971205 社説


 新たな飛躍の転換点となった

 国民連合第5回全国総会


 十一月二十二〜二十三日、「自主・平和・民主のための広範な国民連合」の第五回全国総会が、福岡市で開催された。
 総会には、地元福岡県を中心に北海道から沖縄まで、全国各地から四百人を超える代議員、オブザーバーが出席した。
 山一証券の経営破たんが報じられるなか開会された総会は、参加者に内外の危機の深まりと重大な情勢の到来を実感させるとともに、国民連合が果たすべき役割、大きな可能性についての確信を呼び起こし、飛躍をかけた新たな方針と役員体制を決定した。
 国民連合結成から五年、新たな飛躍の転換点となる総会となった。
 われわれは、全国代表世話人をはじめ開催地・福岡県実行委員会の皆さん、国民連合に結集されている各界の皆さんの奮闘に心から敬意を表する。いっそう共同し、この事業の飛躍のために誠心誠意努力する。

国民連合へ高まる期待

 総会は冒頭から、国民連合への国民各層の期待の高まりを感じさせるものとなった。
 麻生渡福岡県知事(メッセージ代読)、桑原敬一福岡市長(収入役が代理出席)の歓迎あいさつをはじめ、奥田八二(前福岡県知事)、本島等(前長崎市長)、合屋洋一(福岡県農協 青年 組織協議会委員長)、金城秀雄(前沖縄県人会会長)、牧園五郎次(全港湾労組博多支部委員長)の各氏から各界を代表して来賓のあいさつを受けた。
 また、全国農業者農政運動組織協議会、紀平悌子(日本婦人有権者同盟会長)、津和慶子(日本婦人会議議長)、中江要介(元駐中国大使)、宇都宮徳馬(宇都宮軍縮研究室)、宮城康博(沖縄名護・海上ヘリ基地建設反対協議会代表)、中谷健太郎(ふくろうの会・湯布院代表世話人)、村上守(自治労福岡県本部委員長)、長崎県平和・労働センター、さらに自民、民主、社民、社会大衆の各党衆参両院議員二十二人、沖縄県知事、沖縄市長、福岡県の二十四市町村長、八議員などからの祝電、メッセージが紹介された。
 こうした各界を網羅した有力な顔ぶれの来賓やメッセージ、福岡県教組の機関決定による動員など労働組合の多数参加、首長の参加などは、各社会層への広がりという点でも、数の面でも、結成以来最大のものとなった。これは、国民連合がすでに社会的に市民権を獲得し、共感を得ていることを示すものである。奥田前福岡県知事が「情勢にこたえられるのは、国民連合以外ない。全国に訴えられるような結論を決めていただきたい」と期待を表明されたことも、象徴的だった。
 記念講演として行われた親泊康晴那覇市長の「沖縄からの訴え」は、感動を持って受け止められ、今総会を意義深いものにした。
 加藤毅事務局長からの総会議案の提案に続いて、この一年の闘いの総括から討論が始まった。
 「日米基軸を転換し、アジアの共生へ」の課題では、日中友好の関係確立にむけて経済界、労働界、一部の保守政治家をふくむ広範な共同の実現、新ガイドラインに反対する世論づくりの闘い。「沖縄と全国の米軍基地の縮小・撤去」では、「沖縄の国際都市形成構想・基地返還アクションプログラム支持」の世論づくり、米 軍 用 地 特 措 法 改 悪 に 反対する緊急の闘い。「国民生活を守る」課題では、消費税率引き上げ中止の国民運動への参加、介護保険法に反対する闘い、大店法の規制緩和に反対して中小商工業者と連携する闘い――などが重要な経験として指摘され、共同行動の組織者として役割を果たし、各層の連携を広げたことが報告された。
 この一年の特筆すべき重要な成果は、組織面で停滞をうち破って、約六百人の賛同人を新たに迎えたことである。多くの地方議員、労組役員、学者が国民連合の事業に賛同しただけでなく、中小商工業者、農民、宗教者、女性運動、青年など広範な層、分野の人びとが参加し、組織の構成でも国民連合らしい条件が整った。
 さらに北海道、四国の愛媛で、新たな県組織が結成され、全国化にむけて前進した。
 この一年間の闘いと成果は、全国代表世話人をはじめ国民連合の担い手の人びとに確信を深めさせるとともに、今総会に表れたように国民連合への期待の高まりを呼び起こしている。

活発な討論で意欲的な方針を確立

 今総会のもう一つの特徴は、情勢、課題、組織方針について、かつてなく活発な討議が繰り広げられたことである。
 十一月に入って相次いだ金融機関の経営破たん、経済環境の急速な悪化など、情勢はそれ以前とは違った局面に入ったこと、そうした中での国民各層の生活諸条件の悪化、とりわけ東北の専業農家の実態がリアルに報告され、議案が補足された。
 また、橋本政権による「改革」政治の具体化は、保守層内部の矛盾を激化させ、自民党の支持基盤だった社会層を離反させ、行動に立ち上がらせていると指摘し、「この状況は、労働者、農林漁民、中小商工業者、市民などの国民各層が連合する好機」と強調された。
 こうした情勢認識を前提に、(1)日米基軸を転換し、アジアの共生へ(2)全土の米軍基地化反対、沖縄と全国の米軍基地の縮小・撤去、(3)弱肉強食の「改革」に反対し、国民の生活と営業を守る、の三点を国民運動の課題の柱として確認した。
 重要だと思われるのは、激しく変化する情勢に対処し、実際政治に影響を与えていく必要さが強調され、「敵に恐れられ、国民に頼りになる強大な国民連合を!」(槇枝元文全国代表世話人)が、総会の合い言葉になったことである。
 決議では、「国民各層の連合による全国組織の形成」と大胆に各層の連合を進めること、四千人組織の実現、とりわけ正義感にあふれ活力に満ちた各層の青年の獲得が確認された。
 また、自治体における闘いが重要になるとして、国民連合に賛同した地方議員の全国的な経験交流、ネットワークの形成も確認された。
 総会で採択された新たな方針は、適切で、新たな飛躍を実現するにふさわしい意欲的なものである。

飛躍が可能な情勢

 第五回全国総会の成功は、全国代表世話人をはじめ全国各地の代議員、オブザーバーに新たな勇気を奮い起こさせたに違いない。いくらかの意見の違いはあっても、「国民連合の強化を通じて政治の変革を実現しよう」との相互信頼と団結は一段と固まった。
成功の背景には、なんといっても変化の速い情勢がある。
 アジア通貨危機から始まり、世界を揺るがした香港発の世界同時株安、わが国の金融機関の相次ぐ経営破たんなど、内外の危機の深まりは予想以上に速い。これから年末にかけて建設業、中小商工業者の倒産が相次ぎ、大失業時代が到来するのは不可避である。国民各層はますます活路を求め、闘わざるを得なくなっている。
 こうした情勢は、まさに国民各層によって国民連合が必要とされる情勢であり、したがって、短期間の間に広範な国民各層の連合した力を急速につくりあげ、政治に大きなインパクトを与えることが可能な情勢である。
 ひとにぎりの多国籍企業のための内外政治、橋本自民党政権の安保再定義路線と「改革」政治は、国の内外に矛盾を激化させ、行き詰まりを見せている。これに真正面から対抗し、自主・平和・民主の進路を高く掲げて、国民各層の連合を力強く促進しよう。
 今こそ、広範な国民連合が大胆に闘いを呼びかけ、大衆行動を強め、活路を求める国民大多数の希望として力強く登場すべき時である。 (関連記事)


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