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2024年2月25日号 1面

イスラエルのラファ
地上侵攻を断じて許すな

岸田政権は即時停戦と
和平実現へ行動を

 イスラエルがパレスチナ自治区・ガザ地区を統治する「ハマス」に対する報復として軍事侵攻を開始してから4カ月が過ぎた。ガザ地区の死者数は2万8500人を超えた。
 1948年のイスラエル建国以来、パレスチナの地を追われた大量の難民が、ヨルダン川西岸やガザ地区に押し込められ、抑圧されてきた悲惨な歴史が、繰り返されている。近年、一部のアラブ諸国がイスラエルとの国交樹立や妥協に動くなか、ハマスはやむにやまれず反撃に出た。ハマスの反撃に衝撃を受けたイスラエルはかつてない猛攻撃によってハマス殲滅(せんめつ)をめざしている。
 イスラエル軍の攻撃は、当初のガザ地区北部から中部・南部にも拡大している。イスラエルのネタニヤフ首相は、2月17日の記者会見で、ガザ地区南部の都市・ラファへの侵攻を改めて宣言した。ラファにはガザ全域から150万人が避難している。ラファ侵攻については、世界中から「多大な死傷者が出る」との声が相次いでいるが、ネタニヤフはハマスに勝利するために「侵攻以外の道はない」と主張、攻撃の取りやめはあり得ないとし、イスラム教のラマダン(断食月)が始まる3月10日までの作戦の完了を指示した。また、米国やアラブ諸国がパレスチナとの「2国家共存」を求めていることについても「(ハマスの)テロに賞品は与えない」として、パレスチナの独立についても改めて否定した。
 イスラエルは、侵攻当初はガザ住民に対して、南部への避難を呼びかけていたが、次は避難民が集中する南部への攻撃である。住民からは「どこに逃げればいいのか」と絶望の声が上がっている。すでにラファへの空爆や病院への攻撃も始まっており、多数の犠牲者が出ている。
 イスラエルの行為は、報復というよりハマスの殲滅を口実にしたガザ地区住民に対する「集団虐殺」であり、明白な「戦争犯罪」である。しかも死者の大半は女性と子どもである。これ以上の犠牲を生まないためにも、イスラエルのラファへの地上侵攻を断じて許してはならない。

中東の緊張拡大する米英
 米軍はガザでの戦闘が始まって以来、イラクやシリアでイランを後ろ盾とする武装勢力に対する攻撃を行っていたが、さらに攻撃を拡大し、地域での緊張をあおっている。
 米英軍は、イエメンを実効支配する親イランの「フーシ」に対して、1月11日から、戦闘機やトマホークミサイルによる空爆を開始した。紅海でのイスラエルや米英が関係する船舶への攻撃に対する報復としてフーシへの攻撃を繰り返している。フーシはハマスを支援し、ガザ地区での戦闘停止を求めて紅海での船舶攻撃を行い、スエズ運河経由の船便に大きな打撃となっているが、イスラエルのガザ攻撃がやまない限りフーシの船舶攻撃が続くのは当然である。米英軍によるフーシ攻撃が拡大すれば、イランも含む中東地域全体の緊張がさらに高まるのは必至である。
 バイデン米政権は、世界的なイスラエル非難の高まりやイスラエル寄りの姿勢に対する米国内での反発の広がりを受け、ネタニヤフへの「説得」や周辺国への「和平」の働きかけを続けているように見せかけている。米国とイスラエルとのの「亀裂」も言われているが、米英軍の実際の行動を見れば、まったくごまかしのポーズに過ぎないのは明白である。

米欧日による非人道的措置
 戦闘開始前のラファの人口は約28万人だったとされるが、現在はガザ人口の7割近い約150万人の避難民でひしめいている。今冬は長雨が続き、多くの避難者が水浸しになったテントや屋外で夜を過ごしている。食料や医薬品も極度に欠乏しており、医療施設への無差別の攻撃も続き、人道状況は日を追って悪化している。物資不足の一因となっているのはイスラエルによる妨害である。国連によると、1月にガザで計画された175件の人道支援派遣のうち、円滑に行われたのは78件で、62件はイスラエル側に拒否された。今月5日には食料を積んだトラックがイスラエル軍の攻撃を受けた。
 さらに5日には、米欧日などを中心に18カ国・地域が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出の停止を決めた。UNRWAの一部の職員がハマスの攻撃に関与したという口実だが、パレスチナ住民が置かれてきた窮状を見れば、ハマスの反撃に加勢する人が出るのは当然だろう。UNRWAは「2月末には活動を停止せざるを得なくなる可能性がある」と危機感を募らせている。
 こうしたなか、米欧日以外の多くの国は資金拠出継続の意向を表明している。
 ブラジルのルラ大統領は16日、アラブ連盟本部で演説し、米独日などの資金拠出停止を批判し、資金拠出の維持・強化を訴えた。ルラ氏は、「パレスチナの人々が最も支援を必要としている時に、豊かな国々がUNRWAへの人道支援(資金)のカットを決めている」と批判、「UNRWAをマヒさせてはならない」と指摘した。さらに「最も緊急なのは明確な停戦を確立し持続的かつ妨害なしの人道支援の提供と人質の即時無条件解放を可能にすること」と強調した。これは周辺の中東諸国だけでなく、グローバルサウスの多くの国々を代表する意見であり、きわめて真っ当な意見である。米欧日などが言う「人権」や「人道」こそまやかしである。

日本もイスラエル助長
 ハマスが放った一撃は世界に大きな衝撃となり、世界を動かし、パレスチナ問題への注目を再び呼び起こした。人民の闘いが歴史を動かしている。
 イスラエルの蛮行に抗議する声は世界各国に広がっている。即時停戦を求める大規模なデモや集会が繰り広げられている。また、終わりの見えない戦闘と、一向に進まない人質の解放にイスラエル国民の間にもいら立ちが募っている。「人質解放の優先」や「ネタニヤフ首相の退陣」を求めるデモが各地で行われている。国連総会でも大多数の国がイスラエルへの非難と停戦を求める決議に賛成している。だが、こうした世界中からの非難や抗議を顧みることもなくイスラエルの攻撃は続いている。
 しかし、イスラエルに加担する米英など一部の国は論外だが、ほかの先進諸国も「停戦」を口にするだけで具体的な行動は見られない。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する過酷な制裁と比べるとダブルスタンダードそのものだ。
 わが国政府にも積極的な動きはほとんど見られず、間接的にイスラエルの虐殺行為に手を貸している。岸田政権が「法による正義」や「人権」、「人道」を口にし、グローバルサウス諸国との連携を言うなら、少なくともUNRWAへの資金拠出を即時再開し、周辺の中東諸国と歩調を合わせて即時停戦、パレスチナ国家樹立への具体的行動を行うべきだ。(C)

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