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労働新聞 2017年9月5日号 トピックス

世界のできごと

(8月20日〜8月29日)

朝鮮ミサイル発射、国連制裁課せず
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が八月二十九日、弾道ミサイル一発を北東方向に発射、日本上空を通過したことを口実とした米国などの対朝鮮圧殺の動きが強まっている。同日開かれた国連安全保障理事会では、中国、ロシアを含む賛成でミサイル発射を非難する声明が採択された。マティス米国防長官は再び「多くの選択肢がある」などと、軍事攻撃を含む対応を示唆(しさ)した。しかし、米国などが狙った朝鮮に対する新たな制裁強化などは盛り込まれず、中ロも米国の軍事行動については強く警戒、あくまで協議を通じた解決をめざし、韓国も同様の立場だ。

韓国、爆撃機派遣を拒否
 米韓両国は二十一日から合同軍事演習を開始した。韓国訪問したバイデン米戦略軍司令官は、韓国の宋国防相や韓国軍制服組トップの鄭合同参謀本部議長とソウルで相次ぎ会談、「米韓同盟は強固で、朝鮮からの攻撃があれば韓国を防衛する」などと述べ、対朝鮮政策での韓国のいっそうの協力を促した。しかし、韓国側は米側がB1B戦略爆撃機を韓国上空に派遣することを提案したことに対し拒否するなど、一枚岩には遠い。

米、新たなアフガン戦略
 トランプ米大統領は二十一日、これまでのアフガニスタン戦略を見直し、同国への駐留米軍を増やすことを発表した。また、隣国のパキスタンやインド、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対して、協力することを要求した。とくにパキスタンに対しては、「これ以上、テロ組織やタリバンの安全な隠れ家になっていることに黙っていない」などとどう喝した。大統領選ではアフガン派兵の米軍の早期撤退を訴えていたトランプ氏だが、タリバンなどの支配地域拡大に危機感を募らせていた。増派は決めた米国だが、かつてのアフガン侵攻で泥沼に陥った旧ソ連の過ちを再び繰り返そうという気配が強まっている。


中印、対立回避へ
 中国とインドは二十八日、六月から続いていた両国国境付近の「ドクラム」(中国名・洞朗)における両軍による対峙(たいじ)を終わらせ、軍を撤退させることで合意した。ドクラムは中国とブータンがそれぞれ領有権を主張していたが、ブータンが同地域で中国が道路建設を開始したと発表、ブータンと関係が深いインドが派兵し、両軍のにらみ合いが続いていた。九月三日から、インドも参加する新興五カ国(BRICS)首脳会議が中国で開催されるのを前に衝突回避に向け、協議が進んでいた。米国などはインドを対中けん制のカードにしていたが、中印両国の関係回復により、米国などの思惑は空振りに終わった


人民のたたかい

(8月20日〜8月29日)


  米国カリフォルニアバークレーで八月二十七日、トランプ大統領の支持派が計画した集会に対抗して市民ら数千人が集結し、支持派を封じ込めた。対抗デモの参加者は、支持派を取り囲み「トランプにノーを。クー・クラックス・クラン(KKK)にノーを。ファシストの米国にノーを」「ナチスは帰れ」と叫んだ。
 ペルーのリマで二十四日、公立学校の教育労働者が賃上げを求め六月に行われたストライキへの処分に抗議する集会を開いた。労組は賃上げ以外にも南米諸国で最低ランクの教育予算増、評価制度の撤廃などを掲げている。
 スペイン南部のグラナダで二十三日、イスラム教徒数百人が同国で十七日に起きたテロ事件を受け、極右団体によるモスクへの放火など、反イスラムの憎悪をあおる犯罪に抗議してデモを行った。デモ参加者は「平和に生きたい」「私たちも犠牲者」と訴えた。

日本のできごと

(8月20日〜8月29日)

日米、朝鮮への圧力さらに強化
 安倍首相は八月二十九日、トランプ米大統領と電話協議し、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の弾道ミサイルが北海道上空を通過したことを理由に、「圧力強化」で一致した。両首脳は、国連安全保障理事会で朝鮮への石油禁輸措置を提起する方針。また、米韓合同演習と並行し、自衛隊は米軍と共同航空訓練を実施、衆参両院の委員会の閉会中審査でも、朝鮮への「抗議決議」を全会一致で採択した。だが、不当で度を超した制裁措置には朝鮮の強い反発が必至で、中国やロシアが禁輸に同意する可能性は低い。安倍政権は全国瞬時警報システム「Jアラート」などで危機をあおったが、北東アジアの緊張を高めるだけだ。

安倍政権、徴用工問題で立場変更
 韓国の文大統領は二十五日、植民地支配下で日本に動員された徴用工の請求権問題について、一九六五年の日韓請求権協定で「国家間では解決済み」との立場を示しつつ、個人の請求権を認めた韓国最高裁判断にも言及した。大統領は八月、従軍慰安婦と徴用工問題の解決を日本政府に呼びかけている。安倍政権は呼びかけに反発しているが、請求権協定が「個人の請求権そのものを消滅させたものではない」(一九九一年の政府答弁)とする見解にさえ反するもの。安倍政権による「解決済み」の世論誘導は排外主義をあおるもので、補償負担を避けたい大企業の要求に応えるものでもある。

中東への武器輸出を加速
 政府が航空自衛隊の輸送機C2をアラブ首長国連邦(UAE)へ輸出する検討をしていることが、二十七日までに分かった。防衛装備移転三原則に基づくもので、実現すれば初の武器完成品の輸出となる。UAEはサウジアラビアなどとともにイエメンへの武力攻撃に参加、「三原則」でさえ禁じる「紛争当事国」だが、政府は「主導する立場ではない」と強行する構え。米戦略の補完を強めると同時に、わが国軍需産業に奉仕するものだ。

「小池新党」へ策動強まる
 細野元環境相、長島元防衛副大臣、野間衆義院議員の三氏が二十九日、会談した。三氏は、小池都知事の側近で「日本ファーストの会」の若狭衆議院議員と連携し、九月下旬にも新会派結成をめざすという。安倍政権の支持率が低下、総選挙の観測が高まるなか、民進党内の分岐も横目に見ながら、新たな「安倍補完勢力」をめざす動き。三氏の過去の言動を見る限り、民進党以上に自民党と大差ない勢力にしかなり得ない。

小池知事、追悼文とりやめ
 小池都知事は二十五日、関東大震災時に殺された朝鮮人犠牲者を慰霊する式典への追悼文送付を取りやめたことについて、六千人以上の虐殺の有無に明言しなかった。式典には石原知事(当時)でさえ追悼文を寄せ、小池知事も昨年は送付していた。この件では、自民都議が三月の都議会で「数字の根拠」を口実に「再考」を求めていた。墨田区長も知事に追随した。事実上、知事が虐殺を否定する立場を表明したことになり、歴史わい曲と排外主義の正体をあらわした。

厭戦気運隠せぬ第7艦隊
 米海軍のイージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」が二十一日、シンガポール沖でタンカーと衝突、十人が死傷者・行方不明となった。同艦は横須賀基地の所属。太平洋に展開する米第七艦隊では、三月に情報将校の贈収賄が発覚、六月には駆逐艦が民間船と衝突、さらにイージス艦「シャイロー」乗務員が逃亡するなど、事件が相次いでいる。海軍は二十三日、第七艦隊のアーコイン司令官を解任したが、厭戦気運のまん延は隠しようがない。

オスプレイが大分空港に緊急着陸
 米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが二十九日、大分空港の滑走路外に緊急着陸した。岩国基地(山口県岩国市)から普天間基地(沖縄県宜野湾市)に向かう途中で、エンジントラブルと思われる。在日米軍所属のオスプレイは、昨年十二月に沖縄県名護市での墜落、今年六月の同伊江島、鹿児島県奄美空港への緊急着陸、八月にもオーストラリア沖で墜落事故を起こしている。相次ぐ事故にもかかわらず、米軍からの連絡は一切なく、日米地位協定の正体が露呈した。


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