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労働新聞 2017年9月15日号 トピックス

世界のできごと

(8月30日〜9月9日)

米、朝鮮核実験口実に制裁強化策動
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は九月三日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に「完全に成功した」と発表した。核実験は六回目で、核技術の進展を印象づけた。これを口実に、トランプ米大統領は、国連安全保障理事会での石油供給停止を含む制裁強化決議に向けた策動を強化している。トランプ大統領は、六日、中国の習近平国家主席との電話協議で、「中国の重要な役割を重視している」と、朝鮮へのさらなる圧力を求めた。習主席は、具体的方策は明らかにしなかったが、「対話」を力説し、両国の溝は残ったまま。米国は対朝鮮政策を中国に依存せざるを得ず、制裁強化には限界がある。

米、国債上限で暫定合意
 米国下院は八日、連邦債務の上限凍結と暫定予算を含む法案を賛成多数で可決、トランプ大統領が署名、成立した。債務上限の引き上げに失敗すれば、ハリケーン対策に支障が出るだけでなく、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥る危険性があった。ただし、上限凍結は十二月までで、それまでに与野党が合意できなければ、再度のリスクに襲われる。凍結をめぐっては、共和党は来年秋の中間選挙までの長期凍結を主張していたが、トランプ大統領は民主党案を丸呑みしただけでなく、債務上限の完全撤廃に向けて民主党と協議することでも合意した。共和党内には大統領への不信が拡大、政局はさらに不安定化している。

米、移民80万人の強制送還に反発
 トランプ米政権は五日、オバマ前政権による、十五歳以下で入国した不法移民の強制送還を免除する政策(DACA)の撤回を発表した。セッションズ司法長官は、DACAを「憲法違反」を決めつけ、約八十万人を送還対象とすることを明言した。トランプ政権は半年の猶予期間を設け、議会に救済法を可決するよう求めている。だが、共和党の一部や企業を含め広範な反発が広がっている。移民は貴重な労働力となっており、送還は米国の競争力をそぎかねず、トランプ政権の狙う経済再生策にも矛盾するものだ。


米ロ報復合戦、関係さらに厳しく
 米国務省は八月三十一日、ロシアの在米外交施設三つ閉鎖するよう求めたと発表した。米ロ関係をめぐっては、オバマ政権末期の昨年末、「サイバー攻撃」を理由にロシア外交官の国外退去処分を下したことが最初。トランプ政権下でも、議会が七月に対ロ制裁強化法案を可決、ロシアは米外交官の削減を求めるなど、報復合戦が続いている。「対ロ融和」を説いたトランプ政権は、シリアや朝鮮半島情勢への影響も恐れて、ロシアに「報復を回避するよう望む」と求めたが、ご都合主義のきわみ。米ロ関係はいちだんと厳しいものとなった。


人民のたたかい

(8月30日〜9月9日)


  米国ワシントンのホワイトハウス前で五日、トランプ政権よる不法移民の子の強制送還処分決定に抗議し、数千人が気勢を上げた。
 ノルウェーのオスロで二日、気候変動対策の強化を求めるデモが行われ、与野党による油田開発に反対した。
 韓国で四日、韓国放送公社(KBS)と文化放送(MBC)労組が全面ストに突入した。過去のストライキ参加者の「ブラックリスト」の存在が暴露されたことを理由とするもの。
 タイで七日、北中部地方タインホア省の外資系縫製の工場労働者約六千人が、社内規定が厳しすぎるとしてストライキを行った。同工場では、一カ月に一日しか休日が取れないという。
 インドのダージリン地方で六日、茶園労働者十万人がストライキに入ってから三カ月目を迎えた。同地方は紅茶の名産地でネパール系住民が多いが、州政府がベンガル語の教育を義務化するとしたことに住民が反発したもの。

日本のできごと

(8月30日〜9月9日)

米日韓で朝鮮への軍事的圧力強化
 小野寺防衛相とマティス米国防長官は八月三十一日に電話で会談、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に「目に見える形で圧力をかけ続けていく」ことで一致した。同日、朝鮮が強く批判し続けていた米韓軍事演習が終了したが、一方で米軍は米領グアムのアンダーセン空軍基地所属のB1戦略爆撃機二機と米海兵隊岩国基地(山口県)所属のF35ステルス戦闘機四機を九州周辺の空域や朝鮮半島の韓国上空に展開、航空自衛隊と韓国空軍の戦闘機とそれぞれ共同訓練を行った。米軍のB1、F35の同時展開は初めて。朝鮮のミサイル発射や核実験を「挑発」「深刻な脅威」などと批判する安倍政権だが、軍事的威嚇を強化しているのは米日韓の側だ。

日英首脳会談、軍事協力拡大へ
 安倍首相は三十一日、英国のメイ首相と東京で会談し、経済分野や安全保障での協力をうたった「日英共同宣言」を発表した。経済では、英国の欧州連合(EU)離脱を踏まえ、両国の自由貿易協定(FTA)締結に向け準備を加速する方針を打ち出し、今後に不安を抱える両国財界の要請に応えた。安全保障では、インド・太平洋地域での安保協力の強化を確認、空母の展開といった陸海空軍の派遣など英国の関与拡大に含みを持たせた。この地域で存在感を増す中国を暗にけん制し米アジア戦略を補完する内容で、ここでも安倍首相は米国の手先として働いた。

民進党、前原体制発足も前途多難
 民進党代表選が九月一日に行われ、前原元外相が枝野元官房長官に勝利し当選した。執行部人事では、山尾衆議院議員を幹事長に充てる人事構想が山尾氏のスキャンダルでとん挫、新体制発足後も離党者が相次ぐなど前途多難な船出となった。ともあれ、民進党、前原代表は日米基軸など国の基本政策で自公与党と変わらず、内政でも、増税を前提とした「中福祉中負担」を掲げている。これでは国民にとって真の「選択肢」とはなり得ず、労働者・労働組合は民進党への期待を捨て、自らの力で闘わなければならない。

戦略特区諮問会議、3カ月ぶり開催
 政府は五日、国家戦略特区の諮問会議を開き、三区域十二の事業計画を認定した。都心の再開発四件や、運転手が乗車しない完全な自動運転の実験を促進する特区(東京と愛知県)、外国人医師による医療の特例(東京)などどを新たに特区事業として了承した。諮問会議はこれまで一〜二カ月に一回のペースで開催していたが、加計学園疑惑などの影響で五月末以来約三カ月の開催となった。議長の首相は「透明性向上に向けた運用見直し」を強調したが、財界人や御用学者を中心に構成される会議で大銀行・多国籍大企業のための規制緩和を決定する場であることは変わらず、今後も警戒が必要だ。

待機児童、3年連続で増加
 厚労省は一日、今年四月一日時点の全国の自治体別の待機児童数を発表した。認可保育所(園)などを希望しても入れなかった待機児童が二万六千八十一人で昨年より二千五百二十八人増え、三年連続の増加。安倍政権は保育基準を緩める企業主導型の「待機児童解消加速化プラン」を掲げているが、成果が上がっていないことが官製統計からも示された格好。基準を緩める政策に「詰め込み」との批判が強まる一方、各地で問題になっている保育士不足を解消するための抜本的な処遇改善には対処できず、安倍政権はまるでこの問題解決に責任を果たせていない。

労働分配率が過去最低水準に低下
 財務省は一日、四〜六月期の法人企業統計調査結果を発表した。全産業(資本金一千万円以上、金融機関を除く)の経常利益は前年同期比で二二・六%増の二十二兆三千九百億円と、四半期ベースで過去最高になった。国内外で自動車販売が好調なことに加え、商社などの利益が高水準だったことによる。一方、資本金十億円以上の大企業の労働分配率は四三・五%と高度経済成長期だった一九七一年一〜三月以来、約四十六年ぶりの低水準を記録、資本金十億円未満の中堅・中小企業でも六九・八%と九二年七〜九月以来の低さとなった。「アベノミクスの恩恵」なるものが大企業やその株主などに集中していることがあらためて示された。


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