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2024年2月15日号 1面

能登半島地震から1カ月半

国は住民主体の復旧・復興を

 能登半島地震の救援と復旧活動が遅れている。
 地震被害は、石川県能登半島を中心に、新潟県、富山県、福井県などにも及んで、死者は関連死も含めて238人(2月10日現在)となり、住宅被害も石川県を中心に約4万1000棟(うち全半壊約1万1000棟)に及んでいる。厳しい寒波の中、避難生活を余儀なくされている人は、1カ月半たった今も約1万3000人以上、親戚宅等への避難も入れれば少なくとも2万3000人が避難生活を強いられている。さらに道路、水道、鉄道などの生活インフラの損壊、農地や漁港、商店、工場の操業停止など地域経済にも壊滅的な打撃となっている。
 被害総額は、政府の試算(「月例経済報告」)によれば、1月末現在で3県の合計で最大約2・6兆円と推計されている。2016年の熊本地震の被害総額の約3・8兆円(熊本県分)に劣らぬほど被害は甚大で深刻である。
 ようやく応急仮設住宅の建設が進み始めているが必要な戸数にはほど遠い。被災廃棄物も244万トンという途方もない量である
 長期の断水は今も続き、依然として約3万5000世帯が断水しており、輪島市や珠洲市では復旧も始まっていない。生活道路の復旧も遅れている。
 地震直後からの救援部隊の派遣も小出し小出しの連続で、岸田政権の対応は完全に後手後手だった。歴代自民党政権の大企業・大都市優先政策がしみついており、半島地域や過疎地域での被害、地域住民の生命と暮らしを軽視してきたからだ。救援部隊の規模も熊本地震と比べても格段に少さく、「逐次投入」との批判が出たのは当然である。

誰のための復興か
 岸田政権は、被災者の救援にさらにピッチを上げて取り組むべきである。
 局面は、次第に災害対策から復旧・復興へと移っていくが、「誰のためにどう復興するか」が厳しく問われる。
 岸田政権は新設した「能登半島地震復旧・復興支援本部」の会議を2月1日開いた。また、石川県も同日「復旧・復興会議」を発足させた。
 復興プランの策定に3〜4カ月かかると言われているが、主な柱は・インフラの早期復旧、・農林水産業、伝統産業、観光の再建、・コミュニティーの再建、・危機管理と安全・安心、・災害に強い地域づくり、・能登ブランド強化のリーディングプロジェクト、・総合的復興に係る計画の策定となっている。
 あくまでも住民主体が基本で、過疎地域の切り捨てや棄民につながる復興政策であってはならない。元新潟県知事の米山隆一衆院議員(立憲民主党)は「地震で壊滅的になった地域を元の状態に戻すのは、そもそも現実的ではない」「復興ではなく移住を選択することをきちんと組織的に行うべきだ」などと主張している。こうした論調は、そもそも復旧・復興は必要ないということで、それこそ棄民政策である。
 確かに輪島市や珠洲市など奥能登地域は高齢化率が50%前後と非常に高い地域だ。だからこそ、人口減少を食い止め、若者を呼び込み、定住を図るための、単なる復旧・復興事業に終わらせない施策が必要だ。
 これは一例に過ぎないが、岸田政権は、野党4党が住宅再建支援金を増額する「被災者生活再建支援法」の改正案提出の6日後に支援金を最大600万円まで増額することを発表した・しかし、とても被災者の実情に沿った政策とは言えまい。増額はもちろん必要だが、多くの高齢者世帯にとってはローンの支払いがある住宅の建て替えより、安価な復興公営住宅を提供することも必要ではないか。復旧・復興プランの大枠は政府や県から示されているが、復旧・復興会議の運営も含めて、本当に被災者や地域住民の意見が反映されるものにしなければならない。
 さらに問題なのは、復旧・復興プランでは志賀原発の問題が出ていないことである。北陸電力志賀原発では、大惨事には至らなかったが、変圧器の油漏れをはじめ多数のトラブルが発生した。道路の寸断で、事故が起きた場合の住民の避難も困難であることが明らかになった。志賀原発は直ちに廃炉に着手すべきである。新潟県でも大きな被害が出ており、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働も止めるべきである。また、資材や人件費のさらなる高騰などで復旧・復興事業に遅れや支障が出ないように不要・不急の大阪万博は中止すべきである。 (Y)
通信
現在の原発事故避難計画成り立たない
石川県志賀町・堂下 健一


 早いもので元旦の震災より40日、現在の避難所に来てから1カ月が過ぎようとしています。数日は自宅で余震に耐えましたが、県道が崩れ、避難指示が出され、現在の防災センターに避難を余儀なくされました。このセンターは原発事故の際に避難する場所として整備されたものです。
 ここは行政の指定避難所ですから、他の自治体から派遣された職員が交代で避難所運営にあたっています。日中のみですので、夜間は私がその役割りを果たしています。日中もDMAT(災害派遣医療チーム)やJMAT(日本医師会災害医療チーム)や保健師さん、炊き出しや各種のボランティアの応対に追われるときもあります。高齢者が多い地区でもあり、また避難者も多くいますので、ほぼ毎日の巡回はありがたいことです。また、避難者には看護師さんもいて、夜の急患対応や日中の体操の指導など心強い限りです。
 避難所の皆さんも掃除や仮設トイレの清掃などそれぞれできることをすることにしています。施設内の整理整頓にも努め、感染防止に努めています。
 役場内には全国から多くの自治体職員の皆さんが応援に来て、上下水道の復旧工事や震災関係の窓口等に尽力されています。感謝の気持ちでいっぱいです。  能登では寒の内も乗り切り、春を迎えるにはもう少し寒い期間が続き、雪も降るかもしれません。

町長も一転、再稼働に慎重
 全国の皆さんからも「志賀原発は大丈夫か」という問い合わせもたくさんありました。
 すでに地震の活動期に入って久しく、地震列島に原発適地はないとも言われ続けてきました。
 なかでも地震と原発事故の複合災害を考えたときに、現在の避難計画は成り立たないこと今回の地震がまたしても証明したといえるでしょう。地震の影響で道路が寸断され、住民は身動きが取れず、船も海岸線の隆起で使えず、ヘリも降り立つ場所がありません。地震と原発については今後多くの論争が起きることは必定かと思います。
 今回の地震で志賀町長がこれまで再稼働容認から態度を一転、慎重にと表明したことが最大の話題でしょうか。あれだけの地震被害を経験すれば町民も評価はしても豹変(ひょうへん)とは思わないでしょう。
 隣接する輪島市では海岸線の隆起が激しく、中には4メートルも隆起し、漁港の役目を果たせない箇所が多く出ています。漁船も大きく損傷、あるいは港にある水揚げ施設なども壊滅的な状況にあることは報道にある通りです。
 今後ですが、避難指示が出ている多くの住民にとっては、その後の家の状況も確認できなく、今後の予定が立てようがないということで、さらに不安が募る人も出てくるでしょう。
 仮設住宅も第1期分では圧倒的に不足しています。
 他の市では牛舎の倒壊や水の問題などですでに酪農を廃業との報道もあります。水稲についても用水路や農道の損壊が今後の意欲に大きく影響してきます。
 当面、生活再建や地域復興の基礎となる住宅の確保となりわい再建のための具体的な青写真を政府に強く求めたいと思います。

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