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労働新聞 2017年11月25日号 トピックス

世界のできごと

(11月10日〜11月19日)

独、連立協議決裂
 九月の連邦議会選を受け、一カ月余りドイツで続けられてきたメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)、緑の党との連立交渉が十一月十九日、決裂した。FDPはユーロ圏の財政統合に反対、また難民・移民問題ではCDU・USU、FDPともに年間受け入れを二十万人に制限、難民の家族を呼び寄せることを禁止することを提案、緑の党との対立した。この事態を受け、メルケル首相は少数与党で政権を発足させるか、連邦議会を解散するか迫られている。欧州連合(EU)の中心国・ドイツの事態は、欧州全体の政権不安を高めている。

ASEAN、中国批判避ける
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は十六日、マニラで開催していた首脳会議で議長声明を発表し、終了した。中国とASEAN各国との懸案となっていた南シナ海問題では、従来の議長声明にあった「深刻な懸念」という表現が消え、「中国との関係改善に留意」に変わった。すでに、議長国のフィリピンが「問題を大きくしない」(ドゥテルテ大統領)と表明していた。この問題で中国は譲歩する姿勢を見せない一方で、「一帯一路」構想で大規模な経済協力を打ち出しており、各国とも中国との対立を避けることを選んだ。また、アジア歴訪中のトランプ米大統領は同会議に欠席、貿易問題を最優先する姿勢を鮮明した。これにより、東南アジアでの米国の影響力はいっそうの陰りを見せている。

米機関、朝鮮テコに対中脅威あおる
 米議会の超党派諮問機関である「米中経済安全保障再考委員会」は十五日、二〇一七年版の報告書を発表した。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対する国連の経済制裁について中国が一部を順守していないと指摘した。とくに中国が石炭輸入や鉱物の取引をを続けていることをやり玉に上げた。また対中貿易をめぐっては関税や補助金などの中国の貿易政策を批判、「米国企業は中国市場で同じ土俵に立っていない」と苛立ちをあらわにした。一方で人工知能(AI)や量子情報科学、ドローン(無人機)技術では米国の優位が中国に脅かされていると、危機感を示している。


ジンバブエで事実上政権崩壊
 軍による事実上の反乱が十五日に起きたアフリカ南部のジンバブエでは三十七年間も政権の座にいたムガベ大統領の辞任が不可避となった。大統領は国軍に軟禁されても辞任を拒否したが、政権与党は十八日、党首辞任を求める決定を行い、大統領夫人にも地位を退くよう求めた。同国は第一次世界大戦後、英国の植民地であったが、一九八〇年には独立。ムガベ政権は当初、白人地主からの土地取り上げなど進歩的政策もあったが、コンゴ内戦への介入や欧米による経済制裁で国民生活は極度に疲弊、政権への批判が高まっていた。欧米の植民地政策以来の混乱の帰結だ。

「パラダイス文書」、トランプに打撃
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICJ)は五日、英領バミューダから漏れた約千三百四十万件の文書を公表した。エリザベス英女王やカナダ自由党、ティラーソン米国務長官のほか、丸紅やIHIなどの多国籍大企業がタックス・ヘイヴン(租税回避地)を活用して税金を免れていることや、ロス米商務長官と関係の深い海運会社がプーチン・ロシア大統領の親族企業と取引していることが暴露された。「パナマ文書」に続き、多国籍企業や政治家に対する非難が高まるのは必至。とりわけトランプ米政権は、「ロシアゲート」問題で元選対本部長が起訴された直後であり、大きな打撃だ。

人民のたたかい

(11月10日〜11月19日)


  米国ワシントンで十九日、大型ハリケーンに襲われた米自治領プエルトリコの被災者への支援を求める集会とデモが行われ、数千人が参加した。
 フィリピンのマニラで十四日、ASEAN首脳会議の関連会合に際し、同国を訪問したトランプ米大統領に抗議するデモが行われた。星条旗が燃やされ、「帝国主義とファシズムに死を」とのスローガンが叫ばれた。
 英国ロンドンで十五日、学生や労組でつくる「学費と予算削減に反対する全国キャンペーン」(NCAFC)が富裕層への増税と無償教育を求めるデモを行った。
 ポルトガルのリスボンで十八日、労働総同盟が呼びかける最低賃金引き上げや労働条件の改善を要求するデモが行われ、約六万人が参加した。「反緊縮」を掲げた社会党政権だが、最賃引き上げを拒否している。

日本のできごと

(11月10日〜11月19日)

日中首脳会談、関係改善を強調へ
 安倍首相は十一月十一日、訪問先のベトナム・ダナンで中国の習近平国家主席と会談した。両首相は東京での日中韓首脳会談の早期開催をめざすことで合意、関係改善に向けた外交を本格化させる方向で一致した。首相は、日中平和友好条約締結四十周年にあたる来年に相互訪問を実現することも提案した。また、安倍首相は十三日にも東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に合わせて李克強首相と会談、関係改善を印象付けた。安倍政権にとっては、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に圧力をかけるために中国にいっそうの関与を促す狙いと併せ、政権基盤を固めて「一帯一路」構想を加速させる中国との関係改善を求める財界の意も受けている。日本の対米追随外交は、矛盾を深めている。

空虚な所信表明、困難な状況反映
 安倍総理大臣は十七日、衆参両院の本会議で所信表明演説を行った。わずか十五分、文字数にしておよそ三千五百字という短いもので、総選挙中と同じく朝鮮情勢や少子高齢化を挙げて「国難を乗り越える」とした。「生産性革命」と「人づくり革命」を強調、十二月に新しい経済政策のパッケージを策定するとした。森友・加計疑惑などについては選挙中は「丁寧に説明する」と言いながら、一言もふれられなかった。また、「目玉政策」のはずの教育無償化などをめぐっては、与党内からも反発が出ている。中身に乏しい所信は、政権の困難さを示すものでもある。

東アジア首脳会議、孤立する安倍外交
 ASEAN十カ国と日米中など八カ国による東アジア首脳会議が十四日、フィリピンのマニラで開かれた。安倍首相は中国包囲を狙った「自由で開かれたインド太平洋戦略」の具体策として、海上安全や災害救援など三分野で人材育成や物資供与に取り組む考えを表明、また朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への圧力強化を呼びかけた。南シナ海をめぐっては、中国による軍事拠点化などを「国際法に基づいた紛争の平和的解決」を要求したが名指しは避けた。会議はトランプ米大統領が欠席、安倍首相は中国対抗の姿勢で突出したが、各国首脳からは中国との融和を示す国が相次ぎ、安倍首相の策動はかえって中国の存在感増大を印象付ける結果となった。

TPP11、「大筋合意」も前途多難
 米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加十一カ国は十一日、新たな協定について大筋合意した。名称を「包括的および先進的なTPP」(CPTPP)に改めることや、米国が復帰するまでの間、一時的に実施を見送る凍結項目を医薬品の開発データの保護期間など知的財産分野を中心に二十にまで絞りこんむなどの内容。安倍首相は「世界に向けた力強いメッセージ」と述べたが、マレーシアが主張する国有企業の優遇禁止の凍結など未解決項目も残されたままで、「合意」は演出の域を出ず、最終合意や発足とは程遠い。

疑惑の加計学園獣医学部を認可
 林文科相は十四日、加計学園が申請していた岡山理科大学獣医学部(愛媛県今治市)の新設を認可した。来年四月に五十二年ぶりに獣医学部が開設される。政府は獣医学部の新開設を半世紀以上認めてこなかったが、友人が理事長を務める同学園の新設を求める首相の「ご意向」の下、今治市が国家戦略特区に指定され、開設が推し進められた疑惑が濃厚。国家戦略特区は、内外の多国籍大企業の意向に沿って日本の経済・社会を改造するための道具。首相による政治の私物化とともに、国家戦略特区制度自身の問題が如実に示された格好だ。

希望の小池代表辞任、瓦解寸前に
 希望の党は十日、両院議員総会で共同代表を選ぶ選挙を行い、玉木衆議院議員を選出した。これを受けて同党の小池・東京都知事は十四日、「創業者の責任を終えた」などとして共同代表を辞任する意向を表明した。解散・総選挙に合わせ小池氏が結党した同党は、前原代表と図って民進党を合流させて「政権交代選挙」とぶちあげたが、すぐに失速、公示前から議席を後退させて惨敗した。小池氏の政治的影響力は大きく失墜、国政関与を当面投げ出した形で、同党自身も瓦解寸前だ。


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