労働新聞 2003年3月5日号 トピックス

世界のできごと

(2月20日〜2月28日)

内米英、苦境の中新決議の用意進める
 米英両国とスペインは2月24日、イラクが国連決議に違反しているとの新決議案を国連安保理の非公式会合に提示した。この決議案は、イラクが「引き続き(「大量破壊兵器」の廃棄について)義務に違反した場合重大な結果に直面する」「(イラクは)最後の機会を逸した」と明記、武力行使につなげるもの。一方、「査察の強化」を唱えているフランス、ロシア、ドイツの三カ国は「イラクが大量破壊兵器を所有している証拠はない」として、「査察の継続」を主張する声明を発表、中国も支持を表明した。また、フランス・アフリカ首脳会議でも、米国の独走に批判の声が相次いだ。非公式会合では、「戦争は不可避ではない」(ノルウェー代表)とイラク戦争に反対する国が圧倒的であり、米英両国の新決議案に支持を表明したのは日本とオーストラリアの二カ国だけ。米英は、新決議採択により「国際社会の総意」としてイラクを攻撃したいところだが、そのもくろみは崩れている。

非同盟諸国首脳会議、米支配に抵抗
 マレーシアのクアラルンプールで開かれていた第13回非同盟諸国首脳会議は25日、イラク問題の平和的解決などを盛り込んだ声明を発表して閉幕した。参加した各国首脳も「イラクの将来はイラク国民が決めるべき」(イラン)と、米英による攻撃に反対の姿勢を示していた。またマレーシアのマハティール首相も「どの国も世界の警察官になることは許されない」「事実上、世界支配の戦争だ」と述べ、米国を厳しく批判した。また、米主導のグローバル経済の問題についても討議が行われた。ここでは、「われわれは、民族的誇りを押さえ込んで、豊かな国の支持や指導の下に身を置かなければならない」(マレーシア)と指摘した上で、非同盟諸国間での経済協力(南南協力)強化について宣言を行った。今回の会議には百十二カ国が参加、ほとんどの国が米国の「一極支配」に異を唱え、米国支配に反対する声が世界の大勢を占めていることを示した。

韓国新大統領、「平和繁栄政策」提唱
 韓国の盧武鉉新大統領の就任式が25日、ソウルで行われた。就任演説を行った盧大統領は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係について、金大中・前政権が掲げてきた「太陽政策」の原則を継承・発展させた「平和繁栄政策」を打ち出し、対話を通じた解決、南北当事者を中心とした協力などを強調した。また、北東アジアの連携についても「平和の共同体」発展を訴えた。盧大統領は、就任式に参加した各国首脳とも会談した。パウエル米国務長官との会談では、北朝鮮の「核開発問題」について、国連安保理など多国間での協議を主張する米側に対し、盧大統領はあくまで、対話による解決と早期の米朝対話の再開を主張した。盧新政権の誕生は、米国の対北朝鮮敵視政策には組みせず、対話を通じて民族統一の道を歩もうという韓国民の強い願いが反映したものだ。

人民のたたかい

(2月20日〜2月28日)

 マレーシアのクアラルンプールで23日、同地で開かれている非同盟諸国首脳会議に合わせてイラク戦争反対、パレスチナ救援を訴える平和集会が開かれ十数万人が参加した。この集会には同国のマハティール首相も参加、「戦争反対、平和を守ろう」と呼びかけた。
 メキシコで20日、スペインのアスナール首相の訪問に反対する集会が開かれ約100人が参加した。集会参加者は「アスナールは帰れ」と訴えた。スペインは対イラク問題で米英追随の姿勢を示し、旧宗主国としてメキシコに対し同調を求める圧力をかけている。
 ドイツ全土で23日、対イラク戦争に反対して集会やデモが行われ、2万人以上が参加した。ケルンでは5.5キロの人間の鎖をつくる行動が行われ、約1万人が参加した。



日本のできごと

(2月20日〜2月28日)

政府邦人待避で自衛艦派遣を検討
 政府は2月20日、米英軍などがイラクへの武力行使に踏み切る場合、周辺国の在留邦人の緊急待避を理由に、インド洋に派遣されている海上自衛隊艦船をペルシャ湾、クウェート沖に派遣する方向で検討に入った。邦人待避を口実とする自衛隊の出動は、これまで航空機によるものが二回あったが、いずれも待避行動にいたらずそのまま帰還している。今回は、初めて艦艇を使用することが検討される。ペルシャ湾に派遣されている海自艦隊は、テロ対策特措法による「基本計画」で活動範囲が規定されているが、これには、すでに「ペルシャ湾を含むインド洋」と記されている。アフガン支援に限定するといわれてきたイージス艦などの派遣が、当初から対イラク戦争を想定したものであったことが、いっそう明らかとなった。

パウエル・小泉、対イラクで連携確認
 来日したパウエル米国務長官と小泉首相が22日、会談した。小泉は、イラク、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)問題で「日米同盟が様々な意味で重要」と強調。対北朝鮮での米国の支援を前提に、米がイラクで武力行使に踏み切れば、支持するという姿勢をいち早く打ち出した。イラク戦後復興なるものも「日本の得意分野だ」などと、積極的に参入する姿勢を示した。(社説参照)

廬大統領就任後初の日韓首脳会談
 ソウルの青瓦台で25日、小泉首相と廬武鉉大統領が会談、小泉は北朝鮮の核問題に対する対応で、日米韓三国の連携を強調。米国のお先棒を担ぎ、韓国新政権の対北朝鮮政策を米戦略の枠内に組み込もうとの発言を行った。しかし廬大統領は、平和的解決と「積極的寄与で役割を担う」ことを強調。南北関係を自主的に解決していく姿勢を鮮明にさせた。国民の声に押され「太陽政策継続」を掲げる廬大統領の態度は、小泉の対米従属、売国奴ぶりと、際だった差を見せている。

大島農相疑惑深まる
 大島農相に対する政治資金規制法違反疑惑が深まっている。大島農相は昨年来公共工事をめぐる前政務秘書官の口利き疑惑などを追及されてきたが、今回は会社社長からの献金を政治資金収支報告書に記載していなかったというもの。26日には、この問題をめぐる農相の国会答弁用のメモを、衆院法制局が作成していたことも暴露され、「三権分立に反する行為」との新たな批判も高まっている。農相当人は、相変わらず秘書がやったことなどと言い逃れに終始しているが、国民の政治、政治家不信はきわまっている。

03年都道府県予算、合併支援のみ厚く
 全国47都道府県の03年度当初予算案が20日、出そろった。一般会計総額は48兆7302億円、今年度当初比1.9%減。2年連続の対前年度マイナスで、厳しい緊縮型予算となっている。不況による大幅な税収減と国の補助金、交付税削減の下で、地方債の新規発行額は過去最大の7兆2846億円となり、03三年度末の地方債残高は過去最大の74兆5309億円に達する。支出は、単独事業が9.5%減など公共事業削減、行政サービス削減、合理化案などが軒並み。一方、合併特例法の期限を05年3月に控え、国の指示と圧力の下で自治体合併支援に絡む予算(交付金や貸付金)が、ほぼすべての道府県で計上され、合併前の協議会ができた段階で、数億円の「祝い金」を出す県まで現れた。90年代に、国の指導の下、単独事業を拡大し莫大な借金を抱えた地方財政だが、相変わらず自主性のない財政運営が押しつけられている。これが、政府のいう「地方分権」の実態である。

ミサイル口実に有事法急ぐ与党と民主
 
24日に行われた北朝鮮の地対艦ミサイル発射訓練を口実に、与党や民主党内で有事関連法案の整備を急ぐべきとの声が挙げられている。ミサイル発射は定期的な軍事訓練の一環で、北朝鮮の演習海域で行われ、事前通告もされたもの。しかし、政府・与党はこれにつけ込み、有事法制定に向けた世論操作を画策している。一方、許し難いのは野党・民主党で、野田国対委員長は記者会見で「わが国有事について、緊張感を持って早急に考えないといけない」と述べ、有事関連法案審議に前向きな考えを示している。


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