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労働新聞 2017年7月5日号 トピックス

世界のできごと

(6月20日〜6月29日)

米中安保対話、早くも矛盾激化
 米中両政府は六月二十一日、ワシントンで初の外交・安全保障対話を開いた。米国は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核・ミサイル問題に関する中国の態度に「うまくいっていない」と不満を表明、対応強化を迫った。中国は批判をかわし、「朝鮮企業との取引中止」にも言及しなかった。南シナ海問題でも、一致できなかった。結果、共同記者会見さえ開かれず、共同文書も見送られた。会議後、米国は人身売買に関する年次報告書で中国の評価を引き下げ、活動家への対応も非難するなど、「人権」を口実とした圧力を強めている。四月の首脳会談では、対朝鮮での「協力」と引き換えに経済要求を抑えたが、つかの間の「協調」は早くも破綻した格好。七月にも首脳会談が予定されるが、貿易不均衡是正のための「百日計画」の推移と併せ、米中関係は厳しさを増してる。

米印首脳会談、溝を残す
 訪米したモディ・インド首相とトランプ大統領は二十六日、初会談を行った。共同声明では「主権や領土保全、法の秩序を尊重すべき」との名目で、名指し避けながら、インドとパキスタンが係争するカシミール地方に関わる、中国が推進する「一帯一路」(海と陸のシルクロード)への懸念を示した。また、インド洋での海上共同演習や貿易・投資の強化でも合意した。インドを対中包囲網に取り込みたい米国だが、両国間で懸案となっている技術者の渡米ビザ厳格化問題は言及されず、「協調」演出に腐心した結果だ。

米最高裁判断根拠に新たな規制策
 米最高裁は二十六日、イラン、シリアなどイスラム六カ国からの入国を制限し、難民受け入れを停止する大統領令の差し止め処分を解除すると発表した。最高裁は「米国や米国人と誠実な関係」があれば対象外にするというあいまいな条件をつけ、最終判断は十月に下されるとした。トランプ大統領は「明確な勝利」と強調、全世界で非難され、連邦地裁でも差し止められた大統領令を一部復活させるものとなった。また、ケリー国土安全保障長官は二十八日、米国に向かう全ての国際線で荷物検査の強化を求めると発表した。「反テロ」を口実とする規制強化に、混乱と内外の反発激化は必至だ。


EU首脳会議、英離脱に厳しい意見
 欧州連合(EU)首脳会議が二十二、二十三日、ベルギーのブリュッセルで行われた。メイ英首相は、自国在住のEU市民の権利保護を提案、EU離脱交渉で歩み寄る姿勢を示し、早期に自由貿易協定(FTA)協議に移行させることを狙った。だが、総選挙で保守党が敗れるなど政権基盤は弱体化。英国に求めるとされる最大六百億ユーロ(約七・四兆円)の清算金の扱いなど、各国は「道のりは長い」(メルケル独首相)と「様子見」を決め込んだ。一方、会議では「欧州防衛基金」の創設などによる域内防衛協力を決めた。英離脱をテコに、欧州は独仏を中心に結束を強めようとしている。

人民のたたかい

(6月20日〜6月29日)


 韓国のソウルで二十四日、民主労総などでつくる「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)韓国配備阻止全国行動」がデモを行い、米大使館を一時包囲した。
 韓国のソウルで二十三日、大学の清掃員や警備員でつくる労組・公共運輸労組ソウル京仁公共サービス支部が、高麗大など十大学で集会を行い、大幅賃上げを求めた。二十九日には、学校給食調理員らの労組、約一万五千人がストライキを行った。
 イランの約九百都市で二十三日、数十万人がパレスチナ人への支持を訴えて集会とデモを行った。
 ペルーのクスコ地方で二十二日、教職員労組が労働条件の改善を求めてストライキに入った。

日本のできごと

(6月20日〜6月29日)

加計疑惑めぐり安倍首相が暴論
 安倍首相の友人が理事長の加計学園が獣医学部を新設する問題で、文科省は六月二十日、萩生田官房副長官が同省高等教育局長に対して昨年十月に首相の意向を伝えたとするメモを新たに発表した。これに対し安倍首相は、野党が求める臨時国会の召集に応じず、二十四日には講演で「一校に限定して特区を認めた結果として疑念を招いた。二校でも三校でも、意欲のあるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく」などと子供の癇癪(かんしゃく)のような暴論で疑惑をごまかそうと試みた。加計学園をめぐっては自民党の下村元文科相の政治団体が同学園から計二百万円のパーティー券購入を受けながら政治資金収支報告書に記載していなかった疑惑も浮上、安倍政権はいよいよ追い詰められている。

稲田防衛相が自衛隊を政治利用
 稲田防衛相は二十七日、東京都板橋区で行った都議会選挙の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と発言した。自衛隊法は「軍事組織の政治的中立の維持」のため、防衛省職員、自衛隊員の政治的行為を制限し、政令で地方公共団体の議会議員選挙で特定の候補者を支持することを禁じている。稲田氏は後に発言を撤回したが、公選法違反の既遂(きすい)は明白。「自衛隊を私物化し政治利用している」「大臣は既遂でも罪に問われず、国民は未遂よりもはるかに手前の共謀で逮捕されるのか」などの国民の怒りは当然だ。

慰霊の日、知事が強く政府批判
 沖縄戦から七十二年となる「慰霊の日」の二十三日、県と県議会が主催する沖縄全戦没者追悼式が安倍首相や関係閣僚も出席し開かれた。翁長知事は、昨年の元海兵隊員による女性暴行殺害事件、垂直離着陸輸送機オスプレイの墜落、嘉手納基地への相次ぐ外来機の飛来などを挙げ、「基地負担の軽減とは逆行している」と批判、名護市辺野古の新基地建設についてあらためて「容認できない」と表明した。また安倍首相が登壇すると会場から多くの抗議ヤジが巻き起こり、海外ではメディアが大々的に報じた。

子供の貧困、依然として高水準
 厚労省が二十七日発表した二〇一六年国民生活基礎調査で、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす十七歳以下の子供の割合を示す「子供の貧困率」が、一五年時点で一三・九%(七人に一人)だったことが分かった。過去最悪だった前回調査(一二年)から二・四ポイント改善した。改善は十二年ぶりだが、先進国の中では依然として高水準で、特に大人一人で子供を育てる世帯の貧困率が五〇・八%と半数を超え、前回調査に比べ「借金がある」「貯蓄がない」と答えた割合がいずれも増えるなど、より厳しい状況に置かれている実態の一端が示された。

小池都知事、豊洲移転を表明
 東京都築地市場の豊洲新市場への移転問題で、小池都知事は二十日、市場を豊洲に移転するとともに、築地市場の市場としての機能も残して再開発する基本方針を発表した。豊洲市場は冷凍冷蔵・加工機能を強化した総合物流拠点とし、築地市場は五年後をめどに再開発し「食のテーマパーク」機能を有する新たな拠点にする、などの内容。しかし豊洲市場の土壌汚染問題は解決には程遠く、築地市場の再開発も現時点では空約束に近い。知事の方針は既定路線の追認にほかならず、都議選対策でもある。仲卸業者や都民の求めていた築地市場の再整備の願いを踏みにじるものだ。

タカタ破綻、雇用不安拡大も
 欠陥エアバッグの大規模リコール問題で経営悪化していたタカタは二十六日、民事再生法の適用を東京地裁に申請した。負債総額は自動車メーカーの肩代わり分を含めると一兆七千億円にのぼり、製造業では過去最悪。同社と取引がある下請け企業は全国に約五百七十社(帝国データバンク)あり、従業員数は計六万人近くに上る。製造拠点が点在する滋賀県やタカタ九州のある佐賀県を中心とした連鎖倒産など地域の雇用不安拡大が危ぐされ、一部金融機関は対策に乗り出している。経営破綻の原因は、国際競争激化の下で、経営陣の安全対策やコンプライアンス(法令順守)意識の欠如にあり、労働者や下請けに犠牲がしわ寄せされることは許されない。


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