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労働新聞 2017年12月5日号 トピックス

世界のできごと

(11月20日〜11月29日)

米、朝鮮を「テロ支援国」に再指定
 トランプ米政権は十一月二十日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を「テロ支援国家」に再指定した。指定は、ブッシュ政権が解除して以来、九年ぶり。翌日には、十四団体・個人などの資産凍結を発表、朝鮮への独自制裁を強化した。朝鮮は二十九日、「新型大陸間弾道弾」(ICBM)の発射で反撃した。今回の追加制裁は、中国企業四社と中国人実業家が含まれるなど、朝鮮敵視だけでなく、中国へのけん制を強化する狙いが濃厚。トランプ政権は、中国の国有銀行を制裁対象に加えることも示唆(しさ)している。米国は中国に原油輸出停止など強硬な制裁を求めているが、中国、ロシアは応じず、朝鮮包囲策はますます手詰まりだ。

米軍機事故が4割近く増加
 米軍機が二〇一七年、非戦闘地域での訓練中に起こした墜落事故が二十二件、昨年比で約三八%増加したことが、二十五日までに分かった。故による死者は三十七人、同二・三倍に増えており(行方不明者を含む)、とくに、垂直離着陸輸送機オスプレイなど、乗員数の多い軍用機の事故が増加した。米国内では、「戦闘地での敵からの攻撃よりも、通常訓練で多くの兵士を殺している」と、安全管理体制を批判する声が高まる一方、訓練時間の増加を口実とする軍事予算増額に結びつけようとする動きもある。

シリアめぐりロシアの存在感高まる
 ロシア南部ソチで二十二日、プーチン・ロシア大統領、ロウハニ・イラン大統領、エルドアン・トルコ大統領がシリア問題を中心に協議した。シリア内戦はアサド政権に有利に推移し、ミサイル攻撃まで行った米国の「排除」方針は破綻した。会談に先立ち、ロシアは国連安全保障理事会での「シリアの化学兵器使用疑惑調査」の延長決議に拒否権を行使してもいる。三カ国は、以降の協力で合意した。ロシアの中東での存在感の高まりを示すものだが、一方で、米国の力の低下を如実に示している。


レバノン首相帰国、混乱収束せず
 訪問先のサウジアラビアで辞任を表明していたハリリ・レバノン首相が二十一日、帰国し、アウン大統領との会談で辞任をひとまず「保留」した。外遊中の辞任表明は、イランの支援を受ける「ヒズボラ」の台頭を嫌うサウジがハリリ首相に圧力をかけたためと報じられている。レバノンは複数の宗派が混在し、政府ポストも宗派ごとに割り振られている。米国の意を受けたイスラエルによる干渉で、内戦が続いた。また、イエメンの「フーシ」がサウジの内戦介入に反撃するなどで、サウジとイランの対立は深まり、中東情勢はさらに不安定化している。

人民のたたかい

(11月20日〜11月29日)


  米通販大手アマゾンのイタリアドイツの物流拠点で二十四日、多くの小売企業がセールを行う「ブラックフライデー」に合わせ、約三割の労働者が参加してストライキを行った。ボーナスをめぐる交渉が決裂したためで、労働者は年内の残業も拒否している。
 スペイン全土で二十九日、米ウーバーなどの配車サービスに抗議し、タクシー運転労働者が二十四時間ストライキを行った。
 韓国の慶北星州郡で二十一日、終末高高度ミサイル防衛システム(THAAD)基地への工事装備の搬入に抗議し、住民が車両に体を縛り付けて抵抗した。
 国連の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に合わせて二十五日、世界で女性への暴力に反対するデモなどが行われた。フランスのパリでは数百人が性暴力被害に対する予算を拡充するよう政府に求めた。スペインのマドリードでも数千人がデモした。

日本のできごと

(11月20日〜11月29日)

規制改革推進会議答申、「実績」誇示
 政府の規制改革推進会議(議長・大田政策研究大学院大学教授)は十一月二十九日、規制改革推進に関する第二次答申を取りまとめた。電波、待機児童、林業に関し、電波の競争入札の導入や使用量が少ない公共用電波の民間開放、企業が福利厚生の一環で設ける企業主導型保育所の入所規制撤廃、森林の集積・集約化や管理の民間事業者委託を進める制度創設などを提言した。この三項目は総選挙をにらんで安倍首相が九月に「重点」と定めて取りまとめを指示していたもので、与野党内からの反対が少ない「点数を稼げる分野」と見込まれたもの。「実績」を焦る安倍政権の姿には、政権運営の苦境が見て取れる。

森友疑惑、検査院が「根拠不十分」
 大阪府豊中市の国有地が、森友学園にごみの撤去費分として約八億円値引きされて売却された問題で、会計検査院は二十二日、検査報告書を国会に提出、値引きの根拠となったごみ推計量について「十分な根拠が確認できない」とする検査結果を公表した。国交省と財務省は国会で「適切に積算した」と説明してきたが、矛盾する結果となった。安倍首相は国会で「『適切に処理した』と報告を受けている」と訂正も謝罪もせず、総選挙中に連呼した「丁寧な説明」の中身を問われると「政府が扱う森羅万象をすべて私が説明できるわけではない」と居直った。こうした姿勢に与党内からさえ批判が相次いでいる。

米の「テロ支援国家」再指定、後押し
 安倍首相は二十七日、米国のトランプ大統領が朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したことを受け、「大統領の来日時に私から働きかけを行った。きわめて重要な圧力で歓迎し支持する」と述べた。テロ支援国家指定をめぐっては、二〇〇八年に米政府が指定を解除した際に日本政府は反対するなど、朝鮮圧殺政策で米国に勝るとも劣らない強硬なわが国の姿勢があらためて示された。

日米共同で朝鮮核攻撃訓練か
 小野寺防衛相は二十一日、核兵器搭載可能な米空軍の戦略爆撃機B52が八月に日本列島の上空を横断飛行した際、日本海の空域で航空自衛隊の戦闘機部隊と編隊飛行訓練を実施していたという新聞報道を事実だと認めた。小野寺氏は日米の緊密化で朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)にさらなる圧力をかけることが目的と述べ、共同訓練を公表しなかった理由について「その時点の公表で日米が合意していなかった」と言葉をにごした。米軍の朝鮮に対する核攻撃を想定した訓練に日本の自衛隊も参加していたことをうかがわせるもので、日米に朝鮮の核・ミサイル開発を批判する道理はない。

新TPP大綱も農業などの打撃必至
 政府は二十四日、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や十一カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)の発効を見据えた国内対策をまとめた「総合的なTPP等関連政策大綱」を決定した。大綱は二年前に米国を含むTPP大筋合意を受けて策定されたものの改定版で、関税の削減・撤廃でチーズなど欧州産農産物との競争にさらされる酪農や畜産農家に対する追加の支援策が柱。補正予算で三千億円規模の対策費が検討されている。安倍政権は中国主導の「一帯一路」に対抗しようと日欧EPAやTPP11の推進に躍起になっている。大綱はそのための国内対策だが、農業など国内産業が打撃を受けることは必至だ。

財界が最大規模の訪中団
 経団連の榊原会長や日本商工会議所の三村会頭、日中経済協会会長の宗岡・新日鉄住金会長など二百五十人からなる訪中団が二十日から中国を訪問した。財界による過去最大規模の訪問団で、二十一日には李克強首相と二年ぶりに会談、日本側は「一帯一路」について、インフラ整備などに関する共同研究体制の構築や両国が協力できるプロジェクト候補の情報窓口設置などを盛り込んだ提言書を手渡した。構想に乗り遅れたくない財界の焦りと一定の「自主性」が透けて見える。一方、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)については、電子商取引や知的財産権の保護などのルールづくりについて李首相から「次第にグレードアップすればよい」と距離を置かれるなど、中国側の優位な状況を印象付けた。


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