2023年8月25日号 1面
わが党は中国への内政干渉に断固として反対であり、発言の撤回を求める。 台湾は中国の一部 そもそも台湾は中国の一部だ。現職の自民党副総裁による訪台は、中国への内政干渉にほかならない。 日清戦争後の下関条約(1895年)で、わが国は中国(清朝)から台湾と澎湖諸島を奪った。第2次世界大戦末期の1943年、米英中(中華民国)は「満洲、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還する」と宣言した(カイロ宣言)。わが国は45年に「ポツダム宣言」を受諾し降伏したが、その第8項には「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく」と明記されている。 日本が「台湾の返還」を受け入れたのは、当然のことである。 72年、日中両国が国交正常化で合意した「日中共同声明」では、日本は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認」し、台湾が中国の領土の不可分の一部であるとする中国政府の立場を「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」とした。「内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存」などでも合意した。その後の78年の「日中平和友好条約」をはじめ「日中関係4文書」で、この立場は確認・継承されている。 米国は戦後、台湾を支持し、中国敵視政策を続けた。71年の「上海コミュニケ」、79年の米中国交正常化後も、中国を揺さぶる手段として台湾問題を利用してきた。「台湾関係法」による武器支援などである。 この態度は、オバマ政権後半以降、とくにバイデン政権下で中国敵視政策が露骨となるなか、いちだんと強まった。 2022年、米国上院外交委員会は「台湾政策法」を可決した。台湾への軍事支援を強化するとともに、台湾への「敵対行為」への経済制裁を定めている。 米国の動きに乗るように、今春以降、鈴木青年局長ら自民党議員のみならず、国民民主党、立憲民主党、日本維新の会の野党議員が次々に訪台している。 わが国は「日中関係4文書」の立場を堅持しなければならない。 中国を挑発する麻生発言 麻生は、台湾海峡情勢を「平時から非常時に少しずつではあるが確実に変わっていっている」と認識し、中国に対して「日本、台湾、米国をはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている」として「戦う覚悟」を明言した。 岸田政権はウクライナ戦争後、米国の対中国戦略を支え、防衛費の国内総生産(GDP)2%水準への引き上げ、「敵基地攻撃能力」を明記した「安保3文書」、有事の際に海上保安庁を指揮下に置く「統制要領」決定、北大西洋条約機構(NATO)事務所の東京設置案など、急ピッチで政治・軍事大国化へ突き進んでいる。九州、とくに沖縄は、対中国の「最前線」とされている。 麻生発言はこうした経過の結果である。 産経新聞は「麻生氏の発言は意義が大きい」などと持ち上げているが、アジアの緊張を高める危険で許しがたいものである。最前線に立たされる沖縄県民が「強い懸念と危惧を覚える」(沖縄タイムス)と言うのは当然である。 日米間の矛盾を反映 麻生発言は、対中強硬論を打ち出すことで、支持率低下にあえぐ岸田政権の浮揚を狙ったものでもある。 台湾に対しては、麻生は「現状を守り抜く覚悟を蔡英文総統の後に総統になられる方にも持っていただき」「われわれと一緒に戦っていただけることを心から期待する」と述べている。対中国関係をめぐって台湾世論は割れているが、麻生は総統選挙を前に台湾政界をけん制したのである。 併せて、麻生発言は米国との間の矛盾を反映してもいる。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」は7月、「中国が台湾を侵攻しても日本の自衛隊がすぐに参戦する可能性は高くない」と報じた。米国はわが国に「戦う覚悟」を求めたものである。麻生は、こうした米国内の世論に応えたのである。 逆にわが国支配層からすれば、「台湾有事」の際に、米軍が来援する確約が欲しいところである。麻生発言は、米国をけん制する狙いもあったと見るべきである。「戦う覚悟」の主体について、麻生は「日本、台湾、米国」と述べている。「台湾有事」をあおってはいるものの、日米間にも矛盾がある。 直ちに日中関係の改善を 日中関係を直ちに改善させ、アジアの平和を実現しなければならない。それは、わが国経済の発展にも貢献するはずである。 深い関係を有する対中国関係の悪化に、保守層の内部でさえ不満が噴出しつつある。 岸田首相でさえ、9月にインドネシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議で李強首相との会談を予定するなど、「強硬一辺倒」ではいられない。 沖縄県民はすぐさま麻生発言に抗議して立ち上がった。「沖縄を再び戦場にさせない」という沖縄県民の闘いに呼応して全国で闘いに立ち上がろう。 岸田政権、与野党は台湾問題などでの中国への内政干渉をやめ、平等互恵の関係を実現しなければならない。それを求める国民運動の発展が求められている。(О)
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