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2024年4月16日

「紅麹(べにこうじ)問題」で
語られない真実

米国と安倍政権の「合作」が
国民を害した

 小林製薬(本社・大阪市)製の「紅麹サプリ」が原因で、判明しただけで死者5人、入院200人以上という大惨事となっている。被害はさらに拡大する見通しである。
 有害物質の混入を許した企業の責任は重大である。徹底的な真相究明と責任追及が不可欠である。
 肝心なのは、政治の責任である。
 問題の「紅麹サプリ」は、3分類ある「健康食品」のうちの一つの「機能性表示食品」である。こんにち、この市場は約6800億円規模にまで拡大している。
 政権に返り咲いた第2次安倍政権は2013年1月、規制改革会議(議長=岡・住友商事相談役)を復活させた。同会議は6月、「効能の表示を、一般の健康食品でも可能にする制度の創設」などを盛り込んだ答申を行った。
 この答申を受け、「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針、2013年6月)で、成長戦略として「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」が明記された。これに基づいて食品表示法が改悪され、15年に導入されたのが、機能性表示食品である。
 機能性表示食品は消費者庁への届出だけで、「コレステロール値を下げる」などの「機能性」を表示できる商品で、特定保健用食品(トクホ)のようなわずかな審査と許可さえも必要としない。企業によるずさんな製品管理を容認するに等しく、当初から危険性が指摘されてきた。
 だが、当時の安倍政権は「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」「規制改革こそ成長戦略の一丁目一番地」などと叫び、制度導入を強行した。企業のカネ儲(もう)け最優先で、「健康は自分で守る」という「自助論」「自己責任論」に基づくもので、国民の命と健康を守るべき国の責任を放棄するものである。
 岸田政権は機能性表示食品制度を廃止することを含め、健康食品に関する制度を全面的に見直さなければならない。
 指摘しなければならないのは、米国による対日要求である。
 国民皆保険制度がない米国では、「健康は自分で守る」という風潮が定着しており、サプリメントなどの健康食品は、適正製造規範(GMP)に準拠してさえいれば、食品医薬品局(FDA)への届出(販売開始後30日以内)だけで販売できる。
 ナウフーズ、ソーンリサーチなどの米サプリメーカーは日本市場への参入をもくろみ、1990年代から、米政府を通じ、あるいは直接に対日要求を続けていた。
 米国産業界の対日要求の集大成が、2001年から09年まで続いた「年次改革要望書」である。そこには郵政民営化や混合診療、労働者派遣制度などが盛り込まれており、「米国による日本改造計画」ともいうべき内容である。
 その「要望書」に当初から盛り込まれていたのが、「栄養補助食品の規制緩和」である。とくに08年の要望書では、「原料に特化した表示ができるように、食品における新たな規制分類を設ける。健康食品安全規制の策定において、透明性を向上する」ことを日本政府に求めている。「栄養補助食品」とされてはいるが、栄養補助食品制度は01年にすでに導入済みであり、ここで「原料に特化した表示」としているのは、後に導入される機能性表示食品を指すことは疑いない。
 09年に「年次改革要望書」が廃止された後も、米国の対日要求は続き、わが国医薬品・食品大企業も同様の要求を行ってきた。経団連も09年、「わが国の総合的な食料供給力強化に向けた提言」で、「機能性表示を認めることなどを早急に検討すべき」と求めている。
 政権に舞い戻った政府・自民党が「待っていました」とばかり、これに忠実に応えたことは、すでに述べた通りである。
 「紅麹サプリ」事件の元凶は、対米従属政治そのものにある。国民の命と健康を守ることは、対米従属政治を打ち破り、国民大多数のための政権を打ち立てることなしには実現できないことが示されている。(K)


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