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2024年3月5日号 1面

武器輸出の全面解禁画策する自公政権

日本は「死の商人」の道進むな

 岸田政権は、昨年12月22日、武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」と運用指針を10年ぶりに改定した。武器輸出政策を大幅に転換し、ミサイルや弾薬など殺傷能力のある武器輸出の解禁に踏み切った。「武器輸出三原則」は閣議決定、運用指針は国家安全保障会議(NSC)で決定され、国会での議論はまったくなかった。
 安倍政権の下で2014年に「三原則」で一部容認するルールに転換したが、国際共同開発品を除き殺傷武器の輸出は禁じられてきた。22年末の岸田政権による安全保障関連3文書の改定で「防衛装備移転の推進」が掲げられ、自民、公明の実務者による原則非公開の協議を経て、改定がまとめられた。
 この改定で、日本で製造する「ライセンス生産品」について、米国などライセンス元の国へ完成品の輸出が容認されることになった。ライセンス生産品は現在、米国や英国など8カ国、79品目あり、迎撃ミサイルや大砲、弾薬などが含まれている。
 ライセンス元の国から第三国への輸出も解禁するが、殺傷武器に関しては戦闘中の国へは認めないとされた。政府は第三国輸出の場合、日本の事前同意を義務づけ、厳格に審査することで紛争国への流出の歯止めになるというが、輸出された後に適正に管理・処理されたかを確認できる仕組みはなく、輸出先は相手国任せになり、実際は歯止めにはならない。
 この武器輸出ルールの緩和を受けて、政府は、早速、自衛隊が保有する地上配備型の迎撃ミサイル「パトリオット」を米国へ輸出する方針を決めた。殺傷能力のある武器の完成品の輸出はこれが初めてで、実際には米国の在庫を補填(ほてん)して、米国内にあるパトリオットを戦争当事国のウクライナへ供与することとなる。日本が「間接的」にウクライナの戦闘を支援することとなるのは明らかである。
 岸田首相は「国際秩序を守るために貢献したい。平和国家としての基本的な理念は変わらない」と強調しているが、こうしたなし崩し的な武器輸出の拡大は絶対に許されない。
 ウクライナ戦争の長期化で明らかになったのは、米国の国内産業の空洞化である。米国の通常兵器や弾薬などの生産能力が落ちて、ウクライナ支援にも大きな支障が出ているということである。いくら予算があっても武器・弾薬がなければロシアに打ち勝つこともできない。
 今回のパトリオットの米国への輸出は、わが国が米国の言いなりになって、都合の良い「武器庫」に成り下がってしまったということである。

防衛産業を税金で潤す
 さらに今年、岸田政権は、日本、英国、イタリアの3カ国で共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出も進めようとしている。
 現行制度で日本が完成品を輸出できるのは共同開発や生産を行っている相手国のみで、その相手国が日本の部品や技術を含む完成品を第三国に輸出することも可能だが、政府・与党が画策しているのは、日本から完成品を第三国に直接輸出することを認めるということである。
 自公両党の実務者による「密室協議」は、公明党が「国民の理解が不十分」などとして2月末の合意は難しくなったが、28日には自公の政調会長間での協議が行われた。公明党の高木政調会長は、「互いの認識や問題点の整理などを含めてだいぶ距離が縮まってきた」と述べ「速やかに合意を目指したい」と話すなど、武器完成品の早期の輸出解禁に向けて公明党は自民党と一緒になって再び犯罪的な役割を果たそうとしている。
 複雑で高度な機能を搭載する次期戦闘機の第三国への輸出は、単に機体を売り渡すだけでなく、戦闘機の維持・整備や操縦訓練など中長期の協力関係の構築が必要となる。米国が緊張をあおっているインド太平洋地域に日本から輸出できれば、防衛産業にとっては大きな需要を開拓できる機会となる。
 また、自民党は当初想定していた国際共同開発する防衛装備すべてに適用するルール改正ではなく、次期戦闘機に限定するといった条件をつけて公明党との一致点を探ろうとしているようだが、「限定」が次第に拡大して「全面解禁」になることは目に見えている。
 国家安全保障局の初代局長を務めた谷内元外務次官が日経新聞のインタビューで、防衛装備品の輸出を原則、全面解禁すべきだと答えた。谷地氏は、装備品の輸出を拡大する利点として国内の防衛産業の基盤強化も挙げ、「市場が日本に限られなければインセンティブ(刺激)になる」と説明した。ウクライナの戦争で焦点が当たった弾薬の備蓄といった「継戦能力」の維持にも役立つということである。そして、官民が連携して市場でシェアを増やす韓国を例に挙げ「日本も学ぶべきだ」と唱えた。こうした発言に明らかなように、岸田政権のめざすところは、防衛装備品輸出の「全面解禁」であり、防衛産業の利益拡大策である。
 しかも、自国の都合ばかりではなく、米国から要求されれば、米国の「武器庫」として使われるというきわめて従属的な輸出になり、米国の世界戦略に組み込まれることは明らかである。米国は、アジアで中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵視政策を一段と強め、台湾問題などを口実に、わが国に対中国、対朝鮮の戦争準備を迫っている。岸田政権が進める軍備増強によって拡大する武器生産のはけ口のひとつとしても防衛装備品輸出の「全面解禁」がある。アジアの平和の構築どころか、日本が「死の商人」となる最悪の輸出政策である。防衛費増額のために国民から吸い上げた税金で防衛産業を潤す仕組みである。
 安保3文書の改定による安保政策の転換もそうだったが、自公政権は、国会や国民的な議論をすることなく進めている。しかも野党の基本政策も、日米同盟基軸であり、米国の世界戦略に追随する姿勢は同じで、多くの国民に犠牲を強いることでは自公政権と何ら変わらない。米国の一極支配が崩れるなかで、真に独立・自主の国の生き方が問われているのに与野党そろっての体たらくである。

「戦争望む国」に反対を
 岸田政権の支持率は発足以来最低となり、自民党への政党支持率も最低である。相次ぐ値上げなどで国民生活が苦しくなる中、政治資金問題なども重なって、先の群馬・前橋市長選挙に表れたように、国や怒りはますます高まっている。国民各層の怒りを結集し岸田政権を打倒する国民運動を強めよう。わが党もそのために力を尽くす。(H)

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