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労働新聞 2017年7月15日号 トピックス

世界のできごと

(6月30日〜7月9日)

G20、米国の威信低下いっそう
 ドイツのハンブルクで開催された二十カ国・地域(G20)首脳会議は七月八日、閉幕した。「米国第一」を掲げるトランプ政権発足後初となる会議。首脳宣言では「保護貿易主義との闘い」と明記されたものの、トランプ政権の意向を受けて、「不公正な貿易慣行」に対する「対抗措置」を容認した。議長国であるドイツが最大の焦点と位置付けていた地球温暖化対策でも、中ロなど多くの国がパリ協定を順守する立場を表明、事実上米国抜きの合意に着地した。米日が策動した、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への非難決議は、中国、ロシアだけでなく、ドイツも反対して盛り込まれなかった。「一対十九」と言われるほど、米国の孤立と影響力低下があらわとなった。

朝鮮がICBM試射
 国営朝鮮中央通信は五日、同国が大型核弾頭が搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験が成功したと発表した。ティラーソン米国務長官は「経済的または軍事的な支援を行う国、あるいは国連制裁の実施を怠る国はいずれも危険な政権を支援し、ほう助している」と朝鮮への軍事的圧力に反対する中国やロシアをけん制した。しかし、モスクワを訪問した中国の習近平国家主席とプーチン大統領は朝鮮半島問題に絞った「共同声明」を発表、核実験とミサイル試射の一時停止を求めると同時に、米韓にも大規模な合同軍事演習の一時停止や、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の即時停止を求めた。「(朝鮮への)いかなる軍事行動も想像を絶する規模での悲劇」(マティス米国防長官)と泣き言を言うなど、米国による対朝鮮圧力の効力はいっそう失われつつある。

米韓首脳会談。違い明らかに
 就任後初の外遊として米国を訪れた韓国の文在寅大統領は六月三十日、トランプ大統領との初の首脳会談を行った。両首脳は、米韓同盟を「多元的、包括的同盟」へ発展させることで合意、外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)の定例開催も決定した。しかし、朝鮮の核・ミサイル問題では、共同声明で、朝鮮に対する「最大の圧力」と「対話」が併記され、文大統領は南北首脳会談の開催に向けた意欲を改めて示した。


「勝利宣言」も、泥沼化するIS掃討
 イラク政府は七月九日、同国北部で進めていた「イスラム国」(IS)からのモスル奪還作戦の勝利を宣言した。モスルでは三年前にISが国家樹立を宣言、イラクとシリアで一時広範な領土を制圧していた。激しい市街戦で、数千人の住民が命を失い、インフラ回復だけでも十億ドル(約千百億円)以上を要するとされる。「勝利宣言」にも関わらず、散発的な戦闘は続き、安定とは程遠い状況。一方、フィリピン・ミンダナオ島ではISの影響下にあるグループが伸長するなど、米国を中心としたIS掃討作戦は世界中で泥沼化している。

人民のたたかい

(6月30日〜7月9日)


  ドイツのハンブルクで七月六〜八日にかけて、G20首脳会議への抗議行動が展開され、約一万二千人が参加した。参加者は「反資本主義」「格差是正」を叫び、デモ行進した。
 英国ロンドンで一日、メイ政権の緊縮政策に反対し、退陣を求める集会とデモが行われ約十万人が参加した。同日にはロンドンのヒースロー空港で働く英国航空の客室乗務員がストに突入、労働条件の改善を強く求めた。
 韓国ソウルで六月三十日、民主労総による最賃引き上げ、非正規職撤廃などを求めるゼネスト大会が行われた。集会には、 民主労総傘下組合員、 学生、市民など約五万人が結集した。文政権は三年以内に最賃引き上げることを公約しているが、参加者は「遅すぎる」と訴えた。ゼネストに突入した労働者は合計約六万人に達する。

日本のできごと

(6月30日〜7月9日)

都議選で自民大敗、政権に打撃
 東京都議選が七月二日、投開票され、自民党が改選前五十七議席から二十三議席と惨敗した。小池都知事与党の「都民ファーストの会」は六議席から五十五議席(追加公認を含む)へと躍進。公明党は二十三議席。民進党は二議席減の五議席で、共産党は二議席増の十九議席など。争点は終始あいまいであったが、生活と営業が苦境になるなか、有権者は安倍政権に厳しい審判を下した。「都民ファースト」は受け皿になったが、大銀行の手先で、安倍政権の補完勢力にすぎない。それでも、安倍政権は大打撃を受けて求心力は低下、衆議院の解散・総選挙時期も影響を受け、来春までにもくろむ憲法改悪の発議も困難となった。

政権支持率下落、批判顕著に
 マスコミ各社の世論調査結果が九日までに出揃い、政権支持の急落を印象づけた。支持・不支持は、三一・九%対四九・二%(日本テレビ)、三三%対四七%(朝日新聞)、三五%対四八%(NHK)など、いずれも支持率が急落、不支持が八〜一三ポイント以上増えて逆転した。安倍首相は「深く反省」などと言うが、都議選後も稲田防衛相の九州豪雨対策などへの批判が高まっている。八月の内閣改造で支持率回復を狙うが、成功するあてはない。

日欧EPA大枠合意、乳製品に被害
 日本と欧州連合(EU)は六日、経済連携協定(EPA)交渉で大枠合意した。発効すれば、国内総生産(GDP)で世界の約三割を占める経済圏となる。合意は、EUが日本製乗用車への関税(現行一〇%)を八年目に撤廃、自動車部品では貿易額の九二・一%分の関税を即時撤廃する。日本は、EU産チーズの関税を十六年目に撤廃するなど、環太平洋経済連携協定(TPP)以上の市場開放となる。日欧は、ドイツでの二十カ国・地域(G20)首脳会議を前に合意を急いだが、酪農家などを犠牲にするものだ。

日米首脳会談、要求激化は必至
 安倍首相は八日、ドイツ・ハンブルクでトランプ米大統領と会談した。トランプ大統領は、対日貿易赤字と市場アクセスの改善を初めて要求したとされる。トランプ政権は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への対策で「矢面」に立つ日本に「配慮」し、自由貿易協定(FTA)交渉を求めなかった。だが、会談前の六日、米豚肉生産者協議会(NPPC)が「日本とのFTAを求める」と緊急声明を出したように、米国内での政権への要求は激化している。自動車や農産物など、今後の対日要求の激化は必至の情勢だ。

日中首脳会談、溝は埋まらず
 安倍首相と習近平・中国国家主席が八日、ハンブルクで会談した。両者は、関係改善に向けて首脳間の対話を強化する方針で一致した。首相は、中国の「一帯一路」構想への協力を打ち出すなどで、関係改善を政権浮揚に使おうとし、秋に党大会を控える中国も「友好」を演出した。だが、歴史問題や朝鮮への態度、日本が対台湾窓口機関の名称を変更した問題などが山積している。日中国交正常化四十五周年にもかかわらず、習主席は「早期開催」を確認した日中韓首脳会談による訪日時期を明言しないなど、安倍政権による関係改善は「限界付き」だ。

日ロ、経済活動は具体策に踏み込めず
 安倍首相とプーチン・ロシア大統領が七日、ハンブルクで会談した。両首脳は、北方領土での共同経済活動の具体化を急ぐことで一致した。また、安倍首相の九月訪ロでも合意した。ロシアは日本の投資を引き込む狙いで北方領土を「経済特区」にするとしたが、日本は警察権などの主権適用で譲ることは容易ではなく、共同経済活動の具体策での合意は難題だ。

九州豪雨で大きな被害
 九州北部を六日、記録的な豪雨が襲い、死者二十五人、四十五万人以上が一時避難する大惨事となった。被災地周辺は林業が盛んな地域だが、大量のスギなどが橋梁に引っかかるなどで河川が氾濫(はんらん)した。今回の被害は、短期的豪雨だけでなく、一九九一年の台風十九号による山林被害からの復旧が遅れていることも大きな要因の一つ。五年前にも豪雨被害があったばかりで、山林の荒廃を放置した政府、自治体の責任は重大である。


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