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労働新聞 2019年5月25日号 トピックス

世界のできごと

(5月10日〜5月19日)

米、第4段関税とファーウェイ制裁
 米通商代表部(USTR)は五月十三日、中国からの輸入品を対象とした追加関税の「第四弾」の詳細を発表した。三千八百五品目・総額三千億ドル分(約三十三兆円)、輸入品のほぼすべてが対象で、最大二五%の追加を検討する。十五日には、中国通信大手・華為技術(ファーウェイ)への輸出禁止措置を発動した。同社がイランと取引したとの理由だが、世界から年間六百七十億ドル(約七兆円)の部品を購入している同社への制裁は、全世界に甚大な影響を与える。任最高経営責任者(CEO)も独自の半導体開発計画を表明するなど、屈しない意思を示している。

米、自動車で日欧に譲歩迫る
 トランプ米大統領は十七日、自動車への追加関税に関する判断を最大百八十日延ばすことを発表した。米国は昨年五月、「通商拡大法二三二条」に基づき二五%の追加関税を課すことを検討していた。大統領は再度、自動車の輸入増加を「安全保障上の脅威」と決めつけ、米通商代表部(USTR)に日本や欧州連合(EU)との交渉加速を指示した。中国との交渉が難航するなか、トランプ政権は大統領選挙に向けた「成果」を焦っているが、国際的、さらに経済界を含む国内でも政権の孤立が深まっている。

米ロ外相会談、溝は埋まらず
 ポンペオ米国務長官とラブロフ・ロシア外相が十四日、ロシアのソチで会談し、「関係の改善が必要」との認識で一致した。最大の課題である核軍縮問題では、ポンペオ長官が中国などを加えた軍縮交渉を、ラブロフ外相は新戦略兵器削減条約(新START)の期限切れ(二〇二一年)に備えた「軍備管理の対話復活」を主張したが、中距離核戦力(INF)全廃条約の失効が八月に迫るなか、合意はきわめて不透明。イラン「核合意」やベネズエラ情勢への対応では、まったく合意できなかった。「ロシア疑惑」の捜査終結を見計らっての会談だが、米民主党の追及も続いており、両国間の溝は深い。


中・イラン、制裁強化に反対
 中国を訪問したザリフ・イラン外相は十七日、王毅外相と会談した。両外相はイラン「核合意」の順守が必要との認識で一致した。中国はイラン産原油の最大の輸入国だが、米国はイランへの制裁を再開、中国など輸入国への経済制裁も示唆(しさ)、さらにイランへの軍事的圧力も強めている。中国は、米国の強硬策を黙殺する構え。ザリフ外相は訪問に先立ち、インドと日本も訪れており、米国による包囲網を打ち破ろうとしている

人民のたたかい

(5月10日〜5月19日)


  フランスのマクロン政権に反対する「黄色いベスト運動」のデモが十八日、全土で行われ、四万人以上が参加した。行動は半年目で、粘り強く続けられている。
 ブラジル全土で十五日、ボルソナロ政権による教育予算削減計画に抗議して、学生や教職員など数十万人がデモ行進を行った。
 韓国のソウルで十一日、三千人の非正規職労働者がデモ行進を行った。参加者は、死に追いやられた非正規労働者の遺影を掲げ、文在寅政権に非正規職問題の解決を求めた。
 米国や欧州諸国などで十八日、遺伝子組み替え作物の種子(GMO)大手のモンサント社に対する抗議行動が行われた。フランスでは四十都市で取り組まれ、パリでは数千人がデモ行進した。
 パレスチナ自治区で十五日、イスラエル建国で難民に追い込まれた「大災厄の日」から七十一年目に抗議するデモ行進が行われた。

日本のできごと

(5月10日〜5月19日)

景気指数6年ぶり「悪化」
 内閣府は五月十三日、三月の景気動向指数速報値を発表した。景気の現状を示す一致指数が前月比〇・九ポイント低下の九九・六で、基調判断は二〇一三年一月以来、六年二カ月ぶりに「悪化」に引き下げた。米中貿易摩擦などを背景とする外需の変調が波及、輸出関連を中心に足元の国内経済指標は弱含みが目立ち、けん引役だった設備投資についても頭打ちが懸念されるとした。上場企業の二〇年三月期決算でも純利益は二十八兆四千五百億円程度と前期比一・四%減と小幅に落ち込み、二期連続での最終減益となるなど、景気が後退局面に入っていることが明白となった。異次元金融緩和や大型財政出動などを続けてきた安倍政権に打つ手は乏しく、国民は政権交代を早晩求めざるを得ない。

問題多い消費税増税前提2法が成立
 消費税の増税を前提とする子ども・子育て支援改定法と大学等修学支援法案が十日、参議院本会議で与党などの賛成で可決・成立した。認可外保育施設指導監督基準を満たさない施設も五年間公的給付の対象とするなど、子どもの安全軽視・数合わせの側面も強く、また公立保育所での幼児教育・保育無償化の費用がすべて市町村負担となり公立保育所減らしが加速する事態も懸念されるなど、問題点も指摘されている。また「大学教育育無償化」も、支援対象とする大学に厳しい要件を課すことで地方の中小規模大学を苦境に立たせ教育格差を広げる結果となることも不安視されている。「全世代型社会保障への転換」を掲げた同法成立で参院選前の実績づくりをもくろむ安倍政権だが、消費税増税とセットになった二法により国民生活がいっそう苦境に陥る。

新基地建隠す米軍上空ドローン禁止
 米軍や自衛隊基地上空での小型無人機(ドローン)の飛行禁止を加えた改定ドローン飛行禁止法が十七日、参院本会議で、自公与党と維新などの賛成多数で可決・成立した。自衛隊施設や米軍の施設・区域、それらの周辺三百メートルの上空での飛行が規制可能となる。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設現場の上空からの撮影を禁止し工事の実態を隠すことが最大の狙いで、日本新聞協会は同日、「取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害する」などと批判する談話を発表した。これを受けて米海兵隊太平洋基地は、取材目的を含めた在沖海兵隊の施設・区域でのドローンの飛行について「施設や周辺住民に危険が及ぶ恐れがある」として原則許可しない考えを示した。沖縄県民を危険にさらし続ける元凶・米軍のふざけた言い分は到底許し難い。

全政府統計の6割強「不適切」
 総務省統計委員会の点検検証部会は十六日、毎月勤労統計(厚生労働省)の不正調査問題を受けた政府統計の追加点検結果を発表した。特に重要度の高い「基幹統計」(五十六統計)を除く「一般統計」(二百三十二統計)のうち百五十四統計で不適切な対応があったと認定した。基幹統計の不適切対応(二十四統計)と合わせ、問題があったのは政府の二百八十八統計の六割強の百七十八統計に上った。また厚生労働省は十四日、最賃の改定審議に使われる賃金改定状況調査で、回収したデータを業種や地域に応じて日本全体の状況に合わせる「復元処理」を一部を除いて行っていなかったとし、データ偽装が発覚した毎月勤労統計のほかにも不正が行われていたことを公表した。政府の統計不正は底なしで、偽装やデマを押し通す安倍政権の性格と無縁ではない。

成長戦略案、高齢者就労や副業促進
 政府は十五日、未来投資会議(議長・安倍首相)を開き、今夏にまとめる成長戦略の骨格を示した。少子化で生産年齢人口(十五〜六十四歳)が減少していくことを踏まえ、働きたい高齢者に対し七十歳までの雇用確保を企業に求める方針を示すとともに、二つ以上の仕事を兼ねる兼業や本業以外の仕事を持つ副業の促進に向け、仲介役を果たす地方銀行や人材紹介会社に支援金を出すことを検討するなどの雇用改革が柱。しかしこれらは雇用の流動化と労働条件の引き下げ、年金支給年齢の引き上げなど社会保障の切り下げを念頭に置いた改革で、今後予想される労働者・国民への攻撃に警戒を強める必要がある。


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