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2024年3月15日号 1面

24春闘、政労使
協議の幻想を打ち破れ

ストライキで大幅
賃上げ勝ち取ろう

 春闘は3月13日の大手の集中回答日を経て、中小企業の労使交渉が本格化する。今春闘では、大手企業の間では集中回答日を待たず早期に妥結する動きも出てきているが、経営側に幻想を抱くわけにはいかない。
 春闘開始に先立つ1月に開かれた政府、経団連、連合による政労使会議で、岸田首相は「所得増と成長の好循環のためには、物価上昇を上回る構造的な賃上げを実現しなければならない」と述べ、「物価動向を重視し、去年を上回る水準の賃上げをお願いする。日本経済がデフレ完全脱却の道に向かうかの正念場だ」とした。
 連合の芳野会長は「賃上げは去年よりもことしのほうが重要という認識を政労使で確認できた。労働組合のない企業が非常に多い中で、賃上げを実効あるものにしていくためには、政労使会議などで発信するのは非常に効果的だ」と述べた。経団連の十倉会長は「経団連の方針にある官民連携でのデフレからの完全脱却の実現をぜひやろうと言った。とくに物価上昇はできるだけベースアップで対応しようと呼びかけている」と述べ、「一番大事なのは従業員の7割を占める中小企業で、地方を含めて価格転嫁が進まないと社会全体の賃上げは起こらない」として人件費などを含めた増加分の価格転嫁を進めていくことが重要だとした。
 今春闘を取り巻く環境としては、・大企業では過去最高水準の収益、中小企業もコロナ前の収益水準を回復しつつあるという企業収益、・タイト化する労働需給、・長期化するインフレなどがある。なかでも経営側が賃金改定に当たって最も重視した要素として、「業績」を挙げる企業が過去と同様に最も多いものの、人員確保や物価動向を重視する割合がはっきりと増加している。労働者の生活向上というより、人材確保のための賃上げや初任給の引き上げが各企業で目立っている。企業側の動機ははっきりしている。
 今春闘で、すべての労働者に大幅な賃上げが実現できるかのような世論操作にだまされてはならない。

実質賃金は減少の一途
 厚労省が2月発表した2023年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)では、1人あたり賃金は物価を考慮した実質で前年比2・5%減り、2年連続で減少した。マイナス幅は1・0%減だった22年からさらに広がった。20年を100とした指数で見ると97・1で、唯一100を下回った22年からさらに低下し、比較可能な1990年以降で最も低かった。名目賃金はすべての月で増えたが、実質賃金が減ったのは、消費者物価指数の上昇率が3・8%と42年ぶりの高水準だったことが影響している。実質賃金は22カ月連続で減少している。
 さらに経済協力開発機構(OECD)の統計では、日本の最低賃金の伸び率は22年12月から23年5月の率が名目6・5%増、実質で0・7%増だった。インフレに連動して最低賃金が伸びるポーランドは名目で34・2%増、米国、英国、ドイツは16〜28%伸びた。米国を除く29カ国の平均では名目29・0%増、実質2・3%増で、日本はいずれも平均の3分の1にも届いていない。日本の賃金の上昇率はOECD各国に比べても低いから、いくらかの賃上げが実現しても生活は苦しくなるばかりである。だから、政労使会議で経営者と手を携えて幾らかの賃上げを実現して生活を改善できるかのような連合指導部の態度は、労働者の利益を根本から裏切るものである。

企業所得は大幅に増加
 国民経済計算の「国民所得・国民可処分所得の分配」を見てみると、雇用者報酬のうち賃金・報酬は1994年を指数100として2022年は107・7であるのに対して、民間法人企業所得は162・5と法人企業所得が賃金・報酬を大幅に上回っている。毎年、企業の取り分が増えていっているのである。一方、個人企業所得は76・2と大幅に落ち込み、個人企業はさらに苦境に立たされている。また、可処分所得では、民間法人企業が158・8に対して家計(個人企業含む)が114・8と、ここでも民間法人企業がいかに内部留保など可処分所得を増やしたかが分かる。さらにこの間の旺盛な海外への直接投資で、海外直接投資からの所得が251・7と、これも大幅に増やしている。企業が記録的な利益を上げているのに日本国内の労働者は置き去りにされているのである。
 リーマン・ショック以降の世界的な長期の金融緩和であり余ったマネーが利ザヤ求めて株や証券をはじめ各種の金融商品に流れ込んで、最近の株高などにも表れているが、その裏で企業業績拡大のために低賃金をはじめ労働者への苛酷な収奪が強化されている。日本の賃金はこの30年間ほとんと上がらなかった。商業新聞では株高の文字が躍っているが、そうしたものとは無縁の、金融資産を持たない世帯(2人以上の世帯)が、24・7%(2023年)もいる。4世帯のうち1世帯は金融資産ゼロというのが実際である。

世界で広がるストライキ
 物価高騰などによる生活の困窮、技術革新の急速な進展による労働者への雇用不安、記録的な企業利益や経営者への巨額報酬に対する怒りなどを背景に、米欧では大規模なストライキが広がっている。米国では昨年、全米自動車労組(UAW)のビッグスリーでの一斉ストライキや医療業界での史上最大のストライキなど1000人以上が参加する大規模ストライキが33件闘われ、成果を勝ち取っている。英国をはじめ欧州各国でも交通・運輸、医療、教育をはじめ多くの産業分野で長期のストライキが繰り返し闘われている。
 昨年8月、そごう・西武労組が24時間ストライキを行ったが、「ストライキは労働者の当然の権利だ」として多くの人たちがストライキを支持、激励した。多くの国民が悪政のもとで生活が苦しくなっているから、労働者が切実な要求をかかげ経営側と断固として闘えば、支持を得られることはハッキリしている。中小も含めて春闘はこれからが本番である。
 また労働組合は自らの要求だけでなく、広く国民各層の要求を支持し、国民大多数のための政治を実現するために闘わなければならない。対米追随で戦争準備に狂奔し、いくらかの賃上げが実現しても防衛費増額のための増税が待ち構えている。岸田・自公政権に対する国民の怒りは頂点に達している。岸田政権の甘言に惑わされず、断固としたストライキで大幅賃上げ実現、要求貫徹まで闘おう。(H)

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