労働新聞 2003年4月25日号 トピックス

世界のできごと

(4月10日〜4月19日)

米英の占領政策に早くも難題
 米英の無法なイラク侵略による被害が、徐々に明らかになっている。バグダッド市内だけでも爆撃などで7000人が死傷、電気・水道などがストップし略奪が横行するなど、イラク国民の生活は深刻さを増している。こうした中で4月15日、南部のナシリヤでイラク暫定統治機構(IIA)発足に向けた準備会合が行われた。しかしこれは、米中央軍司令官の招待で開かれたもので、徹頭徹尾米国防総省の復興人道支援室(ORHA)が取り仕切った、かいらい政権づくりのためのもの。このため、イスラム教シーア派の最大組織、イスラム革命最高評議会(SCIRI)などは参加をボイコットした。一方、米国はイラク攻撃に批判的であったシリアを「化学兵器を保有」などと非難、制裁を示唆している。サウジアラビアなどイラク周辺8カ国は18日、米英軍の早期撤退を求め、シリアへの圧力を批判する声明を採択した。イラク人民の反米闘争も続いている。ナシリヤでは15日、準備会議に抗議し、2万人がデモ。北部のモスルでは、新任の市長による米軍支持演説に抗議して市民がデモ、米軍の銃撃で10人が死亡した。バグダッドでも、18日に数万人がデモした。軍事的勝利を得た米国だが、軍事力による中東支配のもくろみは、早くも行き詰まりを見せている。

「イラク復興」めぐっても米国が孤立
 米ワシントンで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議は12日、共同声明を発表し閉幕した。宣言は「国際的枠組みの下でのイラク復興支援」で合意したが、債務削減など具体案で対立、戦争の「早期終結」にもかかわらず先行きが見えない経済ともども、実効性ある合意はできなかった。米国は、イラクへの経済制裁解除を国連に求めるなど、露骨な占領政策を強めている。これに対し、欧州連合(EU)は17日、「国連主導の復興」を確認、米国を牽制した。「イラク復興」での主導性確保を狙う米国だが、国際的孤立は深まっている。

欧州連合、25カ国に拡大へ
 EUは16日、ギリシアのアテネで首脳会議を行い、ポーランドなど中東欧諸国10カ国の04年5月の新規加盟を決めた。発表された「アテネ宣言」では、EUレベルでの外交強化が盛り込まれた。イラク問題では、対応をめぐり内部に違いが現れた欧州だが、「国連主導の復興」で結束を再構築した。拡大EUの形成は、欧州の結束を強め、イラク戦争で表面化した米欧同盟の亀裂をさらに促進させる要因となろう。

世銀、「貧困半減」掲げるが…
 世界銀行は13日、報告書「世界開発指標2003」を発表した。それによると、一日1ドル以下で生活する貧困層は、90年代に東欧、中央アジア、アフリカなどで増大、東欧・中央アジアでは600万人から2400万人に急増した。この傾向は続き、世界の貧困層は、99年の3億1500万人から、2015年には4億400万人に増加するという。世銀はこの貧困層を「半減」させる方法として、富裕国による対外援助増大などを提唱している。だが、極度の貧困の一方で、世界の最富裕層200人は毎秒500ドルももうけている。不平等の原因は米主導のグローバリズムであり、この下では格差はとめどなく拡大、各種の争乱も避けがたい。


人民のたたかい

(4月10日〜4月19日)

 イラク戦争に反対する全世界統一の行動が12日、各国で行われた。
 米ワシントンでは数千人が「米国はイラクから立ち去れ」とデモした。英ロンドンでは10万人が反戦デモを行い、首相官邸に対して抗議の意思を示した。イタリアでは50万人、スペインでも50万人が集会とデモを行った。メキシコでも、10万人が行動した。







日本のできごと

(4月10日〜4月19日)

米国がイラク復興支援を要請
 塩川財務相はワシントンで4月11日、米スノー財務長官と会談した。この席で米側は、イラクの「戦後復興」のための資金協力を日本に求めた。また、イラクの対外債務問題についてラーソン米国務次官は17日、「非常に大規模な軽減措置が必要だ」と述べ、日本を含む各債権国が債務削減や返済繰り延べに応じるように求めた。米国はイラク「復興」にかかわる多額の財政負担を、日本に背負わせようとしている。

国連の認知ないORHAへ派遣決定
 政府は18日、イラクを占領統治する米国の復興人道支援室(ORHA)へ文民を派遣することを決定した。ORHAは米国防総省の出先機関で、国連の認知もなく、「戦後復興は国連中心で」という欧州などの意見にも逆行した決定だ。また、ORHAへの要員派遣は、「交戦行為には占領行政も含まれる」との過去の政府見解に抵触しており、憲法違反でもある。自民党の野中元幹事長ですら「法律的な根拠もなしに派遣するのは理解できない」と批判しているが、民主党はいち早く派遣を認め、米国を支える態度を鮮明にした。わが国の対米追随ぶりは際立っており、国際的に孤立する道を突き進んでいる。

有事体制への動員狙う国民保護法
 衆院有事法制特別委員会で18日、「有事の際に国民の生命や財産を守る」とした国民保護法制が提示された。有事に県に設置される対策本部への自衛官派遣、土地、家屋などの強制使用、物資の強制収用、措置命令に従わなかった者への罰則などが柱。「国民保護」とはデタラメで、審議中の個人情報保護法案と併せて、国民を管理統制するための法律にほかならない。米国が引き起こそうとしている対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)有事に、日米共同で対応するための戦時体制づくりの一環であり、許してはならない。

統一地方選挙、前半戦終了
 10都道県知事選、44道府県議選、北九州市を除く政令市の市議選などの統一地方選前半戦が13日に投開票された。投票率の低下は特徴的で、知事選の投票率は4.15ポイント低下の52.63%、道県議選でも35道府県で投票率が過去最低を記録、千葉県議選は史上最低の40.24%であった。都道県知事選では相乗り候補が減少。政党の存在感がなくなる中で無所属、無党派の候補者が増加した。共産党は県議選で3分の1近くの議席を失い、惨敗した。(3面参照)

遺族年金に課税へ、高齢者に増税
 政府税制調査会基礎問題小委員会は18日、夫を亡くした妻などが受け取る遺族年金への課税の検討を始めた。6月にまとめる中期的な税制の将来像を示す「中期答申」に盛り込む方針。現在、約585人に年間約6兆円を支給しているが、財務省は公的年金の2つの控除を全廃することと併せて1兆数千億円の増税をもくろむ。高齢者の負担増に、反発は必至だ。小泉改革政治の下、高齢者いじめの政治がいっそう進んでいる。

原爆症認定求め集団提訴
 札幌、名古屋、長崎市の被爆者が17日、原爆症認定申請を却下されたのは不当だとして、国に却下処分の取り消しなどを求めて提訴した。原爆症認定をめぐる初の集団訴訟となる。6月までに東京、千葉、広島、大阪でも訴訟が予定されている。国は原爆症認定に消極的な姿勢をとり続けており、被爆者手帳を持つ全国の約28万6000人のうち、原爆症に認定されたのはわずか0.76%の2169人に過ぎない。病気や後遺症で苦しんできた被爆者の平均年齢はすでに70歳を超えており、国の切り捨て行政への怒りは深い。

西友、正社員4割削減へ
 西友が2006年2月末までに正社員の4割にあたる2500人を削減することが、18日に発表された。西友は米国のウォルマート・ストアーズに買収され、新情報システム導入、パート・アルバイト導入による人件費の削減など、米国流の徹底した合理化を進めている。不良債権処理が進む中で外資に乗っ取られた日本企業では、容赦ない合理化攻撃が労働者にかけられている。


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