハラにあたる具体的行為について指針をつくる予定。だが、罰則規定がないなどの問題がある。実効性のある枠組みづくりには、職場での労働組合の役割が欠かせない。


「最賃1千円」、依然不十分
 自民党の「最低賃金一元化推進議員連盟」(会長・衛藤元衆議院副議長)は二十二日、最低賃金を平均時給一千円に引き上げる方向で一致した。とくに、地方での賃上げを重視するという。公明党も同日、菅官房長官に、六月にまとめる「骨太の方針」に同様の目標を盛り込むよう求めた。アベノミクスの失政を隠すとともに、参議院選挙目当てでもある。だが、仮に時給一千円となっても、年間所得は二百万円以下のワーキングプアである。最賃の早急な大幅引き上げが必要だ。


強制不妊訴訟で判決、賠償認めず
 宮城県内の二人の女性が、旧優生保護法(旧法)の下で不妊手術を強制されたのは違法として国に損害賠償を求めた裁判で二十八日、仙台地裁が判決を下した。判決は旧法を憲法違反としつつ、賠償は「請求権が消滅」として認めなかった。国が賠償法を制定しなかった責任も認めなかった。旧法をめぐる訴訟での判決は初めて。一時金支給法が四月に成立したが、国は謝罪せず、責任も明記されなかった。判決が国の責任を認めなかったのはきわめて不当。原告は控訴する方針だが、国は責任を認めて早期に賠償すべきだ。


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